39話 再び人間側へ
「お、ライじゃないか!? どうしてたんだ!?」
村に入るなりロークに声をかけられる。こいつと会うのも久しぶりだな。
「おうローク、久しぶりだな。突然すまんがラフは帰ってきているか?」
「ああ……やっぱりそのことか。俺もそのことについて話そうと思っていたんだよ。まあ、とにかくエマさんのところに行け」
ロークがそのことについて知っているという事はラフが少なくとも一度は帰ってきているという事か?
まあ、そのこともエマさんのところに行けば分かるのだろう。早くエマさんの家まで行こう。
「お、ライじゃん!」
「お久しぶりです」
途中、いろんな奴らに声をかけられたが皆事情を知っているのか軽く挨拶程度で呼び止められる事はなかった。俺も軽く挨拶を返しながら家にむかう。家の前にはエマさんがいた。
「ライさん!? 無事だったんですか!」
「もちろん無事ですよ。ラフ達はどうなんですか!?」
「ラフ達は無事ですよ。詳しくは中で話しましょう、そちらの女性も中にどうぞ」
「あ、失礼します」
そういえばリンもいたんだったな。村に入ってからリンの事を忘れていた。ずっと後ろを付いてきていたのかな。エマさんの家にリンと一緒に入る。
「じゃあ、説明しますね。ライさんが森で消えてからの事です。ライさん達を襲った女性はそのままラフ達に何をすることもなく消えていったそうです」
何もすることなく消えた……か。結局あの女性の目的はなんだったんだろうか。俺をあの場所に送る事?しかし送ったとして何か意味があったのだろうか。まあ、そんなことはどうでもいいか。それより、
「ラフ達は今どうしているんですか?」
「ラフ達はそのあとギルドに戻り、村に戻ってきました。それからは自分はライさんを探すと言って聞かなくて……私はライさんなら戻ってくるからこの村で待ってろ、と言ったんですが……」
「じゃあ、ラフ達は今どこに?」
「ラフは人間側を探すといっていました。アンリちゃんは魔物側をまわっています。一応、二週間に一回は村に帰ってくるとは言っていました」
二週間か……長すぎるな。ここでゆっくり待っているのもいいかもしれないが、やはり俺は自分で探しに行きたい。俺ならいつでも一瞬でここまで戻ってこれる。
「やはりライさんもそう言いますか……止めはしませんが、いつでも帰ってきてくださいね。あと、行く前にライさんに何があったかを聞かせてほしいんですが。特にその女性について……ね?」
ちょっと!? エマさん怖いんですが……俺とリンはそんなエマさんが思っているような関係じゃないですよ!? エマさんの誤解を解くために俺は今まであったことをエマさんに話した。
「そうですか、そんなことがあったんですね。では、その女性は決してライさんの彼女ではないと」
「違います。断じて違います」
「別に私は何人妻をめとろうが何も言いませんが、ラフを悲しませるようなことをしたらただではおきませんよ」
「はい、肝に銘じておきます」
まあ、俺もラフを悲しませるような事をするつもりはない。
それからは再び人間側に戻ってラフを探すことにした。やはりまずはラフからだろう。これにはちゃんとした理由がある。魔物側でアンリを探すよりも、人間側でラフを探す方が探しやすいからだ。なんせ人間側にいる魔物なんてほとんどいない。かなり目立っていることだろう。ラフの事だしへまをして捕まってなんていないといいけどな……
魔物側にくる際に立ち寄った人間側の村へと飛ぶ。エマさんいわく、ラフは北の方にある王都を目指して人間側を探しているらしい。ならば俺もそこを目指すべきだろう。
「というかリン、お前まだついてくるのか?」
「そりゃあ、当り前よ。だってそのラフさん? とやらに会うまでついて行くわよ」
結局リンもついてくるのかぁ。いや、別に俺は構わないんだが……ラフとあった時がちょっと怖いな。
また歩き続ける。リンが言うにはその村から北の方に大きな町があるらしい。そこならラフの情報も手に入りやすいだろう。にしてもまた歩きか……
「なぁ、馬車とかないのか?」
「馬車? 町に行けば売ってあると思うわよ」
お! ついに馬車が手に入るか!? まあ、町に着くまでは結局歩きなんだけどな。
「にしてもあの村は不思議だったわ。いろんな人間や魔物が一緒に暮らしていて」
「まあ、あの村は特別らしいからな」
「あんな村あそこ以外ないでしょうしね。なにしろ人間になれる魔物も沢山いたし……恐ろしいわね」
人間になれる魔物がいたからってなんで恐ろしいとなるんだろう?
「あら? 知らない? 強ければ強い魔物ほど自分の姿を自由に変えられるのよ。基本色々と便利な人間の姿に変える魔物が多いそうだけれど」
そうなのか。初めて知ったな。それならエマさんもかなり強いんだろうなぁ。完全に人間の姿だしな。「えっ!? エマさんってライ君の彼女のお母さんよね。あの人って魔物なの!?」
「ん? そうだぞ」
「えええ!? あんな完璧に人間の姿をとれる魔物なんて……一体種族は何なの?」
「あー、種族は……」
いや、今言わないほうがいいかな? 言ったら驚いて面倒くさいことになるに違いない。それならラフと会ったときでいいだろう。
「秘密だ」
「ちょっとなんでよ。隠すようなものでもないでしょ?」
「いや、エマさんが秘密にして欲しいといっていたんでな」
まあ、そんな事は言っていなかったが。
「そ、そう……それなら仕方がないわね。凄く気になるけれども……」
渋々納得してくれたようだ。まあ、どうせラフと会ったときに分かる事だが。
それからしばらく歩いて町についた。
さて、ここにラフはいるだろうか。