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2話 出発

「さて、この子が起きるまでどうしようか」

とくにすることがあるわけでもない。

魔法の練習をしようにも使える気がしない。


そもそも魔法がどんなものかさえ全く分からないのである。

どうしようもないじゃないか。


「そういえば俺の名前はどうしようか。なにか考えておかないとな」

なにか本棚にないだろうか。

そういえば最初に読んだ⦅この世界について⦆の作者の名前はなんだっけ。


本を取って見てみると著者はライト・クレアスとあった。

これから取らせてもらおう。


「ん、ここは……?」

そうしているうちに少女が目覚めたようだ。


「お、起きたか。大丈夫か?」

「ええと、ここは? そして貴方は?」


「俺はライ・クレス。ここは君がいた森の中にある小屋だ。

君が捕まっているところを見つけて連れてきたんだが、

 事情を説明してもらえるか?」


「あなたは私をどうするつもりですか」

そう言って少女は俺を睨んでくる。

ちょ、怖えぇ、殺されそうな勢いだ。

「ちょ、ちょっとまて。俺は君に何かする気はない。。

 俺はもともとこの世界の人間じゃないんだ。君が捕まっていたからな。

 助けただけだ」


この世界の人間じゃないことはいうかは悩んだがこの少女には行っても大丈夫だろう。

不思議とそう思えた。


「そうですか……すいません。てっきり私を捕まえた人かと」


「で、なんで捕まっていたんだ?」


「ここにはよく薬草を摘みに来ているんですが人が来れないようになっているんです。

 そのせいで油断してしまって。捕まってしまいました」


「ということは近くに村があるのか?」


「はい、私の住んでいる村があります」


「さっき言った通り俺はこの世界に来たばっかりなんだ。

 よかったら案内してくれないか?」


「はい、助けてくれた恩人ですしね。それぐらいは

 させてもらいますよ」


「じゃあ、よろしくな。えっと……」


「あっ、すいません。まだ名乗ってもいませんでしたね。 

 ラフ・レナードです。よろしくお願いします」


そういって歩き出そうとしたがラフは動かない。

そうだった、まだ足枷や手枷がついていたんだ。


「外せそうにないのか?」


「この枷で魔力が封じられているので……」


「ちょっと待ってろ」


持っていた短剣で切ってみる。


「えっ?」

かちゃんと音をたてて床に手枷が落ちる。思いのほかあっさりと切れた。


「その短剣はいったい……? そう簡単に壊せる物じゃあ……」

「俺もよく知らないんだ。まあ切れてよかったじゃないか。」

そのまま足枷も短剣で壊す。


ラフはまだ納得のいかない顔をしていたが、村に行くことを優先したらしい。

とりあえず案内してくれるようだ。


「村に着くまでいろいろと聞いていいか?」

「どうぞ。この世界のことですね」


ラフからこの世界について様々なことを聞いた。

どうやらこの世界はあの本にあった通りではないらしい。

数十年前、魔物と人間の間で大規模な戦があったらしい。

その戦のせいで魔物、人、ともに半分近く減った。

そこで魔物と人間は戦いをやめたらしい。

長く続いた戦いだったそうだがこのままでは両方とも

滅んでしまうと思ったのだろう。


それから魔物と人間は争っていない。

しかしそれに反発している人間や魔物もいるそうだ。



「じゃあラフもそいつらに襲われたのか?」


「多分そうだと思います。さっきも言った通りこの辺りには

結界がはってあるんです。それを超えられるほどの強さの人がくるなんて……」


どれほど凄い奴だったかよく分からないが。

よくそんな人を殺せたなぁ俺、まあ不意打ちなんだが。


「そういえばどうやって私を助けてくれたんですか?」

「ああ、一番後ろの奴だけ殺して、逃げてきた」 

「それは少しまずいですね。恐らくまだ森の中にいるでしょうし……

 少し後ろを向いてもらえますか?」


「後ろを? 分かった」

そう言われ、ラフと反対方向を向く。

すると後ろから衣擦れの音が聞こえてくる。


「ちょ、ちょっとまて! 何をしているんだ!」

「もうすぐ終わります」


そうラフが言うと後ろからドスンッという音がする。

恐る恐る、後ろを向くとそこには龍がいた。


「えっ? うわぁぁぁ!」


『そんなに驚かないでくださいよ』


頭に直接声が届く。


「ラフなのか……?」


『そうです。私の元々の姿です。この姿だと

 話せないんで頭に語りかけてます。飛んで村まで

 行くんで上に乗ってください。

 あ、足元の服も一緒にお願いします』



龍、否ラフの足元には袋があった。

袋を持ってラフの上に乗る。


『では、いきますよ』


そういって飛び立つ。

周りの木々を倒しながら森の上に出る。


下を見ると広大な森が広がっていた。


「これ、逆に目立たないか?」


『大丈夫です、森からは見えませんし』


ラフの背中は安定していて居心地がよかった。

そうだ、折角だし袋の中を見てみるか。ばれることはないだろう。


袋の中にはラフがさっき着ていた白いワンピースと

下着が入っていた。白色でフリルのついたかわいらしい物だ。


『そういえば、袋の中見たりしないでくださいよ?

 下着も入っているんですからね』


「ソンナコトスルワケナイジャナイカ」


『なんで片言なんですか……』


……ばれないうちになおしておこう。




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