15話 休息
三人で町まで戻る。トカゲの死骸は結局放置することにした。
少年がこのぐらいの重さなら簡単に運べるよ? とか言って持ち上げたが
どのみち目立つことには変わりないので却下した。
「そういえばお前の名前は? 俺はライ・クレスだ。まあ見ての通り人間だ」
「私はラフ、ラフ・レナードです。種族は龍です。今は人間の姿をしていますが翼と尻尾はあります」
少年の名前をまだ聞いてなかった。いつまでもお前じゃあ悪い。
「そういえばまだ名乗ってなかったね。アンリ・シェーファーだよ。種族はコロポックルと獣人のハーフだよ。だから耳も生えているんだ」
コロポックルか、だから小さいのか。あんなに動きが速かったのは獣人の血を
引き継いでいるからだろうか。
「ていうか姉ちゃん龍だったの!? 流石に初めて会ったよ!」
アンリがすごい驚いている。やはり龍は珍しいのか。
俺の場合、一番最初にあったラフが龍だったからな。
あまり驚きがない。
そのまま街まで帰り、ギルドに行く。
「お、兄ちゃん達早かったな。やっぱ諦めるのか?」
受付のゴーレムさんがからかうように言う。
「いえ、倒してきました。あれ、死体はどうすればいいですね」
「まじか……ああ、死体はこっちで処理するから気にしなくていいぞ。報酬に関しては明日払うからまたきてくれ。まさかこんなに早く倒すとは思っていなかったんでな」
相当驚かれているようだ。あのトカゲはそんなに強い奴だったのだろうか。
「お前らはしばらくはこの町にいるんだろ? お前らならどんな仕事でも大丈夫だろう。
だがあんまり仕事を受けすぎないでくれよ」
そう言われた。まあ、しばらくはお金に余裕があるしそんなに焦って稼ぐ必要もないだろう。
ギルドから出るころにはもう夜になっていた。なので宿に戻って休むことにした。
「そういえばアンリはどこに泊まっているんだ?」
「僕は元々、今日この町に着く予定だったんだ。だから泊まる場所も決まってないよ」
今日この町に着いたのか。でもどうしようか。
どこか空いている場所はあるだろうか。
「とりあえず兄ちゃん達の宿に行こうよ」
そうアンリが言うので、とりあえず俺達が泊まっている宿に行くことにした。
「あら、お帰り。ヘビーリザードは倒してきたの?」
宿に戻るとセミラさんが声を掛けてきた。
「はい倒してきました。ところで新しい部屋とか空いてないですよね?」
「早かったわね……で、部屋?」
「もう一人増えまして……」
「お姉さん、こんばんは! アンリです!」
後ろにいたアンリが元気よく挨拶をする。
「あら、こんばんは。この子の部屋ね。うーん、明日に一つ部屋が空くけど……今日はないわね」
今日空く部屋はないのか。どうするか。流石にあの部屋に三人は多いし、ラフも嫌だろう。
「じゃあ今日は兄ちゃん達の部屋に泊めてもらおうかな!」
いや、だからそれは厳しい、俺がそう言おうとした時、
「私は構いませんよ。せっかく三人で旅をするんですし。ね、アンリちゃん」
「だよね! 姉ちゃん!」
いやラフも賛成なのか。それにうん?
「アンリちゃん?」
「どうしましたライさん、不思議そうな顔して」
今確かにラフはアンリちゃんと言わなかったか?
なぜアンリくんではなくアンリちゃんなんだろうか。
まさかとは思うが……いやいや、そんなことがあるわけないじゃないか。きっと俺の勘違いだろう。
しかしそれでも俺は聞かずにはいられなかった。
「ひょっとしてアンリ……お前は女なのか?」
「何言っているんだい、兄ちゃん。僕は女だよ?」
……やっぱりそうなのか。アンリという名前を聞いた時から不思議には思っていた。だが短い緑髪、男のような服装、そして僕という言葉遣いからすっかり男だと思い込んでいた。
「ラフはアンリが女って分かっていたのか?」
「そりゃ、最初から分かっていましたよ」
気付いていなかったのは俺だけか。
だがそれならばなおさら同じ部屋で寝るわけにはいかない。
そう思い二人を説得していたのだが、二人は同じ部屋で寝ると言ってきかず、
ついにはセミラさんまでそういうのだからしぶしぶ俺は同じ部屋で寝ることにした。
いや、俺はいいんだがな、ラフ達はそれでいいのかよ。一応俺も男なんだがな……
いっそのこと外で寝ようとしたがラフ達に止められてしまった。
結局三人で部屋で寝ることになった。
「俺は今日も椅子で寝るよ」
まあそれしかないだろう。二人がベットで寝ればちょうどいいしな。
「だめだよ! 僕が椅子で寝るよ」
いや、さすがに少女を椅子で寝させるわけにはいかない。
そう思いアンリを説得しようと思ったのだがアンリは椅子の方が寝やすいそうだ。
本当だろうか……? 非常に怪しい。なんかラフがアンリに向かってグッと指を
立てているし。
ということで俺とラフがベットで寝ることになってしまった。
ラフに背を向け眠る。ラフはどうやらこっちを向いて寝ているようだ。
「あれ?ラフ、普通背を向けて寝ない?」
「いえ、そうすると翼と尻尾がライさんにあたって邪魔になってしまいます」
確かに邪魔になるかもしれないが……問題はそんなことじゃない。
ベットに横になってしばらく時間がたった。
俺は未だに眠れないでいた。後ろからはラフの寝息が聞こえてくる。
こんな状況で眠れるわけがない。
もう今日はベットから降りて寝よう、そう思ったのだが
後ろのラフから抱きしめられ、動けないでいた。
しかも抱きしめられているということは
つまり……その…背中にラフの控え目な胸が…
「今日は眠れないな……」




