1話 新たな世界
「はぁどこだよここ……?」
意識が戻ると俺は部屋のベットで寝ていた。
どうやら小屋のようなところにいるらしい。
真ん中には丸いテーブル、隅には本棚と木箱がある。
「ん? なんだ、あの紙は?」
テーブルの上には一枚の紙が置いてあり、
期限は一年間でーす。残り一週間、一日、一時間、一分で警告します。あなたの体に触れているものは持ち帰ることになるのでお気を付けを。今回のあなたの能力は
⦅ワープ⦆となります。この部屋にあるものはなんでも使っていいですよー。
ではではがんばってねー!
おまけにあなたの基本的な知識は戻しておいたよん。
「はぁ……つまり一年間この世界で過ごせということか。それにしても基本的な知識と言っても名前すら思い出せないんだが……」
しかし分かったこともある。俺は日本という国にいたらしい。
いた、という事が分かっただけである。
「今の俺は17歳ぐらいかな」
自分の体を見た感じそのぐらいだろう。
しかし死因とかは思い出せないんだなぁ。
まあ思い出せないものをこれ以上考えても仕方がない、これからのことを考えるとしよう。
とりあえずこの部屋をあさってみるか。
木箱には短剣と拳銃がはいっていた。
「いや拳銃って……この世界そんなものがあるのか? まあ持っていかせてもらおう。あとは本棚だな」
本棚を調べてみると
「この世界について」
「今日の献立」
「あなたもなれる! たった三日でムキムキ!」
最初の本を読んでみるとしよう。後のはいらん。
この世界は人間と魔物が争っている。南に魔物、北に人間だ。昔から争っており
今ではなぜ争っていたのか誰にもわからない。私が見た限りでは魔物も人間も
大差ないと思う。悪い奴もいればいい奴もいる。そんなものだ。
この世界の文明はここに来た人が分かるかは分からないが『機械』というものは
ない。戦も剣がおもだ。しかしこの世界には魔法がある。魔法というものは不思議な
もので体内の力を使って様々なことができる。木箱の中に魔素をこめて撃つことのできる
拳銃が入っている。私が作ったものだ。もちろん実弾も込めることができるがこの世界には弾を作り出す技術がない。持って行ってくれてかまわない。役に立ててくれ。
ではこの世界での幸運を祈る。
他にはこの世界についての基礎知識……お金や日付のことについてが
書いてあった。
「他にも違う世界から来たひとがいるんだなぁ……まあ後悔のないようにがんばるか」
まずはワープとやらを試してみるとするか、拳銃や魔法はそれからだ。
小屋を出ると周りには森が広がっていた。これここからでられるだろうか……?
瞬間移動の仕方自体は行きたい場所を強く念じるだけでいいらしい。とりあえずベットの上を念じてみる。
そうすると一瞬でベットの上へと移動していた。ここに来る前にいた場所にはいけるのだろうか? 試しに念じてみると行けるような気はしない。違う世界にはいけないのだろう。
何回か試してみたところ
自分が見える場所に移動することは簡単だが
記憶にあるだけで見えない状態だと移動に時間がかかるみたいだ。
といっても小屋の周りでしか試していないが。
「これは便利だな。いつでも逃げることができるな」
そう、この能力さえあればいつでも敵から逃げることができるだろう。
それどころか敵の後ろに回りこむのだって簡単だ。
次は短剣や拳銃を扱ってみる。
短剣は不思議と手になじみ使いやすい。
問題は拳銃だった。
いくらイメージしても弾がでないのだ。
「まあ、そりゃ仕方ないか」
魔素を込める、の前に魔素が何かさえ分からないのだ。
撃てるわけもない。
小屋にあった数少ない弾をこめて撃つことはできた。
「まあ、とりあえずは役に立ちそうだな。持っていかせてもらおう」
とりあえず森を出て人間か魔物の町にでもいってみるとしよう。
さてとりあえず森から出ようと思うがどうしたらいいのだろうか?
絶対迷うよなぁ……。まあ最悪ワープでここに戻ってこられるし行くか。
そう思いながら行き始めた時だった。
「誰か……」
そう森の中から声が聞こえた気がした。
なんだろう? 行ってみるか。
「たくっ、魔物の分際で手こずらせやがって」
「まあそういうなよ、その分金はもらえるしな」
声のした方に行ってみると一人の少女が男三人に捕まっていた。
その少女は羽や尻尾が生えており手足には枷がついている。
首には首輪もつけられていた。
「あれも魔物なのか? それにしてはかわいいな」
少女は黒い綺麗な長髪が腰まで垂れていて胸は控えめだが無駄な肉がなく
スラリとしている。身長は150ぐらいだろうか?
て、そんなことじゃなくてどうしよう。
助けるべきか、助けないべきか。
今あいつらは前に二人、後ろの一人が少女を担いで帰っている。
仮に助けるとしたら後ろの人を刺して、少女を連れてワープだろうか。
銃は論外だ。一発撃った時点で音でばれてしまう。
少女をつれてワープができるかは分からないができないならば
一人で逃げればいいだろう。
それならば顔を見られる可能性も低い。
しかし見られたら最悪人間を敵に回すことになる。
それにあの少女が何か罪を犯し、それで捕まっている可能性もある。
「まあ可能性ばっかり考えてもしょうがないか、俺はあの少女を助けたい」
決して少女を助けてやましいことをしたいわけではないよ?
本当だよ?
それになぜか俺はそうしなければならない気がする。
よし、あの一番後ろの奴まで移動して首に短剣を刺す。
短剣を鞘から抜く。
そこからは自然と体が動いた。
「がはっ」
一瞬で後ろの奴に近づき首に短剣を突き立てる。
男は力尽きて倒れていく。
前の二人が気づく頃にはすでに少女を連れて小屋にワープしていた。
「ふう、なんとかなったな」
少女と一緒にワープすることもできてよかった。
それにしても人を殺したというのに何も感じない。
殺す時もそれが当たり前のように刺していた。
「まあ、それは後々考えるとしよう。恐ろしい結論になりそうだしな」
少女はまだ気絶している。とりあえず少女をベットに運ぶ。
少女がベットで横たわっている。腕と脚には枷が付けられている。
いやいや、悪戯なんてする気はないさ。したい気持ちはあるが。
そう悶々としながら少女が起きるのを待ち続けた。
魔力→魔素に修正