入学式
今は春
桜が咲き乱れ、初々しい学生が新たな学舎へやってくる時期。
ここクラウン高等学院には1つ下の中等学院の3年生が入学してくる。
そして今日は、そのクラウン高等学院の入学式である・・・・
sideレイア
俺、レイア・ドライア・ナイトヴァンスは、今日の入学式で校内の見回りを担当している。
だが魔法学院に入学するだけあって迷子なんて居なく、只々歩き回るだけの簡単なお仕事
そう、簡単なお仕事の筈だったのだ。
「あらレイア、随分と久し振りですわね」
「おやアリシア姫、お久しぶりです。どうかなさいましたか?」
「いえ、偶々貴方を見かけたので来てみたのよ」
俺は声をかけられた方へ向くと、そこにはこの国の王女、第1王女アリシア・フランシス・イーストラルの姿があった。
アリシアと俺は幼馴染だ。国に4家しかない公爵家と言う事でアリシアの遊び相手に選ばれたのがキッカケだ。
尤も、他の3家が選ばれず俺が選ばれた理由はそれだけではないが・・・・
さて、アリシアは俺の知る限り国の中でもトップクラスの美人だ。
長く、艶やかな金髪を肩の下で1つに纏めていて、鼻はスッとし逆に真紅の目は少し大きく、唇は薄いピンク、と言うより桜の様な色をしていて13歳にも関わらず男の視線を独り占めする様な色香を醸し出している。
ここ数年見ないうちにかなり成長している様だ。
「そうですか。アリシア姫、聞きましたよ。入試試験を首席で合格したそうですね。
特に実技では剣も魔法も満点を頂いたとか」
「ふふ、お世辞は良いわ。
それに貴方の時は首席、それでも剣と歴史、語学では満点だったそうじゃありませんか」
確かに俺は剣、歴史、語学で満点を取った。
代わりに数学、魔法理論は壊滅的だったが
「恐縮です。アリシア姫、そろそろ入学式のお時間では?」
「あら、そうでしたわね。
それではレイア、私は新入生総代でスピーチを読みますので、ちゃんと聞いててくださいね?」
「ええ、姫のお言葉なら、皆聞き惚れるでしょうから楽しみです」
「え、あ、ありがとうございます///
・・・レ、レイア、もうこれやめない?ちょっと疲れてきたし、笑いをこらえるのが大変なんだけど」
「そうだな。正直俺も時々笑いそうだったぞ・・・幼馴染を姫って呼ぶとか、どんな羞恥プレイだよ」
お互いさっきから顔真っ赤だぞ。
会話の内容《優雅さ》と表情《顔真っ赤》が一致してない。
「じゃあレイア、私はそろそろ式の段取りとかあるから、もう行くわね」
「ああ、また後で会おうな」
アリシアは時間に余裕がある筈なのに走って行ってしまった。転んだら大変だろうに
「さて、見回りを続けy「お兄様‼︎」・・・ソフィ?」
今度はソフィが来た。
相変わらず綺麗な明るい茶髪に蒼い目。制服もよく似合っている。うん、流石ソフィだ
「ソフィ、もう時間も無いのにどうしたんだい?」
「ええ、アリシアがこちらに来ませんでしたか?」
「あぁ、アリシアならさっきここに居たよ。
今は会場に居るんじゃないか?」
「や、やっぱりアリシアはまだお兄様の事を・・・・」
「ん?どうしたんだ?」
「い、いえ!なんでもありません。
それにしてもお兄様、アリシアを呼び捨てですか・・・・」
や、やっぱり不味かったかな?
