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41話 カイル

「すごいな……」

中は大きな空間だった。多くの人が自分達の気のままに行動している。横になって寝ている者、何か賭け事をしている者、商売をしている者……様々だ。にしても壁の中にあって、リンが知っているということは、

「なあ、ここはひょっとして……」

「もう分かっちゃった? そうよ、ここは私達盗賊団のアジトよ」

やはりか。それにしてもこんな大きな盗賊団にいたのか。すっかり一人でやっているものだと思っていた。ここにいるだけでも軽く二百人はいるだろう。一体、全体ではどれだけの人がいるのだろうか……そんなことを考えていると突然声をかけられた。

「姉貴! 帰ってきてたんですか!?」

「ついさっきね」

「帰ってきてたなら声かけてくださいよー。でそっちの男は誰なんで?」

「ちょっと色々あってね。今この人に協力しているのよ。凄く強いから下手に手を出さないようにね。と、そんなことより最近の情報を聞きたいんだけど……誰に聞けばいい?」

「ああ、それならカイルが最近はまとめているっす」

「あー……カイルかぁ」

そう、リンが露骨に嫌そうな顔をする。カイル? リンがここまで嫌がるなんてどんな人なんだ?


「そうっす、カイルです。ああ、こっちに向かってきてますよ」

「げっ……」

男が指差した方向を見ると、一人の大男がこちらに走ってきていた。かなり大きいんじゃないんだろうか? 二メートルはあるだろう。


「リィィィィィィィン!」

すぐに俺達の目の前につき、リンに話しはじめる。

「リン! お前はいつも勝手にここを出て行って! 一言いってから行けといってるだろう!?」

「帰ってくるなりうるさいわね、別に私の勝手でしょ」

「そりゃあそうかもしれないが……俺が一体どれだけ心配したと思っているんだ!」

「なんであんたに心配されなきゃいけないのよ」

「そりゃあ俺らの首領だからに決まっているだろ!? それに……」

「それになんよ」

「い、いや、なんでもない」

カイルと呼ばれた男はばつの悪そうな顔をしてそっぽを向く。うん? これはひょっとして……

というかちょっと待て、首領!?


「あれ? 言ってなかった? そうだよ、私がこの盗賊団の首領だよ?」

言っていない。まじか……というかそもそもここは立派な犯罪組織なんだよな。当たり前だがリンも何かをやらかしてあそこに放り込まれたわけだしな。あれ? 俺大丈夫なのか?

「大丈夫よ、表に顔はほとんどばれていないから」

そういう問題じゃないような……

「で、リン。こいつは誰なんだ」

「ライ君よ。色々あって協力しているの」

「そうか……おい、ライといったな。リンに何かしたらただではおかないからな」

そう言って俺を睨み付ける。大きいだけあってなかなか威圧感があるな。まあ、別に俺がリンに何かするようなことはないだろう。


「もう、心配しすぎよ。それより最近人間側に来た魔物の少女について知りたいんだけど」

「それを聞きにきたのか。あの少女か。うちの団員にも捕まえようとした奴らがいたんだけどな、こっぴどくやられてしまったよ」

「それからは?」

「この町で見つからなかったようでな。どうやら北に行ったみたいだ。恐らく王都を目指しているんだろう。まあ、人を探しているといっていたし途中の村にもよるだろうがな」

結局分かったことは北にいったということだけか。まあ、それだけ分かれば十分だ。俺も早く北へと向かうとしよう。

「じゃあ行くとするか」

「情報ありがと、もう私達は行くわ」

「あん? その男について行くというのか!?」

「そうだけど?」

「そんな得体のしれない男について行くなんて俺が許さないぞ!」

「いや、だからなんであんたの許可がいるのよ」

「折角帰ってきたというのにまた行ってしまうなんて……そうだ! それなら俺もついて行くぞ。ちょっと準備してくる!」

そういって再び奥に走り去っていった。はぁ? どうしてそうなる。こんな面倒くさそうな奴がついてくるなんて勘弁してくれ。


「ねぇ、どうかカイルも連れて行ってくれない?」

「えっ!?」

てっきり反対するものだと思っていたが……というか俺は反対だぞ。

「あいつのことだがら絶対ついて行くって言うと思うのよ。それに私もしばらくここに帰って来てなかったからね……心配をかけたのは確かだし。あいつも意外と役にたつわよ」

うーん、リンがそこまで言うなら連れて行ってもいいか……? しかしなぁ、面倒くさいよな。

どうしようか。まあ、あまりにも邪魔ならリンとカイルを二人とも置いて俺だけワープで逃げてもいいか。

「分かった。しかし邪魔はするなよ?」

「言い聞かせておくわ……自信はないけど」



カイルも一緒に行くことになり、町の北口から出発することになった。リンは、

「折角町にきたんだし色々見てまわりましょうよー」

そう駄々をこねていたがそもそも俺達がここにきたのはラフに会うためだ。ゆっくりしているじかんなんてない。再び歩きで次の村まで行かないといけないかと思うと気が遠くなるなぁ。そんなことを思っていたが、町から出るところには馬車が準備されていた。

「これは?」

「感謝しろよ。俺が準備しておいた。お前はどうでもいいがリンに歩かせるわけにはいかないからな」

態度は気に食わないがこれは非常にありがたい。これで歩かないで済む。


こうしてまた一人、役に立つが面倒くさそうな仲間が一人増えた。









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