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42話 北へ

馬車の中で揺られながらゆっくり次の村へと向かう。やっぱり馬車は楽だなぁ。操縦はカイルがやってくれている。カイルは俺がやるように言ったが俺は馬なんて操縦できない。なのでカイルがやってくれている。本当、カイルは役に立つなぁ。これは連れてきてよかった。

「くそっ、絶対に後で教えるからな……リンと二人っきりなんて羨ましい……」

いや、二人きりって……お前もいるだろう。何を言ってるんだこいつは。カイルが不満そうにリンに向かって質問する。

「どうしてリンはこんな奴に協力しているんだ? どうやって知り合ったんだ」

「まあ、色々あったのよ。協力している理由は、なあ……面白そうだったからね」

「はぁ……そもそもライは何で魔物を追っているんだ?」

本当のことを言うわけにはいかないよな。まだそういった事例は人間側ではないだろうし。

「まあ、色々あるんだよ」

「さっきから色々ばっかだな」

まあ、話すわけにはいかないからな。仕方がない。そういえばリンは俺の恋人が魔物だと知っても何も言うってこなかったな。普通ありえないことだろうに。後でカイルがいない時にでも聞いてみるか。


そのままことことと馬車に揺られること数時間、村についた。途中、何度かマンモスのような魔獣が出たが俺が難なく倒しておいた。

「……ライって強いんだな」

そう言って愕然としていた。

「そうよ、ライ君はもの凄く強いのよ!」

誇らしげにリンが言う。いや、なんでお前が誇るんだよ。いや、まあ俺の強さはただ与えられた能力とあの小屋で手に入れた拳銃と短剣があるからだが。最近は拳銃も使っていないなぁ。しっかり練習しておかないと。


村はいたって普通の村だった。まあ、そう変な村があっても困るだけだが。宿をとり、情報を集めるために三人別れて聞いてまわる。そうは言っても三人別れる必要があるかというぐらいの大きさの村だったが。

「魔物の少女? ああ、きたよきたよ。なんか人を探してまわっているとかいっていたなぁ。綺麗な人だったけどやっぱ魔物だそ怖かったな。どこに向かったか? 王都の方に行ったんじゃないかな?」

「うん、来てたよ。牛のエサやり手伝ってもらった!」

「きてたそうだねぇ。そんなことよりも最近襲われている村が増えていてねぇ。怖いわねぇ」

いろんな人に聞いたが大体同じようなことを聞けた。やはりラフはこの村を通ったようだ。にしても何人かが言っていたが人間側でも村が襲われているのか……一体なんでだろう。宿に戻るともう二人はまわり終えたのか俺を待っていた。おっと待たせてしまったかな。

「遅いぞライ。どれだけ待たせるんだ」

「すまん。遅くなってしまった」

「別にそんなに待っていないわよ。気にしないでライ君」

それから三人の情報をまとめる。皆にたようなことを聞いたようだ。


「取りあえずはやっぱり国都だな。ここから国都に行くまでどのくらいかかるんだ?」

「途中の村にも寄ることを考えたら一週間ぐらいかしらね」

一週間というと……ここまでくるのに五日ぐらいだから丁度着いて少ししたら二週間か。ラフは戻るまで時間がかかるだろうしひょっとしたら途中でエマさんの村に戻るかもしれないな。戻ってきているラフとすれ違わなければいいが。


「そういえば村が襲われているって聞いたけどカイル、どうなの」

「ああ、最近襲われているな。襲っているのは魔物や傭兵崩れらしい」

「物騒ねぇ」

いやお前らも盗賊団だろうが……

「私達はそんな襲ったりしないわよ! あくまでこっそり盗むだけで!」

いや、結局害悪なことには変わりなくないかな?



宿に泊まる。この調子だとラフに会えるのは一体いつになるんだろうか。まだ一ヶ月もたっていないはずなのに凄く長く感じる。

とにかく進むしかないことは分かってはいるが……

そんな事を考えながら眠りにつく。


ーーーー

目を開けると目の前には草原が広がっていた。

ああ、またここか。という事はあの蛇がいるのかな?

「ど、どうも……」

いたのはあの頭が九つある蛇ではなかった。この世界に来る前に俺が会った少女だった。

その言葉と一緒に少女はぺこりと頭を下げる。なんか前とえらい態度が違うな。

「それは……まぁ、そんなことはどうでもいいんです。とにかくお話しましょうよ! 久しぶりなんですし」

久しぶりもなにもいまだにお前が誰かも分かっていないんだが。

「私は淡雪といいます。あなたは記憶を失ったから覚えてないのも仕方がありませんね……」

そう、寂しそうに言い、顔を伏せる。俺が悪いのか? いや、確かに覚えていないが……そもそもどうして記憶を失ったかが分からないんだし。

「っと、そんなことを話さないで違うことを話しましょう。何か聞きたい事とかありませんか? 残念ながらあいつとは違って私はこの世界のことが何でも分かるわけではないですが」

あいつとはあの蛇のことだろうか? しかし聞きたいことか。それならば俺の記憶についてだな。

他には……俺が持っていた能力についてとか。少女は俺の質問に対し、顎に手をあて考え始める。

「んー、記憶については今話す訳にはいけません。能力については……そうですね、一つだけヒントを。この世界にあるものはあなたが作ったものが沢山あります」

うん? どういうことだ。それだと俺は昔この世界に来たことがあるということなのか? それにそれがどう能力につながるんだ?

「すいません、もう時間のようです。ではまた会いましょう」

また、唐突だな!? 俺の意識が薄れていく。くそっ、また曖昧な事だけ言っていきやがって。



ライが消えた後、その場所に九つの頭を持つ兵が現れた。

「干渉しないんじゃなかったのかい?」

蛇が淡雪と名乗った少女にそう質問する。

「……私だってそりゃあ話したかったんですもん」

唇を尖らせながらすねるように少女は言う。

「あははははは。結局君もじゃないか。まあ頑張りなよ、少しぐらい素直になってね」

それだけ言い残して蛇はその場から消える。


「そう簡単に素直になれるなら苦労しませんよぅ……」



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