『俺』と『ぼく』
sideレイア
目が覚めると、辺りは白一色。床も壁も天井も白くて壁と天井の存在が分からない位だ。
俺は体を起こし、記憶を探る
「何処だよここ・・・確か武道大会中で・・・罠張って・・・・・・・そうだ‼︎ゴブリンロードは‼?」
「ああ、あの汚いのは『ぼく』が倒したよ」
後ろから気絶する前に聞こえた声が聞こえた
俺は飛び起きて後ろを見る。
「やあ、おはよう『俺』」
そこに居たのは、小柄で全身黒い服を着た、白銀の髪に紅と蒼の、俺とは左右対称のオッドアイをした少女だった。
「君は・・・誰?」
「『ぼく』は君さ。初めましてだね『俺』」
何を言ってるのか分からないが、俺よりもここについて知ってそうだ。
「君、ここは何処なんだ?」
「ここは君の中だよ。君の精神世界。心の中って言った方が分かりやすいかな?」
心の中?
「俺の心の中・・・・なら何で君が居るんだ?」
「いい質問だね。答えは簡単。『ぼく』と君が同一人物だからだよ。
わかりやすく言うならもう一人の君ってとこかな?」
もう一人の俺?同一人物?って事は、
「俺って女なのか!?」
「『ぼく』も君も正真正銘男だ。精神的にも肉体的にも先天的に男だよ」
「え、じゃあ君は男なのか?」
「そうだよ。あと、その君って言うのやめてくれないかな?『ぼく』の事は『ぼく』と呼んでくれ。
『ぼく』も君の事はレイアか『俺』って呼ぶからさ」
『ぼく』、明らかに名前じゃ無いが、良いのか?
「・・・・じゃあ『ぼく』、よろしくな。
それで、何で俺はここに居るんだ?」
「君は『ぼく』に助けを求めた。だから『ぼく』はレイアを助けるために体を借りさせて貰ったんだけど、
幾つか言いたいことがあって呼び出させてもらったんだ」
言いたいこと?
「あのねぇ、『ぼく』が君を助けるって事は相当な事なんだよ。それこそ命の危機位なものだし、毎回助けられないんだ。
『ぼく』ならゴブリンロード程度に遅れはとらないし、とっても問題はないんだけど、
レイアが死ぬって事は『ぼく』も死ぬって事なんだ。だからあまり無茶しないで欲しいんだよ」
「・・・・つまり俺が死ぬって事は1つの命が無くなるんじゃなくて2つの命が無くなる。
しかも一方は何も出来ないからもう一方である俺に無茶しないで欲しい、という事か?」
「そんな感じさ。そもそもレイアはカーススキルを持ってるだろう?確か【色欲】だったね。
【色欲】を使えば大抵の脅威からは逃れられる。副作用として性的欲求が高まるけど、そんな事目じゃないくらいの効果だ。
有効活用してくれよ」
え、あの俺の汚点その2とも言えるスキルがそんなに強いものだったなんて・・・・ちなみにその1は【魔法神の呪縛】だ。
【色欲】はどれ位なんだ?
「【色欲】はどれ位強いんだ?」
「何処までも、だよ。制限はない。
ただ効果が切れると使った分だけ性的欲求が高まるってだけだよ。
犯罪者にならないように彼女でも作りなさい」
「うるせぇ‼︎・・・・あ」
しまった。初対面なのに怒鳴っちゃった
「ふふふ、元気だねぇ。怒鳴った事は気にしないで良いよ。『ぼく』はレイアよりも、少なくとも今は強いから怖くないよ。
そろそろ時間だしさよならだ、『俺』」
「ーっ‼ま、待ってくれ、また会えるのか?」
「会えるかもしれないね。ただ、『ぼく』に会うって事は相当辛い時だ。『ぼく』としてはあまり来ないで欲しいな」
つまり会えるって訳だ
「じゃあ、元気でね、『俺』。帰ったらステータスを見るといい。
『ぼく』から細やかなプレゼントがあるから」
「??ああ、また会おうな」
俺の意識は、そこで薄れ始めた。
俺の意識が闇に包まれるまで、『ぼく』はずっとニコニコしながら見守っていてくれた
「ん、うぅぅ・・・・ここ、は?」
目が覚めると俺が居たのはあの白い空間ではなく、治療院の病室だった。
「あ、お兄様‼お目覚めになられたのですか!!?」
「ソフィ・・・・」
俺の寝ているベッドの側にはソフィが居た。
嬉しそうな顔をしながら泣いている。
「お兄様‼気分は悪くありませんか!?どこか痛みませんか!?お腹すいてませんか!?
もう3日間も気を失ってたんですよ!!?」
「え、3日も!!?」
感覚的には半日かそこらだと思ってた。
言われてみればお腹がかなり空いてるし、喉もカラカラだ。
「お兄様、何か欲しいものはありませんか?
