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黒銀の魔眼剣士  作者: 神名一葉
第3章:強さを求めて
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間違えないための情報収集

久々の更新です。

ぶっちゃけ忘れてました(*´∀`*)


だって、素晴らしき日々が面白くて難解なのがいけないと思います!

めちゃ面白かったです!ありがとうございます!

sideレイア


狐の襲撃の翌日、事後処理に追われていた俺たちは作業を一時休止して長に呼び出されていた。


「さて、エンヴィとベルゼ以外の方とは初対面ですな。はじめまして、私はこの居住区の長をしているエリアルドと申します。娘と孫がお世話になっているようで」


俺たちの前にいるのは若者(子供から30代の外見)が多いヴァンパイアの中では珍しい70代ほどに見える老人だった。

ヴァンパイア共通の特徴として銀髪赤目だが、顔に皺が多く貫禄がある。腰が曲がっていて杖を持っているが、他者の補佐を必要とするほど歳ではないようだ。


「はじめまして。北方の大陸から来ました、イーストラル王国次期国王のレイア・ドライア・ナイトヴァンスです。

娘さんとお孫さんと言うと、イリス様とエンヴィのことでよろしかったでしょうか?」


「ええ、ええ、それに一応そちらのアリシア様も、と言うことになりますかな?」


「そういえば、そうなりますね。お祖父様、ですか。まさかこの歳になって祖父ができるとは思っていませんでしたわ」


イリス様と血が繋がってると言うのなら、そりゃあそうなるか。そんな当たり前の可能性すら微塵も考えてなかった。

やはり俺は、一歩考えが及ばないところがあるな。


「それでは、急かすようで申し訳ないが本題に入りますかの。

まず今回の件の被害は既にお聞きになられてるでしょう。ですが、人的被害以上の深刻な問題があるのです。それが上に空いたあの大穴の存在ですな。

あの大穴の影響で一時的に内部に異常な冷気が入り込みました。穴自体は【土魔法】の使い手でなんとか塞いだのですが、土地の性質上非常に脆いものになってしまいました。おまけに入り込んだ冷気で家畜の4割と作物の2割が死に、継続的な食糧供給が困難になりました。」


「そこまで・・・」


たしかにあの大穴はでかかったが、一晩の間に塞がってたから大事にはなってないの思っていた。


「何より深刻なのは、こちらも食料関連なのですが、氷龍様がお亡くなりになられた影響で大陸内の魔物の活動が活発化し魔物の縄張り争いが発生しているようで、魔物のレベルが急速に上昇し、通常の動物たちも殆どが捕食されております。

このままいけばこの居住区も見つかりますし、食糧難で餓死者も出始めます。

そこで貴方方へお願いなのですが、我々をそちらの大陸で住まわせていただきたいのです。有事の際の移動手段が用意してありますので、護衛もお願いしたい。」


「移住・・・ですか」


エンヴィの様子を見れば環境の変化で死ぬことがないのは分かるし、戦力にもなる。受け入れるのが道理だが・・・


「わかりました。護衛させて頂きます。ただ、住居については保証しかねます。王国の首都である王都は狐の襲撃により壊滅状態、復興中ですのでそちらさえ宜しければ復興にご協力いただきたい。嫌だというなら強制はしません。王国での生活が嫌だというなら他国又は王都以外の街への紹介状も出しましょう。」


破格の条件のつもりだ。今回の件で被ったヴァンパイアたちの損害は本来なら必要のないものだった。

俺たちがここに居なければ、起こらなかったことなのだ。責任を取るのは当たり前というものだ。


「ええ、ええ、助かります。感謝致します、レイア殿」


その後の細かい話し合いにより、出発は3日後、移動は昔乗った魔導飛行船のようなものを使うらしい。








そして3日後


一部の老いたヴァンパイアや妊婦、及びその夫達は暫くこの地に残って残りの食料で食いつなぎながら第2便を待つそうだ。

減った食料でも人数が少なければなんとか生きていられる。

置いていかれる側からすれば見捨てられたと感じるような行為だが、置いていかれる側の顔には不安の表情はない。よほどの信頼関係がなければ、ああも笑顔で見送れないだろう。


