カウントダウン 3
sideレイア
俺の誕生会から3ヶ月が過ぎた。後3日で卒業式である。
卒業式と言えば普通、壇上に上がって賞状受け取り、席に戻る。その後色々な話があって涙ぐましいことになるものなのだが、俺は違った。
「先生、もう一回言ってもらって良いですか?」
「今年は総代表のスピーチ、お前がやれと言った」
「なんでそんな話になるんですか⁉︎」
通常、この手のスピーチは世間への影響力があり、学院のアピールになる騎士科や魔法工学科が行うのが普通だ。
なのに何故冒険科の俺がやらなきゃならんのだ。
「説明してください」
「なに、簡単な話だ。卒業後のスピーチは社会的影響力がある学科の主席がやるのは知ってるだろう。
で、私がお前を推薦した訳だ」
「いやいやいやいや、なんで今回に限ってそんなアクティブなんですか⁉︎
と言うかなんで俺⁉︎アリシア第一王女の姉とか、魔導商会の令嬢とかいるじゃないですか!」
「何故と問うなら私もしっかり答えよう。理由は大きく分けて2つ。
1つは自分の生徒推薦して採用されれば私の給金アップが見込める」
「私利私欲じゃないですか!」
仮にも聖職者が給金目当てでそんな事するなよ!
「そして第2に、単にお前の社会的影響力が他より群を抜いて高いということだ。
生徒教職員から信頼され、未確認Bランク魔物の発見及び討伐し、王国の名誉騎士で、公爵家長子で、聖剣使いで、皇帝と国王に良い意味で目をつけられてて、交流祭で闘技大会優勝し、Sランクのケルベロスを討伐、世界3大脅威の雷魔を退けた。
これだけやっておいて社会的影響力が無いとは言わせない」
「ぐっ・・・・」
確かに、そうやって改めて言われると俺って凄いことになってるな。半分位『ぼく』の所業だけど。
「そんなお前が、選ばれないとでも思ったか?そこらの貴族や商会よりも影響力がある立場なんだぞ?」
「・・・・・」
結局俺は押し切られてしまった。
「どうしたもんか・・・・」
「どうかしたのかレイア?」
「あぁ、エッジ」
俺が未だ1人悩みながら過ごしていると、エッジが来た。
短かった髪が結構伸びて、漸く普通のエルフのようになってきた。
エッジは髪が短いとどうも馬鹿っぽく見える。
「いや、卒業式のスピーチどうしようかって思って」
「はぁ⁉︎お前がやんの⁉︎」
「どうもそうらしい」
「マジでか!!あっははははは!!!」
「笑ごろじゃねぇよこっちは・・・」
しかもやたらツボに嵌ったのかずっと笑ってる。
エッジがいつも変なのは周知のことだからあまりこっちに注目は集まらない。
だがこの暴食魔人は違った。
「どうかしたのか?」
「あぁベルゼ!聞けよ、こいつ学院の卒業後のスピーチやるんだってよ!」
「はぁ⁉︎なんでお前が⁉︎」
「社会的影響力を考慮してだそうだ」
「あ〜、お前バカだけどそういうとこあるもんな」
「お前にバカって言われたくねぇわ!!」
なんでこの2人にバカって言われて笑われないといけないんだ
「で、どうしたら良いと思う?」
「ん〜・・・・家族に相談したら?」
エッジ案だ
「流石にそこまで話を広げる訳には・・・それに家族が知ってたらスピーチの意味無いだろ」
「それもそうか・・・」
「なら、前にスピーチした事ある卒業生に聞いたら良いんじゃね?」
「そんな知り合いいないぞ?」
「なに言ってんだ、アーケティア副団長は5年前の卒業生で主席だぞ。あの人がスピーチやったって聞いた」
なんでこいつそんな事知ってるんだ・・・
俺の視線の意味を悟ったらしいベルゼは慌てて弁解する
「いや!前の仕事で知っただけだぞ⁉︎俺個人でやった事じゃねぇから!ストーカーとかじゃないから!」
あぁ、あの王族暗殺未遂事件か。
騎士団長はいつも居ないから、実質王城の最高戦力はイリス様を除けばアティさんだしな。
「でも確かに良いなそれ。今日聞きに行ってみるよ。ありがとなベルゼ」
「気にすんな、俺は金さえ貰えればそれでいい」
「金取るの⁉︎」
結局俺は銀貨1枚取られた。地味に取るな・・・・
放課後、俺は王城に来ていた。
そばの騎士を引き止めてアティさんの居場所を聞く。
「失礼します、アーケティア副団長はいらっしゃいますか?」
「あ、レイアくん、副団長はいつも通り訓練しているよ。もうあと10分位で終わるはずだから今行けば丁度いいんじゃないかな」
「ありがとうございます。それじゃあお仕事頑張ってください」
俺は急ぎ足でいつもの訓練場へ行く。
暫くすると訓練場についた。丁度訓練が終わった頃のようだ。
これなら態々休憩中に聞かなくても色々片付け終わってからでも大丈夫そうだ。
