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黒銀の魔眼剣士  作者: 神名一葉
第3章:強さを求めて
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『少女と悪漢』

sideレイア


食事を終えた俺とアリシアとアヴァールはエンヴィとベルゼがいるらしい部屋の前で2人が出てくるのを座って待っていた。


「2人は今このヴァンパイアの街の長と話し合って経緯を説明してるわ。

ベルゼはエンヴィと恋仲だから、そっちの説明もしたいらしくてエンヴィに引きずられて行ったから私がレイアとアヴァールのそばにいたのよ。

大体20分くらい経ってるから、もう終わってもおかしくないはずよ」


「なるほどね、じゃあ俺らは2人待ちか」


「・・・・すぴゅぅ」


「おいアヴァール、寝るな。そろそろ終わるかもしれないらしいぞ」


「ん、もぅ、すこしぃ・・・・がくっ」


わざとらしく寝言を言って俺の膝に倒れこむ。所謂膝枕というやつだ。


「なっ、う、羨ま・・・!」


「どうしたアリシア?急にビクってして」


声は聞こえなかったし見てもなかったが、動いたことくらいはわかる。

動揺したような動きだ。


「べっ、別に、なんでもないけど」


「・・・そうか」


さっき撫でてもらったし、アヴァールの頭も撫でてやるか。


アヴァールの髪は背中まであるアリシアより長い。前髪なんてピンで止めないと目が見えないくらいだ。

だから撫でるのも丁寧にしないと崩れてしまう。


指先でそっと顔にかかってた前髪を首の方へ持っていき、そのまま首筋を撫でながら髪を整えていく。

それが終わったら後ろ髪を櫛でとくように指で整える。


「・・・本当にサラサラだな、アヴァールの髪」


「ーっ・・・そう、ね。女の私から見ても長くて綺麗だもの。流石に前髪はもう少し切った方がいいと思うけどね」


「無理だろう。切ろうとすると凄い嫌そうな顔するからな。前髪以外は気にしないのに、前髪だけ嫌がるんだから、まったく。普段は嫌がること大好きなくせに」


普段アヴァールの性癖の所為で感じるモヤっとした感情を発散するためにアヴァールの頰を軽く引っ張る。

アヴァールの肌はこの寒さの中でもいつも通りモチっとしてて、引っ張ると気持ちよく伸びる。


「うぅぅ・・・ゃあ」


小さな手が俺の手を払おうと弱く振るわれるが、それを頰を引っ張るのとは反対の手で押さえ込んで背中の方へ持っていく。


「普段からこうなら良いのにな」


ふと、なんとなく寝てるアヴァールの耳元に口を寄せてそっと囁く。


「可愛いぞアヴァール、本当に可愛い」


「ーっ!・・・・・レイア、アヴァールばかりずるいわ。私にも構ってくれないと拗ねちゃうわよ?」


「ぬおっ」


アヴァールの耳元に顔を寄せるために下げてた俺の頭をアリシアがそっと自分の方へ抱き寄せる。


「悪かったって。お前に拗ねられるのは困る。愛してるぞアリシア」


「・・・私も、愛してるわよレイア。誰よりも、何よりも」


と、ここで


ーガチャッ


「・・・何をしているのだ?3人揃って」


「おーおーおー、卑猥ですのぅ【色欲ルクセリア】くん!」


「「げ(あ)・・・・エンヴィ、ベルゼ」」


「むみゅ・・・・ぅぁ」


とりあえずアリシアから頭を離してベルゼの顔面に一発食らわせた。









「それで、話し合いはどうだったんだ?」


「ああ、問題なく済んださ。ここの長は私の育て親でな、所々疑ってたがなんとか説得したさ」


「まあ問題ってのは殆ど俺の事なんだけどな!」


そりゃそうか、娘が親に男を紹介するわけだし一般的には問題があったりするのが普通だよな。


・・・なんでうちの場合はあんなに積極的だったんだろうな。いや息子としては助かるけど。


「ベルゼが色々苦労した話はさて置き、具体的にはどうなったんだ?」


より具体的にはこの居住区における俺たちの立場は?


