51話 帰宅
ラフと俺、ミチの三人で宿へと戻ってくる。
何とかラフを連れて戻ってくることができたな。実際あの蛇がいないとどうしようもなかった。あいつについて行くしかなかっただろう、。でもあんな風に助けてくれるなら最初から助けてくれたら良かったのに……
いや、今はそんなことより、
「ラフぅぅ!」
「ライさん!」
ラフの背中に手を回し強く抱きしめる。ラフもそれに応えるように俺を抱きしめてくる。
久しぶりのラフの華奢で柔らかい体を堪能する。
「わ、私、ライさんがいなくて本当に寂しかったんですからね」
「ごめんな。これからは絶対離れないからな……」
俺の腕の中で俺を涙目で見つめてくるラフ、堪えられなくなってそのままラフにキスをしようとした。
が、
「じぃー」
「あのーライ君? 私達もいるからね?」
「うおっ!?」
そういえばミチがいたんだった。それに、
「リンにカイルまで!?」
「ライ君達が帰ってきた時からいたわよ。声かけようと思ったけどいきなり二人で話し出すから……」
え!? という事は今までのやり取りは全部聞かれていたということだよな。
うわぁぁぁぁぁ! 恥ずかしすぎる! きっと今の俺の顔は真っ赤になっていることだろう。
ラフの方を見るとラフも部屋の端の方でうずくまっていた。
「久しぶりに会えて嬉しいのは分かるけれども、その前に紹介やら説明やらいいかな?」
そうか、そりゃあラフとリン達は初対面なわけだしな。いや、そんなことよりも、とりあえずここを離れるべきか? あいつが追ってくる可能性も高そうだしな。先にここを離れよう。
「それより、取りあえずここを離れていいか? あいつが追ってくるかもしれない」
「あいつ?」
あの女性のことをリン達に話す。どうやらリン達もあっていたようで話はすんなり通じた。
リン達もここを離れることに賛同してくれた。皆俺につかまる。ラフは腰に、ミチは腕にしがみつきリンはもう片方の手を握る。そしてリンにカイルがつかまるような感じだ。これ、今俺すごいハーレムじゃね?
三人に囲まれて、三人とも俺に体を寄せてくる。最高だな!
「ちょっと、ライさん。やらしい事考えていません?」
「そ、そんなことないぞ?」
ラフが咎めるような風に言ってくる。け、決してそんな事ないぞ? 三人の体の感触なんて楽しんでないからな、うん。
「本当に?」
これ以上咎められる前にさっさとワープしよう。勿論、ワープする場所はラフの村だ。
皆で村へと戻ってくる。いつも通りの村の風景。これでアンリさえ戻れば元通りだな。
村に入ろうとするとどうにも視界がかすむ。なんだ? おかしいな。
「ライさん? どうしたんですか」
俺が立ち止っていることを不思議に思ったのかラフが声をかけてくる。
「いや、何でもな……い。だいじょうぶ……」
段々意識が薄れてくる。ラフやミチ達が俺に向かって何か言っているが何を言っているのか分からない。
そのまま俺は気を失った。
――――
今僕はとある村にいる。いや、とらえられていると言った方がいいかな?
この村は僕が生まれた村だ。とある理由があってこの村から逃げていたんだけれども捕まってしまった。
はぁ、何でこんなことになったんだろう……
兄ちゃんがいなくなってから僕とラフ姉ちゃんは一回エマさんのところへと戻り、姉ちゃんは人間側、僕は魔物側を探し始めた。僕も姉ちゃんの方について行きたかったけれども別々に探した方が効率もいいだろうし仕方がない。取りあえず僕はギルドがある町へと行き、色々と聞いて回った。だけれども兄ちゃんに関することは全く分からなかった。
「はぁ、この調子で兄ちゃんが見つかるのかな」
兄ちゃんは一体どこへといったのだろう。このまま探し続けても見つかるとは思えなかった。
それからは兄ちゃんが最後にいなくなったあの森へと向かった。そこぐらいしか行く場所が思いつかなかったからだ。ある理由からあの森にはあんまり近づきたくなかったけれども今はそんなことを言ってられない。何か手がかりがあるかもしれないしね。兄ちゃんがいなくなった場所まで行き、何かないかと探す。
しばらく探したが結局何もなかった。
「はぁ……」
自然とため息が漏れてしまう。できれば姉ちゃんより先に見つけたいけれど……姉ちゃんがいると兄ちゃんに全然かまってもらえなくなるからなぁ。兄ちゃんと姉ちゃんは恐らく僕の気持ちには気づいていない。
僕だって兄ちゃんが好きだ。でも、姉ちゃんから兄ちゃんを寝とるなんて僕にはとてもじゃないけどできそうにない。はぁ、僕はどうしたらいいんだろう……
この時僕は考えることに集中していたせいか後ろから迫りくる人に気づいていなかった。
不意に、後ろから殴られそのまま気を失う。
「おい、お前巫女様だぞ! もっと丁重に扱わないと……」
「仕方がねえだろ。ゆっくり捕まえていたらこっちがやられちまう」
「だけれどこれでやっと始められるな」
「ああ、そうだな」
そうして僕はそのまま村まで連れ去られてしまった。