34話 森探索
目が覚め、とりあえず体を起こそうとする。だが動かない。
ああ、そうだった。昨日からラフとアンリに抱きつかれたままだったんだ。どうしようか。とりあえず起こすしかないかな?
「ん……ライさん……」
寝言かな? 気持ちよさそうに眠っているなぁ……
しばらくこのままでいよう。せっかく気持ちよさそうに眠っているのに起こすのも悪いしな。
ラフの綺麗な髪に手を伸ばし、撫でる。気持ちいいな……
それからラフが起きるまでのしばらくのあいだそうやっていた。
「別に起こしてくれてもよかったんですよ?」
「いやぁ、なんかせっかく気持ちよさそうに寝ているのに起こしたら悪いかなっと思って……」
まあ、それはとりあえずいい。ラフも起きて解放されたしな。そう、あくまでラフからだ。後ろから抱きついているアンリは未だにそのままだ。未だに起きる気配がない。
「んんぅ……絶対離さないからね……」
そんなことを言って更に強く抱きしめている。
これ、本当に寝ているのか? 起きているんじゃないんだろうな。
「おーいアンリ? 起きろー」
相変わらず反応する様子もない。結局アンリが起きたのは村長さんが部屋にきてからだった。
「おーいそろそろ起き……すまん」
そう言って開けた扉を閉めて戻って行ってしまったが。これ、絶対誤解を受けたよな。
なんか最近こういったあらぬ誤解を受けることが多い気がするなぁ……
「にしてもアンリ、なんで今日はこんなに起きるのが遅かったんだ?」
いつも起きるのははだいたい、俺、アンリ、その後だいぶ遅れてラフ、の順番だ。
アンリがここまで遅いのは珍しかった。やはりアンリもなんだかんだ疲れていたのだろうか。
「いや……ちょっとね」
そう聞くと微妙な表情でこちらを見てくる。んん? 何かあったんだろうか?
それから村長さんと俺達、四人で朝食をいただき森に行くために村を出ることにした。
「来てくれてありがとうな。あとお前ちょっとこい」
村を出る時、そう手招きされて俺だけが呼ばれた。なんだろうか? やはり朝のことか……?
「俺は魔物と人間の交際は別に否定はせんが……朝から、しかも人の家でああいったことをするのはさすがにどうかと思うぞ」
やはり誤解されていた! 決してそういう事をしていた訳ではないと説明するが、
「そう必死に否定しなくても分かってるぞ。まあ、お前もまだ若いから仕方がない」
またしても誤解されたままになってしまった……本当なぜこんな風になっちゃうんだろうな。
「あ、兄ちゃんそこにもう一体」
「はいよ」
アンリの指を刺した先にある木に炎の魔法をうつ。魔法があたった木は瞬く間に燃え尽きてしまった。
「にしても楽だなぁ」
ギルドのゴーレムさんやオークの村長さんの話を聞く限りでは見分けるのが大変なうえにたくさんいて厄介、だと聞いていたが、アンリの能力のお陰でどの木が魔獣かがすぐに分かる。そうして俺達はこの森を難なく進んでいた。
「本当、アンリがいると楽だな」
「役にたっているみたいでよかったよ!」
それにしても森に入ってから大分時間がたった。魔獣の方は特に問題はないんだが……肝心の薬草が全くみつからない。この森ならどこにでも生えているという話だったが、未だに一本さえ見つかる気配がない。ひょっとしてこの森ではない、とかいう事はないよな。
「さすがにそれはないでしょう。でも本当、どこにもないですね……」
まあ、もう少し奥の方まで探してみよう。それでなかったら仕方がない。諦めるとしよう。
ギルドの方も説明したら分かってくれるだろう。ここまで来たこと自体はあのオークの村長さんが証明してくれるだろうし。
そう決め、それからもトレントを倒し続けながら先へと進む。もうどれだけ倒しただろうか、
倒した数を数えるのをやめたころにやっと薬草が生えているのを見つけた。少しひらけた場所に
沢山生えていた。
「やっとあったな! これで間違いないよな」
「だね。これであっているはずだよ」
見つかってよかった。にしても何でこの場所にしかなかったんだろうか? まあ、そんなことはどうでもいいか。さっさとこれを摘んで帰るとしよう。あぁ、でもオークの村長さんが帰りも寄っていけとか言っていたからな。直接町に帰るのではなくて村に寄ってからにしよう。
そうやって薬草を摘み始めた時だった。
「あら、随分とくるのがはやかったわね。もうちょっと遅いかと思っていたのに」
後ろから突然あの女性の声がする。いつの間に!? やはり気配も何も気付けなかった。
取りあえず女性に対して身構える。
「やあねぇ、そんなに身構えなくてもいいじゃない」
その女性は相変わらず軽い態度を崩さずそう言う。いまの発言からするとまるで俺達がここにくるのを待ち構えていたようだが……一体どうしてここにいるんだ?
「もちろん貴方の勧誘に来たのよ。どう? 少しぐらい気が変わったりはしてない?」
「しているわけないだろう。俺はお前らの仲間にはならない」
「やっぱりそういうのねぇ。仕方ないわ。それならそっちの二人を……って思っていたけど残念ながらあの人にとめられちゃったのよね。二人を殺したら貴方が壊れるかもしれないからとか」
なんだこいつは……そのあの人とやらの命令でこう簡単に殺すのを決めるのか?
「ライさん……どうしますか」
ラフが緊張した様子でそう聞いてくる。できればこいつはここで倒しておきたいが……
そう簡単に倒せる相手でもないだろう。対策が立っているわけでもないし引いてくれるならそっちの方がありがたいが……
「もう分かっただろ。俺はお前らの仲間になる気はない。だからおとなしく帰れ」
「残念ながらそういうわけにはいかないのよ。貴方にはできる限り仲間になってもらいたいからね。ということでまずはこの世界の事をもう少し知ってもらおうかしらね。じゃあレッツゴー!」
「な、なんだ……!?」
「貴方達がここに薬草を取りに来ることは分かっていたからあらかじめ仕込ませてもらったわ」
そう言うと俺が持っていた薬草が青く光りはじめた。なんだ……これは? そうしている間に俺の体が青い光に包まれていく。
「ライさん!?」
「兄ちゃん!?」
ラフとアンリのその声を最後に俺は意識が消えていった。




