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45話 まったりと

「ふぅ……」

宿の椅子に腰かける。疲れた。本当に疲れた。

あれから俺達は馬車に乗り、再び王都に向かい始めた。数日間のんびりと道中の魔獣を倒しながら進み、村についた。王都まではこの村が一番近いそうだ。そのせいか今まで来たどの村よりも大きいし人が賑わっている。っと、そんなことは問題ではない。俺が疲れている理由だ。それはここ数日間、ミチが何かあるごとに俺の所に何か手伝うことは無いか、何かすることは無いかとやってくるのだ。俺もやんわり断ろうとするのだが、

「助けてもらった恩を少しでも返したいんです!」

そう言われると断りにくい……実際魔獣はミチに任せられるようになったから大分楽になったのだがその分ミチの相手をする疲れが増えた。リンやカイルにも相談した。


「どうにかミチを止めてくれないか?」

「別にいいじゃない。そんなに尽くしてもらえるなんて男として最高じゃない」

「いや……そういう問題じゃ……カイル、何とかならないか?」

「俺としてもお前なんかに尽くす必要はないと思うんだがな。だがあいつは俺が言ったところで止めるわけないだろうしな」

と、リンはむしろ助長するようなことを言う。まあ、カイルが言ってもミチは聞きはしないだろうな……いつも言い争っている仲だしなぁ。


さて、どうしたものか……もうワープで逃げようかなぁ? しかしあいつ等が色々と役にたっていることはいとめないしな。そんなことを考えていたらその本人がやってきた。

「ライさーん? 何かすることはありませんか?」

またミチか……

ちなみにリンとカイルは村に情報を集めに行った。俺も行こうとしたのだが、

「ライ君は疲れてるでしょ? ゆっくりしてて」

と宿に残されてしまった。しかもミチと一緒にだ。勿論部屋は違うとはいえ、こうやってくることは分かっていたはずだ。リンのやつ……絶対こうなる事を狙っていただろ。


「入りますよー」

そう言ってミチが部屋に入ってくる。いや、おい。鍵がかかっていたはずだが。

「このくらいの鍵なら簡単に開けられますよ!で、何かすることはないですか?」

自慢げに胸をはって言う。いや、自慢げにいう事じゃないから。

「いやいや、開けられるからといって入ってくるなよ!」

「どうしてもライさんを手伝いたくて……疲れているようなら肩でも揉みましょうか? あっ、寝るなら膝枕……いや、添い寝でも……」

「だから必要ないからな!?」

大体そんなことをしたという事がラフに知れたら一体どうなることやら……

「じゃあ……何をして欲しいんですか? あっ! そうですよね、ライさんも男ですからね……すっきりしてからじゃないとぐっすり眠れませんよね」

そう言って服を脱ぎ始める。ちらりと服の下のミチの透き通るように白い素肌が見え始め……って、

「ちょっと待てぇぇぇ。そういう問題じゃない! その必要もないから! 大体俺は寝るなんて一言も言っていないからな!? だから服を脱ぎだすのをやめろ!」

「ええ……じゃあ、私はどうしたら……」

「ああ、もう分かった。俺達も村をまわるぞ。情報集めるのを手伝ってくれ」

もう、このまま部屋にいると色々と不味い。外に行った方がまだましだろう。

「むぅ……分かりました。ライさんがそう言うのならば……」

少し不満そうにリンがそう言う。いや、何でそこで不満そうになるんだよ。色々と言いたいのはこっちだからな?


二人で村をまわる。情報を集めるといってもリンやカイルが村をまわってくれているので俺達がすることはこれといってなかった。なのでのんびりとミチと村をまわることにした。

「ライさん! あそこ面白いものが売っていますよ!」

そう言って指差した方向へとかけていく。こうやっていると普通の少女なんだけどなぁ。こんな少女が盗賊団にいて、なかなかの実力があるんだからな……きっと色々あったんだろうな。まあ、無理に聞くようなことでもないよな。村の中心にある大きな木の下で二人でのんびりと休む。これがラフだったらなぁ、と少し思わないでもない。ラフとアンリと合流できたら三人でまた色々な所をまわりたいなぁ。

「どうしたんですかライさん?」

ミチが心配するように俺の顔を覗き込んでくる。

「いや、少し考え事をしていただけさ。そんなことよりミチ、本当助けた事なんて気にしなくていいんだぞ? 無理に俺達についてくることも……」

「いえ、やはり恩は返さないと! それに……無理についてきているわけでもありません。私もライさんやリン姉様の楽しそうな様子を見てついて行きたいと思ったんです」

そんな風に思っていたのか。それならよかった……のか? まあ、俺としても少し楽をさせてもらっているしな。その分ミチによる疲れができているのだが。だけれど王都はここより大きいし情報を集めるのに人数が多くて困ることはないだろう。この村をまわるのだって俺一人じゃあ相当大変だったはずだ。それを考えるとリンやカイルを連れてきてよかった。


「あれ? 何でこんなところに?」

「リン姉様!」

リンが俺達を見つけ、声をかけてきた。ミチがリンの胸へと飛びかかる。それを受け止める様子を眺めながら返事を返す。

「部屋の中だと落ち着かなかったんでな」

「なるほど。もう大体まわり終えたわよ。やっぱりここも同じような情報ばかりね。まっすぐ王都に向かったみたいよ」

そうか……じゃあ、さっさと王都に向けて出発するとしよう。

もうすぐラフに会える。取りあえずは謝らなくては。いろいろ心配かけているだろうしな。どんな話をしようかなぁ……こいつらの事といい、沢山話すことはあるな。


そんな様子の俺をミチは寂しそうに見ていた。


----

「ここならきっとライさんも……」

ライさんを探し始めてもう随分とたった。人間側を探しているが未だに見つかる気配がない。

いや、私はライさんと一緒にいたい。早く会いたい。

きっと人間の町の中で一番大きいというここにならライさんも……




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