「ああ、狐の仕業と思われる異変はここ最近起こってないらしい。

そこで私達はしばらくここに滞在し、トラブルがあった場合それに対処、狐が現れた場合はここの狩人が全員味方についてくれる。なにぶん小さな町だからな、冒険者や騎士などもいなくて出せる戦力は狩人が限界だ。

だが、ヴァンパイアは比較的平均ステータスが高いから、期待を裏切ることはないと思うぞ!」


「そうか、ならばありがたい。俺たちはしばらくこの街でゆっくりしていくとしよう」


俺たちにできることは・・・修行と、作戦会議と、ナイトの連絡待ちか。


待てよ?ナイトの飛行速度とナイトの口振りからして氷の大陸の古代龍は氷の大陸の中でも奥の方にいるんじゃないか?時が来たら呼べっていうくらいだしな。


「エンヴィ、氷の大陸にいる、南の古代龍ってのが何処にいるか知ってるか?」


「南の古代龍か・・・ナイトが会いにいくと言ってた龍だな?

たしかこの街を南に行ったところに氷の龍が住んでいると聞かされた覚えがあるな。祠が近くにあって、毎年そこにお供え物をするのだが、龍はそこに姿を現して長と2、3言葉を交わすらしい。

つまり実在はするし、祠も決して行けない場所ではないのだろう」


「だが肝心の古代龍の居場所は分からず、か・・・・」


「すまないな」


「いや・・・」


やっぱナイトからの連絡を待つしかないのか・・・・聞いてる限りじゃ別に物凄く遠くにいるってわけじゃなさそうなんだが、この環境ではたどり着けるかわからないからなぁ。


「とりあえず今日はもう休もうぜ?俺の腹時計的にもう夜だろ?」


「あんまり信用できねぇ時計だな?いつも空腹の【悪食グラ】くん?」


「レ、レイアてめぇ・・・!!」


さっきの仕返しだこの野郎。


なお、時間的には本当に夜だったらしくその日は休むことになったのだった。










sideナイト


レイアと別れた後飛び続けること数時間、私は南の古代龍の住処である洞窟の側までやってきた。


南の古代龍殿は東西南北の古代龍の中でも最古参、全身が氷で構成されている巨大な龍である。その身体は私の約2倍、つまり20m以上である。

歳を重ねていく毎に力が増していく古代龍の特性上、全古代龍中最強の龍の下へ向かっているという訳だ。


『そろそろのはずだが・・・・なんだ、この妙な魔力は?人間か動物でも拾われたのか?古代龍に子は出来ぬし、番ということもないはず・・・』


古代龍はその精神が悠久の時に耐えられなくなった時に一度死に、その心臓から新たな古代龍が生まれ落ちる。

記憶の引き継ぎなどはない為、予め話を通しておいた他の古代龍が親代わりにやってきて一定の年齢まで育てるという仕組みをしている。

かくいう私も南の古代龍殿に育てられた龍である。


適当な動物と戯れているものと勝手に判断した直後、その小さな魔力がすざましい規模に膨れ上がった。


『ーっ!?こ、この魔力、狐か!?それに氷の古代龍殿の魔力も・・・!これは、戦っておられるのか!』


ならば加勢せねばならぬ!


飛行速度を上げ、ブレスの準備をして洞窟へ飛び込む。


戦闘は入り口から僅か十数mのところで行われていた。幸い入り口側に奴が立っていた為氷の古代龍殿に攻撃が当たる心配はない。


「貴様!!氷の古代龍殿の洞窟で何をやっている!!?」


ブレスを吐きながら【人化】し、狐に襲いかかる。


奴を相手に体が大きい龍の姿は不利だ。攻撃も防御もままならぬ。

事実背後からの不意打ちのブレスは見たこともない魔法陣によって防がれ、拘束しようと伸ばした腕も簡単に止められている。


「おや、おや、おや?レイアのとこの古代龍じゃないか。悪いけれど、ボク今は君に興味ないんだよね。今回ボクは荷物を取りに来ただけなんだから、さ」


「荷物、だと・・・・!?」


なにかを持っているのかと氷の古代龍殿に視線を向ける。


『・・・そこな奇妙な魔導師は、儂の心臓が欲しいらしい。無論、他の財なら兎も角心臓だけはくれてやるわけにはいかん。丁度交戦するところじゃったわい。助かるぞ、東の』


それだけ言うと南の古代龍殿は【人化】によってその姿を、人間で言うと70歳ほどの老人に姿を変え、周囲に大量の魔法陣を構築する。


「さて小童、儂の心臓が欲しくば魔力だけでなく魔法の技量も一丁前だと儂と東のに見せつけるが良い!」


「狐、レイアには悪いがここで討たせてもらうぞ!!」


古代龍二体に挟み撃ちにされてなお、狐の顔から薄笑いが剥がれることは無かった。


「さて、と。予想よりいい感じに役者が揃ったようだし、本格的に舞台を始めようか?差し当たって最初の題目タイトルは・・・『少女《神》と悪漢《龍》』、かな?」


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