26話 夢の中で
ん? どこだここは……?
俺は目を覚ましたと思ったが目の前に広がっているのは草原だった。
何もない草原。俺は確か前こんなところにきたことがあるような気がする。
そうだ、ラフ達のいる世界に行く前にいた場所だ。ということは……
「やっほー、久しぶりだね!」
そう快活な声が後ろから聞こえる。そちらを振り向くと、あの少女ではなく9つの頭を持った巨大な蛇がいた。敵かな……? 取り敢えず剣を抜き構える。
「ちょっとちょっと、酷くないかな? 見知った仲だったのに」
見知った仲……? ということは俺はこいつを知っていたのか。
「そうだよー、割と仲良かったのにひどいなぁ」
と言われても覚えていない。それよりなんで俺はこんな所にいるんだ?
「ちょっと君と久しぶりに話がしたくてね。彼女にバレないようにこっそり連れてきたんだ。あっ、連れてきたといっても僕が君の夢の中にいるだけで肉体がここに来ているわけではないよ」
そうなのか。にしても彼女? とは一体誰だろう。
「あわ……いやごめんなんでもないや。まあ、君がこの世界に来る時にあった少女だよ。まあまあ、そんなことは置いといて話をしようよ。どう? この世界は」
最初に言いかけた言葉が非常に気になるんだが……まあいい、忘れてやろう。この世界についてか……まだ人間側は行っていないが皆のびのびとすごしていて特に大きな争いもない。まあ昔は違ったのかもしれないが。いい世界だと思う。
「そういってもらえてよかったよ。彼が頑張ったかいがあるってもんだね。おっとそろそろ時間かな」
ちょっと待て、俺の聞きたいことはまだ何も聞けていない。まずお前は誰なんだ。
「そこらへんの話は次回にしよう。困った時はいつでも呼んでくれて構わないよ。じゃあまたね〜」
その蛇がそう言い終えると俺の目の前には寝る前と同じ光景が広がっていた。隣でラフが規則正しい寝息をたてながら寝ており、向こうではアンリが変な体制で寝ている。
何だったんだろうか、今の夢は。夢にしてはやけにリアルだった。
あの蛇は俺の事を何か知っているようだったが……もう一度会いたいがどうやって会えばいいのか分からない。いつでも呼べと言っていたがどうやって呼べばいいか分からない。
「んぅ? ライさん? おはようございます?」
おっとラフも起きたようだ。まあ、あの蛇の事はどうしようもないし一旦忘れるとしよう。
あの言い草だとまた会うこともあるだろう。その時にまた聞くとしよう。
「おはようラフ」
「ライさんまた何か悩んでいましたね? いつでも頼ってくれていいんですよ?」
ラフは鋭いな……
「ありがとう」
「もう、そこはありがとうじゃなくて悩みを言ってくれたらいいのに……」
俺のお腹で呟く。そう、俺のお腹でだ。起きてからずっと俺のお腹に抱きつくように顔をうずめている。俺とラフが思いを伝えてからラフとの距離が近い。
「ラフ……なんで俺のお腹に顔をうずめているんだ?」
「だって気持ちいいんですもん」
そういって顔をお腹に擦り付ける。いや心地よいし良いんだけどね?
「相変わらずいちゃついてるねぇ」
そうアンリが冷やかしてくる。まあ、もうそれにも慣れてしまった。軽い冗談で返す。
「アンリもきていいんだぞ?」
「い、いやっ、ぼ、僕は遠慮しておくよ」
顔を赤め、もじもじしながらアンリが言う。あれ? なんか想像した反応と違う反応で返ってきてしまった。
「ライさ〜ん」
そんなことはお構いなしに猫なで声ラフが擦り寄る。尻尾と羽がバタバタと動いている。なんか犬みたいだな。頭を撫でてやると
「にゃふぅ」
と良く分からない可愛らしい声を出しながら尻尾を更に激しく振る。このままずっと撫でていたいなぁ。
ずっとそうしていてもいいが、アンリの目線もきつくなってきたのでラフを離し、行く準備を整える。
また三人で雑談しながら歩き続ける。
日が登った頃にやっと村についた。
だが、
「人間はこの村には入れられない」
そう言われてしまった。交渉してみるがどうやら入れそうにはない。
「お前らだけでも村の中ではゆっくりしてきな」
「ライさんが野宿するなら私もそっちにいきますよ!」
そうは言ってくれても流石に二人とも野宿続きでは疲れるだろう。そう思い無理やり二人を村に行かせた。ラフは納得していなかったがアンリが無理やり連れていってくれた。
そうして俺は一人になってしまったわけだが……
どうしようか、暇だ。仕方が無いので一人寂しく魔法の練習をする。やっぱりいてもらった方がよかったかな……
そんな俺に近づく人がいた。
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