ああ、そう。今目の前で、ヴァンパイア達が見送る側と見送られる側とで別れて手を振っている。


飛行船は速度を上げ、『氷の大陸』に残ったヴァンパイア達の姿があっという間に小さくなり、見えなくなった。


船に乗っているヴァンパイア達は先ほどまでの笑顔とは逆に泣きそうな顔をしている。しかし泣いている者は居なかった。

あぁ、なんて強い種族なんだろうか。









飛行船が飛び立って4日、俺たちは王都に到着した。

ヴァンパイア達が作った飛行船は俺たち王国のものより数段性能が良いようだ。

既に王国内に入った時点で【念話】によって王都とは情報交換をしてある。


今はヴァンパイア達はエンヴィとベルゼが宿舎に案内している。

アリシアとアヴァールは他の仕事で居ない。ナイトは他の古代龍に警告しに飛び立って行った。

俺はイリス様と復興の進んだ王都の臨時行政施設の、数多くある会議室の一室を借りて話し合っている。


「イリス様、彼らへの配慮感謝致します」


「いいのよレイア、そもそも貴方はこの国の王なのだから。正式な発表がないだけで国の上層部はみんなそう思ってるわ。私は臨時の統治者なのだから、早く代わってほしいものね」


「・・・すみません。俺が狐を倒せてさえいれば」


「い、いや、責めてるつもりはないのだけど・・・そ、そういえば今後はどうするのかしら?狐討伐に向けて何か必要なものはあるかしら?可能な限り用意するわよ!」


こういう時の話のそらし方はアリシアそっくりだなぁ。

だがありがたいのでそのまま話に乗ってしまおう。


「情報が必要です。狐、というよりソフィの目撃情報ですかね、あとは怪奇現象が起こってないか、それから・・・・」


あいつが次にやると言ったことは確か・・・・


『まず南極大陸、この世界では『氷の大陸』って言うんだっけ?そこに行って荷物を手に入れる。

次に旧魔王城を占拠して防衛装置を整える。

次にボクの大切なものを迎えに行く。

次に君をぶっ殺す。

最後に逆らった神々をぶっ殺して終了かな?

わかりやすく説明するとこう言うこと。おっけぇ?』


「魔王城、あと魔王に関する情報が欲しいです」


幸いヴァンパイアは沢山いる。イリス様もヴァンパイアだ。魔王だったヴァンパイアの事は詳しいだろう。


だが俺の予想に反してイリス様の表情は暗い。


「魔王・・・ねぇ。

教えたいのは山々なのだけれど、そんな大昔のこと知ってるヴァンパイアは結構な高齢の方だけよ。今ここにいるヴァンパイアだと、居住区の警護をしてた一部の上役か長である私の父くらいなものよ。悪いけどそっちに聞いてちょうだい」


「ありがとうございます。では早速行こうと思いますので、これで失礼します」


「ええ、国の方は心配要らないから、ベストを尽くしなさい」


イリス様に一礼して去る。


居住区に長がいるはずだ。

居住区を訪ねて長へ取り次いでもらう。長は見た目に反して高齢だとヴァンパイアたちが言っていた為復興作業にはヴァンパイア関連の書類で世話になっている。

だからいつも部屋にいる。


「到着早々申し訳ありません、長」


「いえいえいえ、レイア様には良くして頂いておりますからな。新たなる民としては、むしろレイア様自ら足をお運びになったこと申し訳無く思ってしまいますよ。」


『国』という概念のないヴァンパイア達は王国についてから俺に対する態度が変わった。だが、それなりに親しくはさせてもらっている。


長はこの国の王族と血が繋がってるので公爵にどうかと言う話もあったが、本人と国とで話し合った結果伯爵の地位に就いた。

復興が進んだらヴァンパイア達用の領地を与えるつもりでいる。

閑話休題それはさておき


「さて、確か魔王の事が気になるとかで」


「はい、イリス様から魔王の事は高齢のヴァンパイアか長、居住区の警護の上役の者が詳しいと聞きましたので」


長はやや困惑した顔で話を続ける。


「ただ、魔王がヴァンパイアであると言うことは出来るだけ伏せる方向でお願いします。」


魔王=ヴァンパイアの図式は有名なものではない。

俺たちが広めない限り早々知れ渡ることはないだろう。


「わかりました。その件については保証します」


俺の返事を聞いた長はゆっくりと語り始めた。


「我々ヴァンパイアは非常に長命です。病に侵されたりしなければ、真っ当に生きれば1000年ほど生きることができます。」


「あ・・・・」


そういえば数年前にエンヴィがそんなこと言ってたな。なんで忘れてたんだろう?


