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13話 トカゲ

朝、ラフより早く起きる。

さて今日こそはギルドに行くか。


まだラフはぐっすり眠っているようだ。

折角だし寝顔でも拝ませてもらうとするか。

やっぱりラフは可愛いな……整った顔立ちだが少しあどけなさがある。

しかしこうやって人の寝顔を眺めている俺ってどうなんだろう……

まあラフが可愛いから仕方がない!


そんなことを考えているとラフが寝言を呟く。

「んぁ、ライさん…次こそは……」


なにが次こそはなんだろうか。すごく気になる。

結局その次こそはの意味を知ることはできなかった。



身支度を整えて部屋の外でラフを待つ。

勿論ラフが着替える時はこうやって部屋の外で待っている。

少し残念ではあるが。



その後、ラフと一緒にギルドへ向かう。

町の中ではそこそこ大きな建物で目立つ。


「あぅ、美味しそう…」

「ギルドに行ってからな」

途中、ラフが屋台に引き寄せられていた。

だがそこは引き留める。今日こそはギルドに行く。


ギルドの中は酒場のようになっており魔物達が騒ぎ合っていた。一部が俺達に目線を向けられる。


やっぱりここでも注目をあびるか……

気にしていてもしょうがないのでさっさと受付へと向かうことにする。

受付には岩の塊がいた。ゴーレムだろうか。足から頭まで全身岩だ。


「人間か?」

受付のゴーレムが話しかけてくる。


「はい、やはり人間だと仕事を受けられなかったり

するんですか」

「いや、そんなことはない。うちは誰でも歓迎する。ギルドは初めてか?」


「はい。仕事を紹介して欲しいんですが」

「そうか、じゃあ最初から説明するな」



仕事は主に二種類あるらしい。

ギルドが出す仕事と個人から直接受ける仕事だ。


前者は主に魔獣の討伐。

魔獣とは魔物や人間ほどの知性はない物をさすらしい。

被害を出したもの、出す恐れがある物の討伐らしい。


後者は主に雑用らしい。

掃除、ペット探し、素材集めなどだ。


「受けられない仕事とかはないが……自分の力にあった物を選べよ。無茶な仕事を受けて死ぬ、というのは良くある話だ。まあいまはあんまりギルドの仕事はないんだがな」

やはり人間との戦いが終わったせいだろうか。

人間側でも仕事が無くなったと言っていたしな。


「だがお前らの実力も知っておきたい。だからこの仕事を受けないか」

そういって一枚の紙を出す。


「最近この辺りにいるヘビーリザードの討伐だ。こいつを倒せるなら大抵の仕事は大丈夫だろう。恐らくそこの嬢ちゃんは大丈夫だろう。お前は分からんが」


「では受けます。倒すだけでいいんですよね」


「ああ……そうだが、言っておいてなんだが大丈夫か?」

まあ、大丈夫だろう。負ける気はしない。


「ははっ凄い自信だな。ま、死なないようにな」


ということで酒場からでる。一応セミラさんにも話を聞いて

みると、セミラさん曰くただの大きなトカゲらしい。

しかし鱗が凄く堅く並の剣では通らないそうだ。

そのため鎧などに重宝され鱗などは高く売れるらしい。


「まぁ、貴方達なら大丈夫だと思うけど気をつけてね」



町を出てそのヘビーリザード、否トカゲが出たという場所に向かう。


また何もない見晴らしの良い草原を歩き続ける。しばらくしてから

「お! あれですかね?」

そういってラフが指をさした。だから俺に見えないんだよ……


そのまま俺にも見えるところまで歩いた。

そこにはセミラさんの言ったとおり、巨大なトカゲがいた。

本当に巨大なトカゲというのがふさわしい。


「じゃあ行ってくるな」

「はい、気を付けて」


とりあえず俺がワープでトカゲに気付かれないように近づき色々と試してみる。

それでだめなようなら戻りラフにも協力してもらうことにした。


ワープでトカゲの足元まで移動する。

「近くで見ると更に大きいな……」


俺なんかは簡単に足で踏み潰されてしまいそうだ。凄い迫力だ。

もはやトカゲというより恐竜じゃないかこれ。

でもラフの龍の姿はこれより大きかった気がする。


うん……ラフを怒らせないようにしよう。龍の姿で踏み潰されそうだ。


「っとそんなことよりも……」

まずはこのトカゲだ。さすがにいきなりワープした俺には気づいていないようだ。

短剣で足を切りつけてみる。短剣は刺さることなくほんの少し後が残っただけだった。

この短剣でも刺さらないとは……まだトカゲは気づいていないようだ。

気にするような刺激でもないということだろうか?


