カナデタイオト
時系列はあったり無かったりなので、
順番にお読みすることをお勧めしますが
基本的に1話読切の恋愛譚です。
理緒:
京都から関東へ帰ってきて、
就職もしただめ女。
元、だめ女と言い張りたい今日この頃。
仕事では女の子扱いはされない。
奏:
かなで。
残念なイケメン。
理緒の彼氏で1個下。
残念?な理由は2つほど見えてきた。
仕事で忙しく、
あまり会えない日が続くこともある。
おきちゃん、沖:
理緒の姉の元彼、
中学時代の先輩、
奏の同期。
院卒のため理緒とは2つ、
奏とは3つ歳が離れている。
ヒラ、平原君:
奏、沖の同期。
気を使うが空気が読めない。
優しいがズレていることもある。
人見知りらしいが理緒が人懐こいので、
全く感じたことは無い。
彼女無し。
カナデタイオト
私の奏でる音。
綺麗に聴こえてる?
私の奏でたい音。
貴方がいる幸せ。
リオ
奏の同期のおきちゃんと平原君…通称ヒラ君…と、4人で遊びに行った時のこと。
ちなみにすごーい雨だった。
ヒラ君は何だかぽわっとした雰囲気で、気を使ってるんだけど、何て言うか、空気を読めない感じの人。
奏の運転するビートルちゃんで遊びに行き、お昼に美味しくてボリューミーな海鮮丼を満喫。
わいわいしながら帰るその時、おきちゃんが奏と運転を変わったんだけど。
私と奏は後部座席に移動するじゃない?
けど、運転席の後ろに奏が座っちゃって、そっちの方が狭かったの。
だから、私と入れ替わってもらうことにした。
奏にぎりぎりまで身体を引いてもらって、その前を私がほぼ跨ぐような感じ。
「はいはーい、ごめんね奏、通るよー」
「おひめ早くしなさい」
「う、うん…ひめちがう…よいしょ」
ごそごそと体勢を入れ替えていたら。
「ははっ、なーんか後ろでごそごそしてるんですけどー?」
「ええっ、その言い方どうなのよー」
おきちゃんが笑うので、ふくれっ面で応える。
奏は口元を少し綻ばせただけ。
「いちゃいちゃしちゃうわけだね」
ヒラ君も一緒に笑う。
「べ、別にいちゃいちゃは…あ、奏、傘こっちに頂戴?」
「ん、いいよ、なんとかなる」
「だめだめ、濡れちゃう」
そこにヒラ君がくいついた。
前を向いたまま、
「だめーぬれちゃうー…理緒ちゃんぬれちゃってるのね」
とのたまわったのだ。
「…お前、一線を超えたらあかんて」
珍しくおきちゃんが突っ込み、続けた。
「一線を超えるとセクハラにしかならないぞ、アウト」
「うあー、ごめん理緒ちゃん。確かに言ってから、はずしたと思ったんだけど…ほら、理緒ちゃんならいいかなって」
「はははっ、理緒、お前女扱いされてないぞ?」
「沖!違うってー!ほら、なんかさ、もう俺らの中に理緒ちゃんいて当たり前じゃん!だからさ…何ていうか、気を使わないでいいんだよね!だから、ええと」
「あはは。まぁ、まぁ。私と打ち解けてくれてるって、前向きに捉えちゃうよ?私も嬉しいし。ただ…」
だんまりな奏をちらっと見れば、目が合った。
奏…こういうの苦手ではないと思うけど…まとう雰囲気がこわい。
私に対してのセクハラ紛いのセリフだったから…かな?
「…ふっ…まぁ、品は無かったよね」
あ、笑ってくれた。
安心した時、いきなり頭を撫でられる。
「っ?!わ、わあっ」
わしゃわしゃわしゃーー!
「こういうのがいちゃいちゃ?」
「ちょ、かなっ…奏!」
髪がーー!
ヒラ君はちらりとこちらを見ると、笑って言った。
「あー、リア充爆発しろーぉ」
「はははっ」
おきちゃんの笑い声が重なる。
奏はヒラ君が前を向くと、そっと頬を撫でて、微笑んでから手を離した。
っ…!