「私がまだ幼少の頃、私の父が語っておりました。叔父には、女の幼馴染が2人いました。勿論父の幼馴染でもありました。

彼ら4人は仲良く育っていきました。閉鎖的な空間で過ごすヴァンパイアにとって一緒に過ごした女はそのまま結婚相手になることが多い。当然父達もそうなるはずでした。」


「・・・・・」


そこでそうならなかったから、『魔王』が生まれたんだろう。


「父も叔父も、ある1人の幼馴染が好きだった。そして、最後の1人は叔父のことが好きだった。

最後の1人にとっては、まさしく悪夢のごとき日々だったでしょう。

父も叔父も、幼馴染の気を引くために動き、彼女は最後の1人と親友だった。いつもそばにいた。

近くにいて、しかし決して手に入らない。壁で隔たれてるわけでもない。触れることもできる。にも関わらず手に入れることだけはできない。そんな環境。そこに置かれた最後の1人は、遂に狂気に落ちた。」


「・・・・・」


近くにいて、触れて、けど決して手に入らない愛しいもの。

そしてそれは別のものを、唯一無二を必死に手に入れようとしている。

そしてその候補は自らの親友。

それは、打開できる可能性があっても無くても、苦しい。


「最後の1人はいくつかの罠を仕掛けました。ささやかで、しかし嵌ればどこまでも落ちてしまう。そんな罠を。」


「そしてそれに嵌ってしまった・・・?」


悲しみとも憐れみとも取れない表情で長は頷く。


「その通りです。彼らの愛情は偏り、憎悪が生まれ、そのまま心も体も育っていった。

最終的にヴァンパイア達の長になった父は、彼女を手に入れ、叔父を追放した。叔父の帰還を恐れた父は使い魔を忍ばせ、様子を探らせました。

問題だったのは最後の1人です。最後の1人は叔父の追放を後から知った。そして彼女は彼女と父を手にかけようとし、失敗、叔父と同じく追放となりました。もっとも最後の1人の追放は内情故に伏せられておりますが。

ここからさきに語る話は最後の1人の攻撃による後遺症で亡くなった私の両親の死後使い魔の権限を継いだ私が見た、正真正銘の事実です。」


一拍おいて、僅かに汗を滲ませながら長は語った。


「叔父と最後の1人は合流しましたが、最後の1人は追放に納得しておらず、傷心の叔父を手篭めにし、結ばれた後、大陸の支配に乗り出しました。自分は指示を出し、叔父が暴れ、帰ってきた叔父を最後の1人が癒す。そんな負の循環、叔父は最後は勇者を名乗る男に殺されました。最後の1人は叔父の遺体の前で自殺、これが真相です」


「・・・・ありがとう、ございます」


僅かな違いこそあるものの、殆ど俺たちの歩んでる道に近いのではないのだろうか?

決して手に入らないもの《俺》を求める最後の1ソフィ、彼女を誘い、落とした憎悪ボク

まさしく悲劇へ至る材料が揃いつつあると言っていい。


いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。


「それで、その時の彼らの住居、所謂魔王城は何処だったんですか?」


「・・・今は技術国と呼ばれている国の西方の荒野にポツリと建っています。荒野の周りには水辺と山があり、荒野の中心に小さな城が立っています。今は荒野かどうかすらわかりませんが、昔は度々戦場になっていたので少なくとも他の土地より荒れているはず」


「わかりました。ありがとうございます」


大昔の戦いの跡地か。

時系列で考えれば数十年前までやってた大戦より前のことだからひょっとしたら見分けがつかないかもしれない。

聞き込みをする時もその辺りの情報が混ざらない様にしなければならないな。


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