次は炎の玉をぶつけてみる。今度は焦げ目すらつかなかった。


もう後、試せるものは拳銃しか残っていない。

魔素を集め頭に向かって撃ち込む。


さすがにこれは効くだろう。だがそんなことはなかった。

確かに頭から少し血は流れていた。ただそれだけで致命傷には遠い。


「やばっ」

さすがにトカゲも俺に気付いたのか首を俺のほうに向け自分の足ごと炎を吐く。

炎が届く前にワープする。

トカゲの足元は真っ黒になっていた。


「これは一回戻ったほうが良さそうだな」

ラフにも協力してもらわないとどうにかなりそうにない。

ワープでラフの場所まで戻る。


「大丈夫でした!? ライさん!」

戻るとラフが慌てた様子で詰め寄る。


「ああ、大丈夫だ。少しも怪我はしていない」

どうやらラフの目にはあのトカゲが俺に向かって炎を吐く姿も見えていたようだ。

俺が直前でワープした姿も見えていたはずなんだが……

「それでもですよ! 一瞬ライさんが焼かれたかと思いましたからね。

 もっと体を大事にしてください!」

そういってしばらくラフに怒られた。


いや、あの先にトカゲをどうにかしましょうよ……



「さて、どうする?」

「私の魔法でも傷つきそうにないですし……」

しばらくしてラフの怒りが収まった後、トカゲについての対策を立てていた。

刃も魔法も通らなかった。効いたものといえば拳銃だけだ。

それも致命傷には遠い傷だった。


それに鱗が硬いだけではない。かなり強力な炎まで吐く。

あれを食らったらひとたまりもないだろう。


もういっそのことラフに龍になってもらって踏み潰してもらおうかな。

さすがにあのトカゲも自分より大きな龍に踏まれたらただではいられないだろう。


「他に何も案がなければそれでもいいですけど……」

ラフは龍になるのが嫌なようだ。どうしてだろう。


「だって……龍の姿は疲れるんですよ。それにずっと裸っていうのも恥ずかしくて。

 人間の姿の方が長いからですかね?」

そう言う。まあ嫌がっているなら強要するのもあれだろう。

二人でほかに案を考える。

これなら倒したことのある魔物とかにも話を聞いておくべきだったか。

一回町に戻るのもありかもしれない。


しかし倒し方はあるはずだ。要は鱗さえどうにかすればいいのだ。

鱗がない場所……目か? あとは口の中か。


「分かりました。私がトカゲの動きを止めます」

ラフが動きを止めそこを俺が目を狙って撃つ。それでいいだろう。

上手くいかなかったらまた戻って作戦を立て直せばいい。


「じゃあやるか!」

「はい!」


ラフと一緒に再びトカゲの場所までワープする。

相変わらずトカゲは気づいていないようだ。


「じゃあラフ頼む」

「分かりました」


俺は巻き込まれないようにワープし弾を撃つ準備を整える。

ラフがトカゲの動きを止めるためにトカゲの体を氷を張った。


トカゲは自分の体の異変に気付いたようだがもう遅い。

もう頭まで氷で固定されている。


「よしっ!」

頭を狙い、引き金を絞る。

魔素の弾はトカゲの目を貫き、そのまま頭まで貫いた。


トカゲは力なく横たわる。


「やりましたね!」

「だな」


本当鱗さえどうにかなればあっけなかった。

これもラフが動きを止めておいてくれたおかげだ。


「ありがとうなラフ」

「いえいえ、お役にたててよかったです」


さて……この死骸はどうしようか。ギルドの受付のゴーレムは倒してこいとしか言っていなかった。

セミアさんから聞いた話だと高く売れるのだろう。

どうにかして持ち帰りたいが……ワープで持って帰ったら目立つだろうしなぁ。

ラフが龍になって運ぶのもまた目立つ。


それに悩んでいると後ろ声が聞こえた。


「お兄さん達、強いんだね」


後ろを振り返るとそこには犬耳の少年が草原の中に一人立っていた。

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