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カナデノイロ

時系列はあるので

順番に読んでいただくのを

お勧めしておりますが、

基本的には1話で区切りのある

恋愛小説です。


理緒:

主人公。

京都在住のだめ女。

元、だめ女と信じたい今日この頃。


奏:

関東在住の残念なイケメンことかなで。

理緒の彼。

まだ残念さは見えないけれど…?

理緒の1個下。


おきちゃん、沖:

理緒の姉の元彼、

中学時代の先輩、

奏の同期。

院卒のため理緒とは2つ、

奏とは3つ歳が離れている。

カナデノイロ


奏でる音色が世界を彩る。

私の世界は、その音で鮮やかさを増す。



土曜、朝。


「んぅ…」

奏が眠そうに鳴いて、布団を引き上げた。

その腕の中で丸くなっていた私は、すっぽりと布団にくるまれる。

どきどきしてあまり寝てない気はするが、充電された気力ですこぶる体調は良かった。

奏をぎゅーっとして、私はもそもそと布団を脱する。

すると、奏の声で起きたのか、ぼーっとしているおきちゃんと目が合った。

「おはー」

「おー」

「シャワーする」

「あいよ」


一応女なので、身だしなみその他をすっかり済ませて戻る。

次はおきちゃんが出て行った。

時間を見ると、9時をまわったところ。

私はイモムシみたいな布団に寄り添うと、その背中?を撫でた。

中身はもちろん奏だ。

しばらくそうしていると、布団の下からすーっと腕が延びてきて、私に巻き付いた。

「んー…」

奏が私の太ももにうつ伏せになる。

うわわ…。

膝枕…、膝枕だー!

「………やわらかい」

「ぶっ…ちょっと!奏!それ褒め言葉じゃないからね!?」

「太ももは!やわらかくないとだめなんですー!」

「わ、ひゃわ!?」

弾かれたように顔を上げるもんだから、思わず仰け反る。

そのまま倒れこむと、再び太ももに突っ伏した奏がふるふると震えた。

わ、笑ってる!!

「こ、こらあ!」

「や、本当に…朝から理緒は可愛いなあ…!」

「ば、馬鹿なこと言わないっ、可愛い要素なんてどこにもっ…」

「……お前ら、朝から人んちでいちゃつきやがって」

「うわあ!」

いつの間に戻ってきたのか、おきちゃんが笑う。

奏は何事も無かった様に起き上がると、シャワー、と言って出て行った。

ちなみに、おきちゃんの前では奏はちゃんとゆるい。

気を許しているようだ。

「…うん、いい感じだなぁお前ら」

「あはは…なんでこんな照れるのか私にはわからない」

「いーんじゃないか?俺も恋愛したくなるわ」

「すればいーじゃん」

「独り身の楽さも捨てがたいんだよな」

「ええー、親父くさいなぁー」

「ぴちぴちですが何か?」

「はぁー?」

しみじみ思う。

姉の元彼のこの人とは、縁あってか姉という繋がりが無くなっても仲良しだった。

いい人。

そう、いい人なんだよなぁー。

「何だ?」

「あ、ううん。そういえば飲み会だよね?」

「おー。遠いから16時には出るぞ。お前らは今日どうすんだ?」

「はっきり言うと予定なんてない」

「ん?そうなのか?」

「うん、あるとすれば、ゲームかみなとみらいか〜」

「ほー」

まぁ鍵は渡してあるから大丈夫だな。

おきちゃんはそう言うと、とりあえず遊ぶか!とゲームの用意を始めた。


土曜日、昼。


人生ゲームを3人でやっていて、気付く。

奏…なんか運良くない…?