「あぁ、最初は公の場と同じように喋ってたんだが、お互い笑いを堪え切れなくてな。
昔と同じのが俺も楽だからそうすることにしたんだ」
「そうですか・・・・」
・・・・何故だろう。ソフィからなんとなく殺気を感じるんだが
「お兄様、私もそろそろ失礼させて頂きます」
「あ、あぁ、また後でな」
・・・・結局なんだったんだ?まぁ良いや。
「俺も一回受付に寄ってから行くか」
俺は正門前の受付に向かって歩き始めたんだが・・・・
「(何故だろう。妙に視線を感じるんだが・・・・やっぱり俺は目立つんだろうか?)」
俺の容姿は身長166cmと、14歳にしては若干高めではあるが、突出して高いわけではない。
だが髪は(家族曰く)黒銀、右目は紅く、左目は蒼い、これには事情があるんだが、今は割愛する。
「やっぱり髪と目が目立つんだろうか?」
「そりゃあ目立つだろう。君は顔も男前だしな」
いきなり前から声が聞こえたので、顔を上げると受付をしている筈の先生、ミレリア・アッシュ先生が居た。
ミレリア先生は長い薄紫の髪を伸ばし放題にした何時も眠そうな金色の目をした、まるで子供がそのまま大人になったような先生だ。
これでもかなり優秀な魔法使いらしい。
「・・・・先生、放任主義はかまいませんが受付位はサボらずやって下さい」
「君は失礼な奴だな。ここは受付だぞ?何処をどう見たら私がサボってる様に見えるんだ?」
周りを見てみると既に受付に居たようだ
「すいません先生、受付に着いていた事に気が付きませんでした」
「おかしな奴だ。それで、何の用だ?」
「えぇ、見回りの完了を報告に来ました。問題ありませんでしたよ」
「そうか、ご苦労だったな。もう行って良いぞ」
「それでは失礼します」
さて、アリシアの晴れ舞台だ。しっかり聞いて褒めてやらないとな。
あいつは昔から褒めてやらないと膨れて怒るからな。
それも可愛いんだが。
俺は仮にも王女へ言ったら怒られそうな程失礼な事を考えながら入学式会場へ向かった。
『ーですので、皆さん。身分を気にせず、互いに切磋琢磨して実力を伸ばし、学院生活を楽しみましょう。
新入生代表、アリシア・フランシス・イーストラル』
ーパチパチパチパチパチ!!!
流石王女様、人望がある。会場の殆どの人が拍手している。
拍手してないのは寝てる生徒と司会の人だけだ。
『それでは新入生は2年生が引率しますので、引率する2年生から逸れない様に教室へ行ってください』
俺も引率なんだよなぁ。仕事しないとHRに遅れてしまう。
引率するクラスの元へ行くと、案の定、アリシアとソフィのクラスだった
「あらお兄様、お兄様が私達の引率なんですか?」
「ああ、そうだ。1年S組の諸君‼︎俺がこのクラスの引率係だ‼︎逸れない様にしっかりついてきてくれ‼︎」
俺はS組の生徒を連れて、廊下を歩く。
S組とは、各クラスS、A、B、C、D、の中で最も優秀だった生徒がいる、言わばエリートクラスだ。
この中には既に実践を経験した生徒も少なからず居るだろう。
俺は2年S組だ。
暫く歩き、1年生の引率を終え、自分のクラスへ行く。
2年生も未だ自分のクラスを知ってるだけでクラスメイトや先生は知らない状態だ。
教室へ着くとそれなりに見知った顔も多く居る。
例えばこいつ
「よおレイア‼︎また同じクラスになったな‼︎」
「ああエッジ、お前もS組だったのか」
目の前にいる金髪男はエッジ・スチール。
顔はかなり良いのだが頭が余り良くない為S組に居るとは思わなかった。
去年のクラスメイトだ。
そしてこいつの特徴は長い耳だ。
そう、エッジはエルフだ。
この世界には様々な種族が居る。俺の様な人間族、エッジの様なエルフ族、
他には肌が浅黒い魔族、耳や尻尾が特徴的な獣人族、背の小さな小人族、力持ちのドワーフ族等が居る。
「エッジ、彼女とは一緒になれたのか?」
「おうよ‼︎同じクラスになれるように勉強頑張ったわけだしな‼︎」
こいつには彼女がいる。犬系の獣人のクラリスと言う女の子だ。茶色い髪と耳が特徴の気の強い子だ。
「それにしては見当たらないが?」
「引率だってよ。帰り道で迷ったんじゃねぇの?」
そう、クラリスは犬系の獣人の癖に方向音痴だ。街中は勿論校内でも迷う程の方向音痴だ。
「まぁその内戻ってくるだろ。
それより俺らの担任誰だか知ってるか?」
「いや、そもそも先生が来るまでわからないだろう?まさかエッジは知ってるのか!?」
「おうよ、喜べ、あの適当で授業をすぐ終わらせてくれるミレリア先生だ‼」
「マジかよ・・・・」
ミレリア先生が担任だと?
