12話 観光
宿を取りに行く。
商人さんから聞いていた宿だ。商人さんいわくここなら人間でも確実に
泊めてくれるらしい。
「ん? 人間?」
宿の主人だろう。ラミアというのだろうか。
その女性は下半身が蛇だった。
「はい、しばらくここに泊めてほしいんですが……」
その主人は俺らを観察するように見る。
「あなた達名前は?」
「ライ・クレスです」
「ラフ・レナードです」
「そう……私はセミラ・ジェーンよ。よろしくね。じゃあ、はい部屋の鍵。
お金は後からで構わないわよ。ぼったくったりはしないから安心してね」
そういって部屋の鍵を渡される。あれ……
「すいません二つ部屋を取りたいんですが」
さすがに違う部屋を取ったほうがいいだろう。
ちょっとラフがしょんぼりしている気がするが気のせいだろう。
「あれ? あなた達そういう関係じゃないの?」
「どんな関係ですか!」
「てっきり魔物と人間が一緒にいるから婚約しているのかと……」
「していないです! 事情があって一緒に旅をしているだけです」
顔を赤くしながら答える。結婚する予定なんてない! どうしてそうなった。
まあ、ラフはいいお嫁さんになりそうだけどな。料理もできて気遣いもできるし……
ちょっと抜けたところがあるのが心配かな。
「ライさん?」
おっと何を考えているんだ俺は。
「で、もう一つ部屋をもらえます?」
「それがねぇ、今その部屋しか空いてないのよ。ごめんね」
え、まじか……どうしよう。違う宿を探すかな。
「わ、私は同じ部屋で大丈夫ですよ。いままでもそうだったじゃないですか」
いや、大丈夫じゃないだろう色々と。主に俺が。
「でもここ以外で人間を受け入れてくれる場所はあまりないわよ。どうする?」
確かに今からまた新しい宿を探すのもなぁ。
仕方ない。ここに泊まるとするか。
「分かりました。ではよろしくお願いします」
とりあえず部屋に言って服などの荷物だけを置いておく。
さてまずはギルドとやらに行ってみるとするか。
そう思っていたらラフが
「じゃあ早く屋台を見に行きましょう!」
本当はギルドを見に行く予定だったんだが。
まあそんな急ぐ旅でもないしまったりしてもいいだろう。
なんかラフのことになると甘くなってしまうなぁ……
「ライさんこれもおいしいですよ!」
「ああ、うんよかったな」
ラフはずっと食べている。屋台にきてからずっとだ。
そのせいで随分と周りから注目を浴びている。
「すごい食べてるな……」
「隣りのはひょっとして人間?」
「どうして人間と魔物が一緒にいるんだ?」
うう、周りからいろんな声が聞こえる。
しかも俺は人間だし更に注目を……
「おい、兄ちゃん。よかったら彼女さんに何か買わないかい?」
近くの屋台のおっちゃんが話しかけてきた。彼女ではないんだけどな。
どうやら様々なアクセサリーを売っているようだ。
いつもラフには世話になっているしな。そのお礼に買ってもいいかもしれない。
そうやってラフと屋台を回るうちにあっという間に夜になっていた。
二人で宿に戻り始める。
「楽しかったですね!」
「まあ、ラフの喜ぶ姿を見れてよかったよ」
本当あれからずっと食べ続けていた。
ラフって大食いなんだな……まあ、ラフが食べている姿は本当に幸せそうだった。
まあ、こうやってまったりするのも悪くない。
「お、遅かったわね。楽しんできた?」
宿に戻るとセミラさんが声をかけてくる。
「はい! 楽しんできました。どの食べ物もおいしかったです」
ラフが満面の笑みでそう答える。
「ふふっ、それはよかったわ。まあゆっくりしていってね」
そういってセミラさんが娘を見るような目で微笑む。
まあ、今のラフは誰が見たって微笑ましいよな。
「これからはどうするつもりなの?」
「しばらくはギルドでお金を稼ごうかと」
「そう、ギルドでね……気をつけてね」
気をつけるか、やっぱり人間が行くのは問題があるのだろうか。
まあ、なんとかなるだろう。最悪ここを出ていけばいいしな。
ラフと部屋に行く。荷物を置きに来た時には気付いていなかったが……
ベットが一つしかない。どうやら二人用のようだ。
「……俺そこの椅子で寝るからベットは使っていいから」
「いや悪いですよ。その……ライさんさえよければ一緒に…」
もじもじしながらラフが言う。
いや流石にそれは…
一緒に寝たい気持ちはやまやまだが俺の理性が耐えられる気がしない。
ということで無理やりラフをベットで眠らせた。
もちろん俺は椅子で寝た。
「せっかく一緒に寝れると思ったのに……」
そういうラフの呟きが聞こえた気がした。
ちょっと勿体無かったかな……
まあ毎日こんなことになっては困る。
明日にはセミラさんにもう一つ用意してもらうとしよう。
 