「アティさん、少し良いですか?」
「ーっ!レ、レイアくん、なんですか?」
アティさんは前の事を根に持ってるのか、未だに警戒を解いてくれない。
「おいお前ら!レイアが来たぞ!」
「副団長も一緒だ!ぜってぇ面白い事になるぞ!」
「全員聞き耳立てろ!」
「レイア〜!愛の告白かぁ⁉︎」
「うるさい!!こっちは真面目な話です!一々反応しないでください!」
俺がここに来るといつもこうだ。騎士団の人は父さんの同僚や後輩も少なからずいるし、気軽に接せるんだけど、なんか気軽と言うより軽いと言う方が正しい気がする。
「まったくあの人たちは・・・アティさん、片付けや着替えが終わってからで良いんんですが、少々学院の事で相談がありまして、何処かで落ちついて話せませんか?」
「あ、え、えぇ、わかりました。それでは私は着替えてくるので私の部屋で待っててくれますか」
「わかりました」
だがしかし!話が纏まったところで敢えて茶々入れるのが騎士団クオリティ
「おいお前ら!副団長がレイアを部屋に誘ったぞ!」
「うぉおおお!!遂に副団長が獣になった⁉︎」
「副団長〜!成人したばっかの子供を誑かしちゃいけませんよ!」
「騎士団の副団長が性犯罪はマズイっすよ!」
「やかましいぞ貴様ら!また追加で訓練するか⁉︎」
『すみませんでしたぁぁ!!!』
相変わらず賑やかだ。俺は先にアティさんの部屋へ向かった。
部屋で待つ事凡そ10分、アティさんが来た。
「すみませんレイアくん、少し待たせてしまいました」
「いえいえ、そんなことないですよ。そもそもこちらが勝手に押し掛けてしまった訳ですし」
アティさんは湯浴みをしてきたようで髪が湿っている。服装は珍しくスカートを履き、上に長袖のシャツを着ている。
「アティさん、押し掛けた俺が言うのもなんですが、その格好はちょっとまずいと思います」
「ん?いえ大丈夫でしょう。それともレイア公爵家長子殿は私を押し倒したりしてしまうのですか?
ふふふっ、そうなったら私としても光栄な話だし、構いませんよ?」
本人は流し目を送ってるつもりなんだろうけど、鋭い視線がより鋭くなって睨まれてるようにか見えない。
「バカ言っちゃいけませんよ。アティさんは俺の尊敬する師です。そんな人押し倒すなんて出来ませんよ!
っていうかからかってますよね⁉︎思いっきり笑うの堪えてますよね⁉︎」
よく目が笑っていると言う表現があるが、アティさんは思いっきり顔も笑ってた。
最早この人隠す気ないよ。
「ふむ、ばれましたか。私も結構恥ずかしいこと言った自覚はありますしね。
レイアくんも雷魔と戦うのにカーススキルが必要になるのなら、経験しとくのも考えなければいけませんよ。
・・・・・それに、別に冗談ではありませんし」
「最後なんか言いましたか?」
「い、いや!気にしないでくれ!そ、それはそうと相談とはなんですか?」
アティさんに言われて思い出した。忘れた原因もアティさんだけど。
「じつは・・・」
俺は学院で受けた説明をそのままし、最後にベルゼに聞いた話をして協力を求める。
「そうですか・・・・私の時は学院の同級生や教師、親への感謝の言葉などを纏めてスピーチしたはずです。
なので初めに挨拶し、そこから同級生、教師、親の順番で感謝を述べるのもいいですね。
後は自分の夢や目標を掲げて卒業スピーチと言うより自分の決意を固めるための言葉を書く先輩も居ましたね」
「なるほど、感謝の言葉と目標ですか・・・」
それなら恥ずかしくないスピーチが出来るはずだ。
「わかりました。ありがとうございますアティさん!なんとなく文の構成が出来てきました!」
「そうですか?力になれたならよかったです。卒業式、私も見に行くので頑張ってくださいね」
「はい!」
俺は城を後にし、それから部屋でひたすら考えた。
その日は早めに食事と入浴を済ませ、誰とも話さずに部屋に篭り、何時間も考えた。
考えて考えて、なんとか原稿が出来上がった時、とんでもないミスに気がついた。
「・・・・・課題やってなかった」
俺の夜は、まだ終わらないようだ。
と思っていたんだが、俺のミスはこれだけじゃなかった。
水分と夜食を取ろうと部屋の食料棚に近づいた時、あるものが目に入った。
「・・・・・え、もう日付変わってるの?」
俺の夜は、もう終わってた。
結局一睡も出来なかった俺は授業中に寝てしまい、かなり酷く怒られてしまった。
卒業期まで、あと2日
卒業編終わったら何かちょっとした小話しようかと思ってます。
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