番外 クリスマス
番外編です。本編の方はしばしお待ちを……
「メリークリスマスだよお兄ちゃん!!」
「メリークリスマスです。ライさん」
目の前には部屋の隅々まできらきらと飾り付けられた装飾品。それにテーブルいっぱいに広がる数々の豪華な料理。それにアンリとラフ。……これは一体どういうことだろうか?
「クリスマスだよ兄ちゃん!」
クリスマス? ああ、クリスマスか。この世界にもそういった概念があるのか。にしても名前が全く同じというのはありえなくないか。それに……
「どうしてアンリがここにいるんだ? 今は確か出られないはずじゃあ……それに俺も試合はどうなったんだ」
「細かい事は気にしたらダメだよ。今回は番外編何だから楽しまないとね!」
なんだ番外編って。
「番外編は番外編ですよ。細かい事は気にせず楽しみましょう♪」
いや、気になるから。気にしない方が無理がある
「まあまあ。深いことは考えずに皆でわいわいして楽しめばいいんじゃないかな?」
「うおっ!?」
突然隣に現れる少年。誰だお前は。
「酷いなぁ、忘れるなんて。僕だよ、いつも夢であってるじゃないか」
いつもの蛇か。なんでお前までここにいるんだ。
「別にいいじゃないか。彼女も来ると思ったんだけどねぇ。まあいいや、それに彼女達もいるよ」
「彼女達?」
言われた方向を見てみるとそこには見知った三人がいた。
「やっほー、ライ君。久しぶりね」
「お久しぶりです。ライさん!」
「……」
リンにミチにカイル? カイルだよな?
確かにカイル何だが……明らかに普段とは違った服装をしている。何の着ぐるみだこれは。
全身を覆う茶色のもさもさした服に頭には顔を覆うように角の生えた被り物、トナカイか?
「どうしたんだカイル、そんな格好して」
「俺が聞きたい……」
「いいじゃない、似合うわよ」
冷やかすようにリンが言う。なるほど、リンの仕業か。それでもカイルが大人しくこんな格好をするか?
「なあ、リン。サンタ服は?」
「そのうちね。そのうち」
「俺はリンが来てくれると言ったから着たというのに……」
なるほど、そういうことか。カイルの事だしリンのことなら何でもすぐ乗っかりそうだな。にしてもサンタ服か……ちらっとラフ達と見る。ラフ達もサンタ服を着てくれないかなぁ。絶対似合うと思うんだけど。
「それはそうと……なんでお前達もいるんだ?」
「ああ、それは僕が呼んだんだよ。ラフちゃんとアンリちゃんだけじゃ寂しいしね。折角だから彼女達も誘ったんだよ。三人だけじゃ寂しいでしょ」
確かに三人だけだと寂しいけれども、連れてくる必要あったか? 正直三人だけでも良かった気がする。
「まあまあ、そんなつれない事言わなくてもいいじゃないの。しばらく私達は出番がないんだしさ」
出番がないって……メタ発言だなぁ。
「まぁまぁ、いいじゃないですか。折角来てくれたんだし皆で楽しみましょうよ!」
ラフが隣からそう言ってくる。ラフはいい子だなぁ。ラフがそう言うならいいかな?
「そうだな、折角クリスマスだし皆で楽しもうか」
「そうだよ兄ちゃん! 楽しもうよ!」
皆、談笑をしながらテーブルの上の料理を食べる。
「ほら、ライさん。あーん」
「いやいやラフ、それは流石に恥ずかしいから」
「いいじゃないですかライさん。ほらっ」
「あ、あーん……」
ラフによって俺の口に料理が運ばれる。うん、美味しいな。気恥ずかしさの方がまさっているが。
「あ、姉ちゃんばかりずるい! 僕もやる!」
「え、ちょっ、アンリ!?」
「ほら、兄ちゃん。あーん」
「あ、あーん」
「えへへ、美味しい?」
「ああ、うん。美味しい」
まさかアンリまでこういう事をするとは。どちらかというと俺と同じで恥ずかしがるタイプと思っていたのに。ラフと張り合っているんだろうか。
「ほら、もう一口」
「お、おう」
「アンリちゃんばかりずるいですよ。ほらこっちも、あーん」
ラフもそれに負けてたまるかと俺に料理を差し出してくる。いいなぁ、こういうまったりいちゃつけるのも。って、ちょっ.。そんなに食いきれないから落ち着いて!?
ライ達とは変わってリン達は比較的マッタリと楽しんでいた。
「なぁ、リン……」
「何、カイル?」
「サンタ服……」
「これも美味しいわね。あ、それもとってもらえる?」
「はーい、どうぞ」
「リン……サンタ服は」
「そういえばミチは向こうに行かなくていいの? 三人でいちゃついてるわよ」
「そりゃ入りたいですけど……あの中に入る勇気はないですよぉ」
「確かにあの中には入りにくいわねぇ」
「サンタ服……」
「ライさぁん、聞いてますぅ?」
「ああ、はいはい、聞いてるから」
「どうして兄ちゃんは姉ちゃんばかり構うんだよぉ。そんなに僕に魅力がないの?」
右には片手にグラスをもち、絡んでくるラフ、左には泣きながらぽかぽかと腕を叩いてくるアンリ。どうしてこんな事になったんだ?
「アハハハハ、モテモテじゃん」
「笑ってんじゃねえっ!!」
元々こうなったのもお前のせいだろ。こいつが途中からそういえば飲み物もってきたんだーと言って配り始めた。まあ、案の定ね? お酒だったわけですよ。それからこの有様ですよ。
「だから兄ちゃん……どうしたら僕に構ってくれるの?」
アンリが服にしがみつきながら潤んだ目でこっちを見上げてくる。
「いやいや、最近はいろいろあったからな」
「うぅ……ぐすっ」
再び泣き始める。なんだこれ、泣き酒?
「ライさんももっと飲みましょうよぉ」
右からはラフが口元にグラスを押し付けてくる。
「いや、ラフ。押し付けないでくれ」
「むー、そんなノリが悪いライさんにはこうですっ!」
「むぐっ!?」
突然自分の口にお酒を含み、そのまま俺に口移しで押し付けてくる。そのままラフの口の中の液体が俺の中へと流れてくる。
「んっ……はぁ」
「ちょっとラフ、落ち着け」
「ふぇー? ライさんが悪いんれすよ?」
ついに言葉も怪しくなってきたな。
「また姉ちゃんばっかり……僕もやる!!」
ちょっと待て。どうしてそうなる。助けを求める様にリンの方を見てみるが……
「だからリン姉様とカイルはもっとしっかりするべきです。仮にもリン姉様は首領なんですからもっと周りから尊敬されるような振る舞いを……」
向こうはミチが酔っぱらっているのかリンとカイルが説教されていた。それをリンとカイルがなだめている感じだ。向こうも大変そうだな……
「ほら、兄ちゃん。僕のも飲んでよ」
「いや、だから早く酔いがさめて?」
「姉ちゃんの酒は飲めても僕のは飲めないの……?」
そう言って再びアンリが子供のように泣きじゃくる。隣にはまたお酒を飲ませようと迫ってくるラフ。
それを見てずっと笑っている蛇の少年。
にぎやかでいいじゃないか。うん、きっとそうだな。ただ、思った。こいつらに酒を飲ませたら駄目だ。
そしてもうクリスマス関係なくね?