私、なんでも用意します‼︎」
「・・・・じゃあ、水と、ご飯が欲しいな。
ソフィ、何か作ってくれるか?」
「ーっ‼︎は、はい‼︎勿論です‼少々お待ちください‼」
ソフィは病室からダッシュで外へ出て行く。
「・・・・そう言えば、プレゼントがあるって言ってたな」
俺は1人になったところで『ぼく』について思い出し、ステータスを確認する。
名前:レイア・ドライア・ナイトヴァンス
種族:人間
年齢:14
性別:男
称号:封印の番人
レベル:32(15UP)
HP1620/1620
魔力:340/340
攻撃:790
魔攻:210
防御:415
魔防:160
俊敏:615
スキル:【両手剣LV6】【分析】【火魔法LV3】【光魔法LV2】【念話】【恐怖耐性LV1】
固有スキル:【魔眼王】【救済者】
カーススキル:【色欲】
加護:【剣神の加護】【聖神の加護】【戦女神の加護】【魔法神の呪縛】
固有スキルと【恐怖耐性】スキルが増えてる。
【恐怖耐性】は恐怖で動けなくなりにくくなるスキルの様だ。このスキルもってる人の過去は悲惨だと聞いたことがある。
けど
「この【救済者】ってのはなんなんだ?」
【魔眼王】の時と同じ感覚で調べる
・【神聖魔法】の威力30%UP
・使用時に【神聖剣】と【救済剣】が使える
・【神聖剣】:【神聖魔法】が剣に付与される。効果は【闇魔法】、【深淵魔法】の無効化
・【救済剣】:魔物と戦う時全ステータス+500。回復系スキルにプラス補正
「って滅茶苦茶スゲェじゃんか‼︎?」
これの何処がちょっとしたプレゼントなんだよ。破格も良いところだ。
更に【魔眼王】も調べると、2つ増えていた【反魔眼】と【鷹の眼】。
それぞれ「魔力の無効化」と「視力強化」の効果で、使用制限はそれぞれ半日に1回と1時間に1回だ。
「・・・最早ついていけない」
これはあれだな。1回寝よう。寝れば頭もスッキリするだろ。
【色欲】について調べてないけど今は放置だ。名前からして碌なものじゃ無い。
俺は思考を放棄し、眠りについた
「レイア‼︎起きたって本当!?」
「レイアくん!!大丈夫ですか!!?」
「レイア、起きたらしーなー」
「あ、ほんとに起きたんだ~」
・・・・まだ寝れそうにないようだ。
皆に自分の体調を説明し、安心して貰った所で漸く落ち着いた。
「しっかしスゲーよな。新しい魔物、しかもレベル27、しかもスキルに【鎚術LV7】に【棍棒LV7】なんて化け物相手に良く勝ったよな。
その2つだとスキルの効果両方かかってるだろ?バケモンじゃねぇか!!」
「ほんと、無事で良かったわね。あんたが死んでたらあたしたちのテストが酷い結果になるところだったわ」
まぁ、倒したの俺じゃなくて『ぼく』なんだけどな。あとクラリス酷い。
「ええ、私も騎士の話を聞いて驚きましたわ。レイア、次からは無茶しないで下さいね」
「わかったよ。でもあの時は囮が必要だったんだ。だったらエルスにやらせるをけにもいかないし、俺が残るしかないだろ?」
「うっ、す、すみませんでした・・・・」
「や、え、エルスはなにも悪くないぞ!!ちゃんと増援呼んできてくれたらしいじゃないか!!」
「でも意味無かったらしいな」
「うぅ・・・・」
エッジ、余計な事言うな!!エルスが落ち込んじゃっただろうが!!
少ししてエルスが落ち着くと、いきなり爆弾投下してきた。
「そう言えばレイアくん、ゴブリンロードの首を持ってきたときなんか変でしたよね?」
あ、ヤバイ
「??どういう意味ですか?」
やめてアリシア、触れないでお願いだから。
エルスは問答無用で続けていく。
「はい、確かあのときのレイアくんは髪は白銀、声は高くて一人称は『ぼく』、
あと良く良く見てみると目の色も左右反対の様な気が・・・・雰囲気も、何て言うか、フワフワしてて掴み所が無い感じでした。
妙に難しい事言ってきて、でも何故か上手く思い出せなくて、まるで狐に摘ままれた気分ですよ。」
「なんですかそれ、まるでレイアと正反対じゃないですか」
本当にな、俺も未だに信じられない。実際に会ったからわかる。
気配もしゃべり方もハッキリしない、幽霊とか狸とか狐とかドッペルゲンガーとか言われた方がしっくり来る。外見は完全に女の子だったしな。
「で、レイア、どういう事ですの?」
「あ、あぁ、なんて言ったら良いのかな。その時の俺、便宜上『ぼく』って言うことにするが、
『ぼく』はどうも俺の事良く知ってるみたいでさ。正直な感想は何もかも知ってて強いなにかって感じだな」
「レイアの事良く知ってるってどういう意味だ?」
「あぁ、実はな・・・・」
俺は自分の出生について話した。ソフィが居ないけど、良いか別に。
