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36話 リン

さて砦についたわけだが……あの男が言っていた通り山と山の間に大きな砦があった。

だが入るための扉などは一切ない。大きな壁が一つあるだけだった。その上に見張りの兵士らしき人が数人立っている。

「おーい、どうにかここを出してもらえないか?」

「なんだお前は! 出すわけないだろう、さっさと帰れ!」

大声で見張りに向かって叫んでみるが想像通りの返答が返ってきた。まあ、そういわれるよな……

砦から少し離れた場所で考える。短距離のワープなら使えるから……見張りのところまでワープして、そのまま連続してワープしていけば逃げ切れるかもしれない。まあ、大騒ぎになることは確実だろうが、山を超えるよりははるかにマシだろう。


うん、とりあえずそれでいこうかな。そうワープしようとした瞬間だった。

「ちょっと! そこの人!」

呼び止められてしまった。なんだ? 声のした方を見てみるとそこには快活そうな女性がいた。下はショートパンツ、上はタンクトップという奇妙な恰好だ。胸からはラフやアンリと違い豊満な胸がタンクトップの隙間から覗いている。ってそうじゃない……なんでこんな所に人がいるんだろうか。

「なんだお前?」

「ちょっと、そんな嫌な顔しなくていいじゃない!」

そりゃするに決まってる。俺は早くラフの所に戻りたいんだ。それを邪魔するなら……


「ちょっと!? 何、短剣に手をかけているのよ!? 別に敵じゃないわよ。むしろ味方! 私もここから出ようとしているの」

「どうやって?」

「あの砦に入る方法を私は知っているわ」

知っているなら自分で出ればいいのに。どのみち俺には関係ない話だろう。そう思い俺が再び行こうとするとまた止められる。

「ちょっと、ちょっと。私だけでは無理なのよ。それとも貴方はあそこに入る方法があるというの!?」

「ああ、あるが? じゃあな」

「そうよね……あるわけ……って、えっ!? あるの!?」

そんな彼女を無視して俺は砦にワープできる場所へと向かう。

「ちょ、ちょっと待ってよ!? それなら私も連れて行って! 役にたつわよ」

なんの役にたつというのだ。

「私は大抵の鍵なら開けられるわよ! 魔法で作られた結界でも! あそこにはそういった場所もあるわよ!」

そんな場所があるのか……結界に関してはワープで越えられるか分からないしな、連れて行ってもいいか……? それに鍵を開けられるのも便利だ。連れて行ってもいいかもしれない。

「お前が入ろうとしていた方法は?」

「ここの近くに砦の中へとつながる地下通路があるのよ」

そんなものがあるのか。そっちの方が目立たずにここを出ることができるかもしれない。これはこいつといったほうがいいか……

「分かった。お前に協力する。ただし協力するのはここを出るまでな」

「急にすごい態度の変わりようね……。私の名前はリンよ。よろしくね!」

「俺はライだ。で、どこなんだそれは」

「そう焦らないで。ついてきて」

その女性にしばらくついていく。急に女性が立ち止まった。

ここなのだろうか? しかし周りには何もない。一体どこから地下通路とやらにいくのだろうか。リンに聞こうとした瞬間いきなり消えた。えっ!? どういうことだ!? もしや俺みたいにワープできるんじゃあ……

「おーい、ライ君も早く来てよー」

リンがいた場所から声がした。俺もリンがいた場所に行くとそこには丁度人一人が入れるくらいの大きさの穴が空いていた。ああ、なんだ……下に穴が開いていただけか。俺もそこにおり、リンについて行く。

通路は上には少し余裕があり、横は人一人がはいるのがぎりぎりだ。通路を歩きながらリンと話す。


「なんでこんな通路があるんだ?」

「ああ、どうやら国が中に入れた犯罪者を内密に呼び戻す手段らしいわよ」

そんなことをしているのか。というかそんなことよりなんでそのことをこいつは知っているんだ?

「ちょっと国に忍び込んだときにね。話を聞いちゃったのよ」

忍び込んだって……できることを聞いた時から薄々思っていたがこいつは……

「そうよ、盗賊よ。いろんなとこに忍びこんでいたわ。ただねぇ、ある時ちょっとへまをしちゃってね。それでこうやってここに入れられたというわけ。ライ君は?」

「俺は……」

「あっ! いや別に言いたくないなら言わなくていいわよ。ここにいる以上いろいろあったんだろうしね」

「いや、そもそも俺は何でここにいるかが分からないんだ。いきなりここに飛んできたんだよ」

「はい?」

「とある女にここに飛ばされたんだよ」

「……?」

リンはぽかんとした顔をしているのだろうか。

まあ、分からないだろうな。俺も全く分かっていないんだし。

「そんなことよりどうして俺に協力を求めたんだ?」

一番気になっていたことだ。どうして俺なんだろうか。他にもここから出たいという人はいたはずだ。


「確かに今までもいたんだけどねぇ、断られたり、あとは……力が足りなかったりだったのよ。貴方かなり腕が立つでしょう? 私だけじゃダメなのもこの理由なんだけどね、私は戦闘はからっきしなのよ。逃げたり隠れたりすること専門なのよ」

なるほど……それでやっとあらわれたのが俺という事か。俺もそんなに強いわけではないんだがな。

大丈夫なのだろうか。

「大丈夫よ。こうやって逃げている内に身についた能力なんだけどね、私は人の強さをある程度見極めれるのよ。貴方はいままであった中で一番強いわ、ダントツでね」


さすがにそれは言い過ぎだろう。そんなことは決して……

「あるわ、本当どれだけ強いのか……お、ここね」

そう言ってリンは立ち止まり、上にある覆いを外す。

「よっと。ほら、ライ君も」

「ん」

彼女の手を取り俺も上に上がる。上は扉一つ以外何もない部屋だった。

「さてと、ちょっとまってね」

リンが扉を開け始める。扉はすぐにあいた。こんなに簡単にあくものなのか。扉の先にはそれ程長くない通路があった。突き当りにまた扉が見えている。


「こんな簡単に開けられるなら俺はいらなかったんじゃないか?」

「いやそれがね……問題はこの後なのよ。あの扉の先に数人いてね……流石に気配や姿を消しても扉をあけなきゃいけないからね」

つまりここからが俺の出番か。扉の前まで行くとリンが言っていたように中から声が聞こえた。

「はぁ……だりいな。大体しばらく受け入れる奴はいないんだろ?」

「そういうなよ、払いはいいんだからさ。これがなかったら俺達は仕事がなかっただろ」

「そりゃそうだけどさ……」

どうやら二人しかいないようだ。まあ一言も喋っていない奴がいるなら別だが。

扉の向こうにいる奴らに聞こえないように小声でリンに尋ねる。

「監視カメラとかはないのか?」

「監視カメラ?」

リンが何を言っているのか分からない、というような顔をする。そうだった、この世界に機械といったものはないんだった。そりゃあるわけないよな。

「いや、すまん。忘れてくれ。よし、俺はいつでもいいぞ」

「はい、鍵は開けたわ。じゃあ、頼むわよ」

中に入ると中にはさっきから話しているであろう二人が机に座っていた。もちろんすぐにこっちに気付いたがワープで後ろへとまわり二人を気絶させる。

「ふぅ……これでいいのか?」

「一瞬だったわね……さすがだわ」

よし、これででれるのか。意外と楽だったな。リンに協力して正解だったかもしれない。

「何言ってるのよ? まだ一つ目よ」

「えっ?」

「当たり前でしょ。ここ通れば終わりなんてことは無いわよ」


そっか、そうだよな。はぁ、まだ先は長いのか……


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