あんな先生担任に持ったら1人の生徒に仕事を丸投げしかねないぞ!?
「ほら〜席に着け〜。
出席を確認するけど、居ない奴はいないよな。初日早々遅刻する馬鹿はここには居ないはz「すいませーん!!遅れちゃいましたー‼!」
・・・・馬鹿はいないよなぁ。それじゃあもう自己紹介とかも抜きだ抜き。
私の事はミレリア先生と呼べ。
じゃ、あとは時間まで好きにして良いぞ〜」
全く、空気も読まずに乱入してきたクラリスもだけど。なんて適当な人だ。
けど指摘するとこれから1年間、全ての仕事を押し付けられるから言わない。
「それじゃあクラス委員を決めるぞ〜。取り敢えずレイア、お前もクラス委員な」
言わなくても押し付けられた・・・・とは言え断れば確実に更に厄介な目にあう。それはまずい。
「レイア、お前なら学院の行事も把握してるだろ。説明してやれ」
「わかりました。
俺はレイア・ドライア・ナイトヴァンスだ。1年間クラス委員をさせてもらう。よろしく。
さて、皆も知ってると思うが、後2ヶ月で武道大会が開かれる。去年は参加出来なかったから今年は気合いをいれていこう。
ルールも簡単に説明しておく。使用武器の制限は殆ど無いが、聖剣や魔剣の使用は禁止、スキルは魔法系含めて上級以外有だ
特殊な結界が張ってあって、リタイアするか致命傷を受けたら結界から弾かれるため傷は気にしなくて良い。
質問はあるか?・・・・・・無いようだな。
この大会が終わったら暫くはテスト以外は特に何もない。俺からは以上だ」
ここで1つ解説を入れようと思う。
スキルにはいくつか種類がある。その種類とは
・魔法系スキル
【火魔法LV1】等があり、LVを上げていくと威力や効率が上がっていく。
最大レベルの10までいくと、【火魔法】の場合は【火炎魔法】に変わる。
他の属性と組み合わさると、例えば【光魔法】と【火炎魔法】だと【聖炎魔法】になったりする。
・武器系スキル
【剣術】や【槍術】、【体術】等、武器を使うのに必要なスキル。
絶対必要と言うわけでもないが、持っているとLVに応じて攻撃スキル等が使えるようになる。
派生系として【大鎌】や【双剣】、【大盾】等があり、こちらの方が一般的である。
生産系スキル
・【調合】や【錬金術】、【鍛冶】等があり、LVが上がると品質や効果も高くなっていく。
専門知識が要るため持ってる人は多くは無いが唯一、魔物から素材を採取する【剥ぎ取り】は一般的だ
・固有スキル
ある程度は系統分けされているものの、全て別の効果を持っていて、使用者がこの世に一人しかいないスキルの事。
子供へ受け継がれるものもあれば、そうでないものもある。
これ等を一纏めにしてスキルと言う。
閑話終了
いつの間にやらHRも終わっている。
入学式の日は授業は無いためこれで今日は終わりだ
「レイア~、何か依頼受けに行こうぜ~」
「また金欠か?」
エッジは親からの仕送りも無いため、度々冒険者として簡単な仕事を受けている。
学生でありながら冒険者であることは珍しくないが、貴族等の裕福な家は、仕送りがあるため認められない。
かくいう俺もその一人だ。早く冒険者になりたいのに。
「いいよ。行こうか。クラリスは来るのか?」
「いや、あいつは今日は来ない。先生に呼び出し食らってるからな」
あぁ、遅刻してたもんな
「それよりギルドに行こうぜ!!」
「あぁ、装備を取ってきてからな」
さあ、一仕事していきますか