ミニゲームとかも強すぎだ。

「本当、お前強いよな」

おきちゃんが笑う。

「まぁね、ゲームでも妥協などしない」

奏はさらっと受け流す。

すると、おきちゃんがとんでもないことを言った。

「その妥協しないのが理由で、自分のベッドで女泣かしたもんな」

「…沖?その言い方は語弊がある」

「………」

「……理緒。大丈夫だからね?そこは心配するとこじゃない」

「えっ?…あ、うん?」

たっぷりフリーズしていたようだ。

慌てて意識を引き戻す。

おきちゃんは楽しそうにけらけらと笑っている。

奏はため息交じりに説明を始めた。

「俺んちにね、同期が3〜4人で来たことがあるんだよねー。そん時にゲームしたわけだけど」

「ははっ、奏がさ、<やめて!意地悪しないでー!>って言ってた女子、完膚無きまでに叩き潰したんだよ。そしたらそいつ、奏のベッドで泣き出して」

「……いや、勝負じゃん。俺は、手抜きなどしない」

ふん、と奏はそっぽを向いてしまう。

私は今まさに叩き潰されそうな自分の駒を見た。

「や、負けないよ?」

「うん?」

「ゲームだからって負ける気はないんだから!くやしーじゃない!」

「ぶはっ、お前ら、馬鹿だなあ!」

堪えきれないとばかりに、おきちゃんが笑い出す。

「何でよ!負けたくないもんー!」

「…理緒はいいこだなぁ」

「なにゆえ!?」

奏のぼやきに突っ込んで、私はまた駒に目を移す。

何か、大逆転できないかなぁ。


…まぁ、そんな奇跡などそうそう起こらないわけだけど。


私の駒は完膚無きまでに叩き潰され、おきちゃんはさらにその下の順位。

徹底的にやられていた。

「ふあぁ、奏は強いね!」

言うと、奏はいつも通りに、

「まぁね」と言った。

ゴールした奏に遅れること3分くらいで、私もゴールした。

「うーん、途中から、奏のLUCKが跳ね上がったよね」

むぐー、とぼやく。

おきちゃんもぐたーっとソファに寝そべった。

「や、本当に奏はこういうの強いわ」

「うんうん」

…気にならないと言えば嘘になる。

私は奏の部屋に上がったことすらないもの。

だから、気にはなるのだ。

けれど、それを悟られるほど、子供ではない。

「次は負けないよ?」

「受けてたとう」

そんなやり取りをして、私は奏に笑う。

私は大丈夫だよって伝えたかった。



土曜、夕方〜夜。


「んじゃ行くわ」

16時前に、おきちゃんはそう言って出て行った。

私と奏は出掛けずに、おきちゃんと3人でゲームして過ごしていたから、この後が2人きりの時間になることに気付いて少しそわそわ。

そんな私の様子を察したのか、奏がソファで両手を広げた。

「おいでー、理緒」

「う…」

「どうしたの?おいで?」

優しくてとろけるようで、少し意地悪な笑み。

私が逆らえないのを知っているその表情に、胸がきゅーっとなる。

そろそろと近付くと、奏の長くてすらっとした腕で引き寄せられた。

ソファの奏にまたがるような格好でくっついた状態だ。

身体をめぐる血が、一気に熱を帯びる。

「理緒」

「…う、はい…」

優しくキスされる。

でも、今日はそれだけじゃなかった。

そのまま何度も何度も、唇を重ねる。

フレンチバニラの甘い香り…。

奏のキスは優しいのに力強くて、気持ちよすぎて。

思わず身体を離そうとしたら逆に抱き寄せられる。

「んっ…は」

吐息がこぼれると、奏も熱い息をついた。

「可愛いよ…理緒」

「う、うーー」

ぎゅーっと心臓が締め付けられる。

「私っ…私の方が、奏好きだからっ…悔しい」

「…うん?」

奏は目をぱちぱちすると、微笑んだ。

「大丈夫だよ?」

「もっともっと好きになってもらう!…めろめろにしてやるんだからぁ」

「……」

「………あっ、あれ?…めろめろって…言わない?使わない??」

「や、間違ってない…。やばい、本気で可愛いと思った…」

「…え、え?」

「いや、いつも可愛いと思ってるけど、今のは不意打ちで…」

奏は右手で口元を覆い、目を逸らす。

あ、あれ?

奏、もしかして…照れてる…?

「て、照れてますか」

思わず言うと奏は、口元の右手を解いて私の顎を少し持ち上げる。

う、う、うわあぁ!?

正面からばっちり見つめられ、視線がかち合う。

その顔は不敵な笑み。

や、やられた!と思った。

「照れるとかわいいよ、俺」

「っ…!」

またキスが落とされる。

「でも…可愛いなぁって思った。すごいね、理緒は」

何これ少女漫画ですか。

それを最後に、私の思考は奏のキスで溶けてしまった。


惜しむらくべきは、ここがおきちゃんの家で。

そんなとこで、まぁ、そう、その先へ踏み込むほど、私達は理性が無いわけでもなく。

そもそも、大事で大好きで、だから…

そういうのは、また別の話なのである。


その夜はおきちゃんを迎えに行き、3人で夜景を見に行った。

奇しくも、空は晴れ渡り。

愛車のビートルちゃんのサンルーフから、満天の星を拝むことができたのだった。


奏でる音色が世界を彩る。

私の世界は、その音で鮮やかさを増す。


私の世界はこうして、鮮やかに彩られていくのであった。


感想などいただけたら嬉しいです。

歌って喜びます。

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