64話 封印
ラフがやってきてから俺とアンリは二人そろって正座で座らされ、説教されていた。
「私だってまだライさんとは一回しかしていないんです。アンリちゃんに昨日許したのも特別です。何しているんですか」
「えー、でも僕も兄ちゃんの物になったからこれからは自由にやっていいじゃないか」
「ダメです。それに朝からなんて羨ま……じゃなくてふしだらです。それに私のものでもあるんですからね?」
おい、ラフ。本音が漏れてるぞ本音が。
「えーいいじゃんか、僕がいつやっても。ねー兄ちゃんだってしたいよねー?」
横からアンリが飛び乗るように抱き付いてくる。
「なっ、それなら私だって!!」
反対側からラフがアンリに負けじと抱き付いてくる。
ああ、幸せだなぁ。こうやって二人に愛されていると感じる。
何か忘れている気もするが、とにかく今の時間が続けばいいや……
「ライくん、ラフちゃーん。準備は終わったー?」
そんなまったりとしたユウナさんの声が聞こえる。
そう言えばそうだった。
この後アンリとの結婚式があるんだった。
「二人ともいい加減準備しないと……」
「そんなこと言っても逃がしませんからね」
「そうだよ、兄ちゃんは大人しく抱き付かれてばいいんだよ」
いや、俺もそうしておきたいんだが、流石にこのままでいるのは問題が……
「ちょっと、はやくしなさ……って貴方達何朝から抱き合ってるの?」
ユウナさんが入り口で呆然と俺達を見ている。
「朝からお盛んなのは別に構わないけれども、もう少しで結婚式だしほどほどにね?」
ぴしゃりと扉を閉めて去っていくユウナさん。
いや、俺としては二人をどうにかして欲しかったんですが……
「だってよ、兄ちゃん姉ちゃん。姉ちゃんも二人一緒なら文句ないよね?」
「むむ、本当は一人で独占したいですが仕方がないです」
いや、何も仕方がなくないからな?
だから二人とも、強く抱きしめるのをやめ……アッー
ーーーーーーーーーーーーーー
結婚式が終わり、あいつに言われていた通り、封印されていものをどうにかしにいく。
「この先に封印されているのか」
「そうだよ兄ちゃん」
アンリが閉じ込められていた洞窟の更に先、そこにこの村で代々封印されていたものが眠っているらしい。
「しかし……なぁ」
果たしてそんなものを俺にどうにかできるのだろうか。
あの蛇の神でさえどうにかして欲しいと言ってるのだ。どうしてそんなものを俺に……
ユウナさんもロキさんも何があるかは知らないとか言っていたからな。
「心配しないでも、私達がついてますよ。ライさん!」
「そうだよ、兄ちゃん!」
二人が俺を安心させようとかそう言ってくれる。
そうだ、俺には何かあっても二人がいるからな。
ラフにアンリ、二人がいればどんなことがあってもきっと大丈夫だ。
洞窟を進むと、奥には大きな鉄の扉があった。
「どうやって開ければいいんだ?」
「えっとー、ちょっと待ってね兄ちゃん。ここをこうし……てと!」
アンリが扉をいじるとあれだけ何をしても動かなかった扉があっさりと開く。
「おお! 凄いな、何をやったんだ?」
「えへへー、秘密だよ。と言ってもお母さんの血筋の人がこの扉を触ったら開くらしいんだ」
「そんな簡単に開いていいものなのか」
「まあ、僕達が守っているんだしいいんじゃない?」
一体封印した人は誰なんだ。適当すぎるだろ。
「ね、早く先に行きましょうよ!」
ラフはラフで何が封印されているか気になってしょうがないようだ。早く行こうと急かしてくる。
そんな期待するようなものが埋まっているとは思えんけどなぁ。
扉の開いた先には更に地下へと続く階段がある。
どれだけ長い距離を進ませる気なのだろうか。
その階段を降りていくと少し狭い空間、その中央には飾り気のない白く長い棺。俺達三人ぐらいなら簡単に入るんじゃないか?
「これだよな?」
「でしょうね……何が入っているんでしょうか?」
「そもそもどうやって開けるんだ? アンリ分かるか?」
「うーん、分からないや」
アンリも少し棺を調べそう答える。
棺を見た感じ、開けれるようなところはどこにもない。
一体どうやったら開くのだろうか。
そもそも開くようなものなのか。
「どうしたらいいんだろうな」
「壊してみる?」
「え?」
アンリがいつもの短剣を構える。
ちょっと待て待て、流石に壊すのはまず……
俺の制止も気に留めずアンリはそのまま短剣を振り下ろす。
ガッシャーンという大きな音と共にその棺は壊れる。
「ありゃ? 思ったよりもろいんだね、この棺」
俺もこんなに脆いとは思っていなかったけれども……普通壊すか!?
「まぁいいじゃん。とにかく開いたよ?」
うん、取りあえずは開いたし良かったという事にしとこう。
壊れた棺の中にあったのは一人の横たわる少女だった。




