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35話 転移

「はやく起きてください」

声が聞こえる。誰の声だろうか? 待て……まだ寝かせてくれ、まだ眠い。

「そんな事言っている場合じゃないです。はやく起きてください」

いいだろう……今はもう少しぐらい寝たって。

「あーもう、とにかくはやく起きなさい!」

痛っ、なんだ……殴られた? それで俺の意識は完全に目覚めた。

目の前には一面の焼野原。なんだここ……? 俺はどうしてこんなところにいるんだっけ?


そうだ、思い出した。ラフ達と森で薬草を摘んでいたところにあいつが現れて……あいつがああいった後に段々と意識が薄れていったんだった。ラフとアンリは!? 無事なんだろうか!? 一応あいつは殺さない、とは言っていたが……取りあえずあそこまで戻ろう。そう思いワープを使うためにもといた場所を想像して移動しようとした。だが移動できない、なぜだ!? とりあえず村に入る前の村に飛んでみよう。だがそっちにも飛べない。他の今まで来た町、村に移動してみようと思ったがすべて駄目だった……

しかし近くの見える範囲にはワープできるみたいだ。


なんでだろうか……やはりワープには他の条件がある……?

一応、魔法も試してみたがこっちは普通に使えるようだ。ラフ達は無事だろうか……それだけが心配だ。

とりあえず嘆いていてもはじまらない。はやく合流するために俺も今の状況を把握しよう。

周りには一面の焼野原。何もない。明るさからしてまだ昼ぐらいだろうか。森にいた時から時間はそれほど立っていないようだ。

……まずはここがどこか分からないことにはどうしようもないな。しかし、本当に何もない……ラフの目なら見えていたのだろうか。考えても仕方がないしとにかく歩くとするか。



それにしてもなぜ俺はこんな場所に飛ばされたのだろうか。確か薬草が青い光を放って……あいつが何か手を加えたといっていたな。ひょっとして転移石だろうか。あの蛇はそれ以外にこのように一瞬で他の場所に移動するような方法はないと言っていたしそれが一番可能性が高いだろう。


とにかく歩き続ける。ラフ達がいた時は楽しかったのになぁ……一人で歩いていると暗い考えしか思い浮かばない。そういえばこの世界にきてから一人になるのは久しぶりだ。ずっとラフが一緒にいたからな……



歩く、とにかく歩く……歩く。どれくらい歩き続けただろうか。気が付いたら完全に日が暮れていた。こんな場所で一人で野宿か……本当に寂しいなぁ。今の手持ちは短剣と拳銃だけ。早く食べ物をどうにかしないと不味いな。



朝、再び歩き出す。とにかくここがどこか分からないとどうしようもない。しばらく歩くと集落のようなものがあった。誰かいるだろうか。遠目に見ると複数の何かが動いているようだが……


「なんだこれは……?」

その集落まで行くとそこには人間がいた。魔物も沢山いる。いや、沢山いるという言い方はおかしいかもしれない。捕らえられ、人間に殴られているもの、もうすでに死んでいるもの……

一人の男が俺に気付き、近づいてくる。

「どうしたんだお前、そんな不思議そうな顔をして」

「どうしたもなにも……これはなんだ?」

そう、あたり一面で魔物が虐待……いや虐殺だな。

「ひょっとしてお前ここにきたばかりか。いいぜ、説明してやろう」

そう偉そうな態度を崩さずにその男は説明をはじめた。

男いわくこの場所は見捨てられた人間たちの集まりらしい。見捨てられた人間、というのはどういうことかと言うと、ここは昔、魔物と人間の主な戦いの場所だったそうだ。ここにいる人達の大抵は魔物と戦う為にきた人達らしい。魔物と戦っているある日、大規模な爆発が起きた。人間にも魔物にも大きな被害がでたそうだ。だが、被害はそれだけにとどまらなかった。それから何故か急に倒れる人があられるようになったそうだ。人間はそれを恐れ、ここにいる人達をここに閉じ込めたらしい。それから人間達が犯罪者などを収容する場所として使っているらしい。


「じゃあこの魔物達は?」

「ああ、この魔物達は近くにある村を襲った時に捕まえた奴らだ」

「なんでこんな……」

「なんで? 当たり前だろ。俺らはこいつらせいで今、こんなことになっているんだからよ」

そこは恨むべきは魔物ではなく、人間じゃないのだろうか。いやこの男もそんな時とは分かっているのだろう。


しかし、ちょっとまてよ……ということはここは魔物側と人間側の中間にあるのか! これならすぐに帰れるかもしれない。

「それはどっちだ」

「向こうだが……最近は結界がはられてしまってなぁ、行けないんだよな。そのせいで新しい村を襲えなくなっちまった」

「じゃあ、ここから出る方法は何かないのか?」

「無理に決まってんだろ。まわりは山、唯一通れる谷間は結界にあいつらが作った関所だ。おっと、山越えはオススメしないぞ。ここからただでさえ距離がある上にかなり険しいからな」


八方塞がりじゃないか……とりあえずその関所とやらにいってみるか。この場所からはそう遠くないみたいだしな。それでも一日はかかってしまうが。

「どこ行くんだ? まさかここから出ようと思っているんじゃないだろうな。無駄だ。諦めとけ」

男が何か言っているが関係ない。男の話を無視して進む。

途中、捕らえられている魔物が目にかかったが俺にはどうすることもできない。助けるとしても……ここにいる人を全部殺さなければいけないだろう。ずっと前線で戦ってきたであろう人達だ。

そう簡単にいくことはないだろう。


とにかく関所へと向かう。夜も魔法で炎を出しながら歩く。

ラフ達と会える可能性が見つかったんだ。動かない手はない。


そうして次の日の昼前には関所についた。

ここに来てから三日目だった。

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