49話 探索
さて城に入れたのはいいんだけどここから王のところまで上がっていくのは面倒くさいな。
それにカイルもいるしなぁ。一人だったらもうちょっと気が楽なんだけど……
「どうしたリン?」
「いいや、何にも。早くいきましょう」
そうとだけ言って再び歩みを進める。気配も姿も消している私達に兵士たちが気付くことない。所詮人間最大の城といってもこの程度の警備だ。さっさと王様を脅して金目の物を取って帰ろう。おっと、ライ君のために魔物の少女の事も聞いておかないと……ミチは上手くやっているかなぁ? 折角二人にしてあげているんだし頑張って欲しいものだ。ミチは積極的だけど、あと一歩踏み込めない所があるからなぁ。
「リン? どうかしたのか? さっきからずっと難しい顔しているぞ」
「いや、ミチの事についてね……」
まあ、なるようになるか。それより今はこっちの事だ。前もこうやって警備が緩いと油断して進んでいたらあいつが現れたんだから……
――――
ミチと二人で城を探り初めてから大分たった。しかし一向に地下なんて見つかる気配がない。一体どこにあるんだ。そもそも本当に地下なんてあるのか?
「ああ、一体いつになったら見つかるんだ……」
「き、きっとみつかりますよ! 一応地下に気配はするんですし……」
そうなんだよな。ミチ曰く気配はあるらしいが、そこまでの行き方が分からないからどうしようもない。
しかしどうしようかな……このまま探していても見つかる気がしない。一旦戻るか? まだ夜明けまで時間はあるが……
「まあ、もう少し探してみましょう」
「そうだな……」
それからもしばらく二人で探すと明らかに怪しい扉があった。大きな鉄の扉で厳重に鍵がしてある。
これは明らかすぎるだろ……
「ミチ、開けられるか?」
「うーん……できそうですけど時間はかかりそうですね。その間、兵士達はお任せします」
「ああ、分かった」
ミチが扉を開けている間、見張りをしておく。しかし誰も来ることなくミチが扉を開ける方が先だった。
こんなにあっさり開いちゃっていいのかな? いくらなんでも警戒が緩すぎるだろ。中にはいると沢山の宝石や剣や、鎧などが置いてある。
「これは……宝物庫かな?」
「みたいですね」
いろんな物があるなぁ。おっ、これなんかラフに似合いそうだ。持って行ってもばれないよな? こっそりと懐にしまっておく。これぐらい、いいよな。うん……
「ただ宝物庫というだけで特に何もありませんね。色々持って帰りたいなぁ、勿体無い」
そういえばミチも盗賊なんだよな。盗みたくなるのも当然か? まあ、こんなのが目の前にあったら誰だって盗みたくなるだろう。俺はもう盗んでしまっている訳だけどな。にしても本当これしかないのか?
いや、確か、ここらへんに……置いてあったものをどけ、壁を押すとそこに通り道ができた。どうやら地下へと続いているようだ。
「わ!? こんな所に……どうして分かったんですか!?」
「いや、なんとなくな。とにかく行こうか」
「あ、はい! そうですね。何があるんだろう」
何で俺は今ここから地下に行けると分かったんだろうか? 絶対ここから地下に行けると確信して壁を押した。ここに来たことがある……? まさかな、そんなはずはない。
そんなことを考えながら地下へと降りていく……
――――
「ここよね……」
もう大分きた。この扉の向こうに王がいることだろう。中からは話し声が聞こえる。こんな時間に起きている? 一体誰と話しているんだろう。
「結局いつ召し上がるんですか?」
「そうだなぁ、昼は業務をしなければならないからな。やはり夜か……まあ、その前に遊んでやらないとな。あんなに綺麗な娘など滅多にいないからなぁ」
あの娘というのはやはりライ君が探している魔物の少女の事だろう。しかし……召し上がるとは一体どういうこと? まさか食べるなんてそんなことはない……よね?
「分かりました。その時は私も立ち会います。それと……侵入者はどうしましょうか」
うん? ばれている!? どうして!? 一体どこでばれたんだろう。
「それに関してはお前に任せる。俺はもう寝る」
「はい。分かりました。ということで、そこにいるネズミちゃん達、ほら、出てきなさい」
ここにいることまでばれているの!? 不味い、早く逃げないと!
そう思い急いで扉から離れ逃げ始める。
「あらあら、そんな急いで逃げなくていいのよ」
私達が逃げ始めた先の通路にはもう既に彼女はいた。確か、人間の中で最強とも言われる魔法使いのはず……どうしてこんなこんな所に。彼女は滅多に姿を見せないというのに。
「私にもいろいろあってねぇ。あの王様にはもうちょっとがんばってもらわないといけないのよ。そのためにもね、ラフちゃんを持っていかれると困るのよ。ライ君達ももう地下に辿りついているみたいだしね」
どうしてライ君の事を知っているんだろう。とにかくそれよりも今は逃げる! 姿と気配を消し、後ろに向けて全力で逃げる。カイルも同じように全力で後ろからついてくる。目の前に壁があろうと関係ない。突き破って進む。それから全力で逃げ続けて城の外まで出た。追ってくる気配はない。まさか、あいつを振り切れたとは思えないけれど……どうして追ってこないのだろう。
「リン……無事か?」
「はぁはぁ……一応ね。でもなんであいつがいるのよ」
「そんなの俺が聞きたい」
一応もうあいつはこっちには来ていないみたいだけれども……ライ君達は無事だろうか? 私達が派手に逃げたせいで凄い騒ぎになっているみたいだし。
「まあ、ライ君なら何とかなるか」
ライ君ならどうにかしてしまうだろう、きっと。もし死んだって私達には関係のないことだしね。
 