いいこだね。
小さな囁き。
私は胸のあたりがぎゅーっとして、俯いた。
そっと手を伸ばし、奏の指に触れると、奏が握り返してくれる。
うわぁ…幸せ。
カナデ
同期の沖、ヒラを連れて、理緒と4人で出掛けた。
めちゃめちゃな雨がビートルを横殴りに叩いている。
そんな中でも助手席の理緒は俺と目が合うと微笑んで、後ろの2人とは和やかに会話する。
場はゆるいけど退屈ではない、アットホームな雰囲気だった。
うむ、さすが俺のお姫。
昼を食べ、沖と運転を代わった。
理緒を助手席の後ろに誘導したけど、すぐさま俺の席が狭いことを察して入れ替わると言う。
運転も始まるし、それは危ない。
「はいはーい、ごめんね奏、通るよー」
「おひめ早くしなさい」
「う、うん…ひめちがう…よいしょ」
理緒はちょっと恥ずかしそうな顔で、俺の前を跨ぐ。
「ははっ、なーんか後ろでごそごそしてるんですけどー?」
「ええっ、その言い方どうなのよー」
ぷーと膨れる理緒かわいい。
かわいいは正義である。
思わず口元を少しゆるめてしまった。
「いちゃいちゃしちゃうわけだね」
ヒラが一緒に笑う。
「べ、別にいちゃいちゃは…あ、奏、傘こっちに頂戴?」
「ん、いいよ、なんとかなる」
足元にある傘は、雨でびしょ濡れ。
「だめだめ、濡れちゃう」
そこにヒラがくいついた。
「だめーぬれちゃうー…理緒ちゃんぬれちゃってるのね」
……ヒラ。
お前、この状況でどうしてその言葉が出るんだ!!
だから彼女できな…いやいや。
「…お前、一線を超えたらあかんて」
突っ込むのは沖。
珍しく沖と同意見。
「一線を超えるとセクハラにしかならないぞ、アウト」
うむ。
理緒にセクハラはやめてもらわねば。
理緒のことだから、きっと笑顔で受け流してしまう。
「うあー、ごめん理緒ちゃん。確かに言ってから、はずしたと思ったんだけど…ほら、理緒ちゃんならいいかなって」
「はははっ、理緒、お前女扱いされてないぞ?」
「沖!違うってー!ほら、なんかさ、もう俺らの中に理緒ちゃんいて当たり前じゃん!だからさ…何ていうか、気を使わないでいいんだよね!だから、ええと」
「あはは。まぁ、まぁ。私と打ち解けてくれてるって、前向きに捉えちゃうよ?私も嬉しいし。ただ…」
…ほら。
理緒はこうやって、笑顔を作る。
でも、俺のことを気にして向けられる、困った視線が……。
「…ふっ…まぁ、品は無かったよね」
また、そそるのである。
理緒はほわっと笑顔になった。
…まぁ、いちゃいちゃがご所望なら致し方ない。
手を伸ばす。
「っ?!わ、わあっ」
理緒の柔らかい髪を存分に堪能してやると、理緒はなされるがまま。
「こういうのがいちゃいちゃ?」
「ちょ、かなっ…奏!」
ヒラはちらりとこちらを見ると、笑う。
「あー、リア充爆発しろーぉ」
「はははっ」
笑い声が重なる。
ヒラが前を向いたのを確認して、俺は手をすべらせ、理緒の頬を撫でた。
理緒が目を見開く。
いいこだね。
ささやけば、理緒は照れて俯いしまった。
かわいい。
やがて、そろそろと手が伸びてきて、俺の指をそっと撫でた。
その指を握ってあげれば、理緒が幸せそうに微笑む。
こんな生活も悪くない。
ただ、俺は仕事で疲れると、どうも周りが見えないし考えもまとまらないらしい。
だから、理緒を傷付けてしまうのだけど…それはまた別の話。
俺の奏でる音。
穏やかで優しい音がいい。
理緒を傷付ける痛い音が…
どうか彼女に聞こえませんよう。
一周年は来週です。
なので、来週頃の更新で最後…
と思います。
お付き合いありがとうございます。