「ふむ、そうでしたの・・・・・・・つまりその『ぼく』と言うのはレイアの出生についても知ってそうな感じですね」
「口調からすれば、そうなるな。けど時間も無くて聞けなかったんだよ。他に聞きたいことがあったからそれについて話してたし」
しかし考えれば考えるほどわからんな・・・・うん、この話はおわろう。
それよりアリシアに言いたい事があるんだ
「アリシア、実はあのゴブリンロードのステータスに【雷魔の加護】ってのがあったんだ」
「「「「ーっ!!?ら、【雷魔の加護】!!?」」」」
雷魔、それはこの世界の三大脅威と言われる3つの災害だ。
1つ目は『魔力災害』、魔力が一ヶ所に溜まる事で起こる災害で、嵐や地震、新種の魔物が生まれたりする。数百年に一度起こるらしい。
2つ目は『魔王』、数千年前にいた魔物の王。当時勇者を異世界から呼んで魔王を倒したとされる。それでも人類の6割が消されたらしい。
3つ目が今回の主題『雷魔』、突然フラりと現れては町や村を壊す悪魔で、現在最も身近な三大脅威だ。
つまり雷魔はこの世で最も恐ろしい物の内の一つと言う訳だ。そんなのが絡んでるとなれば国はパニックだ。
ゴブリンロードを作ったと言うことはこの町の近くに居るかもしれないんだから
「・・・・・一応、お父様に報告しておきます。恐らく情報統制されるのでここだけの秘密にしてください。
これは王女としての言葉です。わかりましたね?」
「「「「はい(ああ)」」」」
これで今回の件は終わりだ。後は国の上層部が何とかしてくれる。
「で、大会の結果はどうなったの?やっぱり中止?それとも延期?」
個人的には延期のが良いんだけど。
「レイアが望んでるのとは裏腹に中止、って事ににるわね。雷魔の事もあるから下手したら来年も無いかも。
結果だけ言うとレイアがゴブリンロード倒した事でレイアが無条件で優勝って感じね。誇れない結果になったわね」
「ふーん。確かに誇れないけど来年頑張るよ。俺の場合就職先も決まってるから3年になって慌てる事もないし」
「やっぱり冒険者になるの?」
アリシアが不安そうに聞いてくる。確かに冒険者は命を失う確率が一番高い職業だ。
けど、
「俺には目的があるんだ。俺は、俺の出生を知りたい。世界を知りたい。アリシア、これだけは譲れないんだ」
「そう・・・・・辞めたくなったら帰ってきてよ。私は貴方のこ、こ、こ///・・・・・幼馴染みなのだから」
幼馴染みは良いけど赤くなってるから興奮してるのかと思ったらしょんぼりしてるし、分からないなぁ。
それから数分くらいお喋りしてるとソフィが戻ってきた。
父様と母様を連れて
「レイア、相当無茶したな、私に似てヤンチャな様だな。
だがな、ゴブリンの上位種相手でこの状態じゃ冒険者としてやっていけないぞ?クククク」
「うるさいなぁ、ステータスに差がありすぎたんだよ。次は楽々倒すし!!」
父様は元騎士として相当強い。俺の目標でもある。だけどこうやってからかって来るのは腹が立つ
「レイア、貴方・・・・なにか変わった?」
母様の言葉に一瞬ビックリするが、動揺を押し殺して答える。
「ははははっ、そりゃあゴブリンと死闘を繰り広げたんだから変わりもするよ」
「ゴブリン相手に死闘っ・・・・ぶっククククク」
「あぁもう!!父様は静かにしてて!!」
それきらアリシア達は帰ったが、俺は久々に一家揃って何気ない会話を続けた
side???→雷魔
「・・・・・っ!?」
特にやることも無いため日課である「【契約】の繋がりによる人捜し」をしていると、俺の体に魔力が大量に流れ込んできた。
この魔力量と波長は・・・・
「チッ、ゴブリンロードの奴、もう殺られたのか。幾らなんでも早すぎるだろうが。
せめて少し位は情報をーっ!!?」
戻ってきた魔力からゴブリンロードの得た情報を漁っているとなにか、亀裂の様な物を見付けた。
明らかに魔物以外の魔力、だが質は酷いな。まるで魔物の魔力だ。まさかこんな出来損ないの何かに負けたのか?
俺は愚痴を言いながら亀裂について調べると、その亀裂の中に文字を見付けた。
「あぁ?なんだこれ?ゴブリンロードごときにこんな技術はーっ!!!」
そこに書いてあったメッセージはまさしく俺の探し求めた手懸かり。
漸く次の段階へ進める。そう思っていた俺の気持ちとは裏腹にメッセージに載っていたのは
「・・・・・はぁぁぁぁ、まあ、あいつならなんとかしそうではあるな、それに命令は命令だ。
【契約】がある以上、従わねばな。ククククククク」
全く、命令されるなど腹立だしいことこの上無いが、面白そうだからな、乗ってやろう。
「さて、そうと決まれば早速仕事にかからねばな」
俺は計画の第二段階に移行した。
さあ待っていろ。愚かな人間共、俺とあいつの我が儘のために、死んで貰うぞ




