リオプリンセス
理緒:
京都から関東へ帰ってきて、
就職もしただめ女。
元、だめ女と言い張りたい今日この頃。
脱してきたのではないかと、
密かに思っている。
仕事では女の子扱いはされない。
奏:
かなで。
残念なイケメン。
理緒の彼氏で1個下。
残念?な理由は2つほど見えてきた。
仕事で忙しく、
あまり会えない日が続くこともある。
リオプリンセス
お姫様。
1度は憧れたろうか?
…私はどこか達観していて、
小さな頃から
自分はお姫様にはなれないと
そう思ってた。
「可愛い」
「……むー」
「さすが俺のおひめ」
「………むうー」
前髪を引っ張りながら口を尖らせていると、奏は私の頭をよしよしと撫でた。
「これひどいよー、ううー」
「可愛いよ、だいじょぶだよ」
初めての場所で髪を切ったら、ぱっつんにされてしまったのである。
眉毛が隠れるくらいでーとお願いしたのに、眉毛全見えのぱっつんさ。
危険な生物の域だ。
しかも、朝礼の時に、前に立った上司がぶはぁっと噴き出して笑う始末。
「ううー」
「……くよくよしなーいっ!ほら、理緒こっち見なさい」
「……むう」
言われるままに顔を上げると、奏のキスがおとされた。
「あ、うう…」
「うむ、その鳴き声はよろしい」
「むー、むーー!」
「ふふっ、可愛いなあ!」
よしよしされて、私はうつむいた。
何よ何よー、きゅんきゅんされっぱなしの私の身にもなってよー!
「そうだ、理緒?」
「うん?」
「一周年は箱根に行こう」
「……!箱根…箱根はー温泉!」
「部屋に露天あるとこにしよっか」
「ふえ……!?」
びっくりして顔をあげた。
えっ?部屋?
「あの、それ…?」
「いいとこ泊まろう?」
「…!」
うそ、うそ!
どうしよう。
記念日にお泊りとか、したことない。
初めてなんだけど…!
あ、でも…。
「わっ、私っ、そんなお金無い…」
不安に思って告げると、奏はぴしゃりと即答。
「お姫は財布の心配などせずともよい」
「で、でもっ…」
「大丈夫、俺がお財布だよ」
奏はそう言うと、ぬるーい笑みをこぼした。
「や、やめなさい!お財布って言い方やですー!」
思わず否定する。
その言い方はホントに良くない。
「うむ、理緒はいいこかわいいこ」
「えっ、ええー!?」
何故…。
奏はにっこりすると、そっと私を抱き締めた。
「お風呂でいろいろされちゃう理緒、かわいい」
「…!……っ!」
されてませんー!
されてませんからー!!
「熱くなった〜」
「それはっ…奏が!」
「何されちゃうのかな?ねぇ理緒?」
「にゃにもされな…ひゃうぅ!」
耳に息が吹きかけられて、変な声が出た。
身体中の血が沸騰しそう。
奏は楽しそうだ。
「もおー!楽しそうだね奏っ」
「だって楽しいもん」
うう、そんな風に言われたら、それはそれで照れるっていうか…。
私はそわそわしながら、言葉を紡ぐ。
「あの、ね」
「うん」
「記念日に、何処か泊まってね、お祝いしたりするの初めてなんだよ」
今まで、1人で2人分を賄っていた私は、旅行出来るお金の余裕なんて無くて。
だから、泊りに行ったことなんて無かったし。
どきどきする。
1年経つのに、私の気持ちは変わらないどころか熱くなって。
奏は優しい顔で私を見ていたけど、キラッキラの笑顔になった。
「うん、いっぱいお姫様にしてあげよう」
「ぅえっ!?ちょっと!な、何言ってるのー!」
「いいんだよ、理緒は俺のお姫様でいたら。…いつも頑張ってるから、ご褒美だよ」
「……うあ…」
いつもご褒美ばっかりです…。
でも、と思う。
これは私と奏、2人の記念日だ。
…私も何かプレゼントしたい。
私は奏を見つめて、精一杯の気持ちを込めた。
「奏…いつもありがとう」
奏は笑顔で受け止めて、代わりにキスをひとつくれた。
そうと決まれば、プレゼントを考えねばならない。
出来れば奏の身につけるものがいいな。
ネクタイ、シャツ…いろいろ考えてみたけど、ふと思い出す。
奏は、シャツの袖にカフスリンクスを付けている。
それとネクタイピン…。
今はクールビズでネクタイはしていないから、まずはカフスリンクスをプレゼントして、対になるタイピンはクリスマスに…なんて。
どうだろう?
スマホを取り出してさらさらと調べてみると…あるある。
ブランド物から変わった物までよりどりみどりだ!
私は迷わず某チェック柄で有名なブランドを調べた。
奏のシャツやパンツ、コートに、このブランドがあるのだ。
合わせやすいシンプルなもので、高級感があって…。
デザインを探せば、これというものが見つかった。
お値段4万弱。
それなりに働いたので、やり繰りすればなんとかなる金額だ。
けれど、画像だけで購入する気にはなれなかった。
そこで、お店の場所を調べ、銀座まで行くことにする。
奏のためだったら、足取りも軽いしね。
「何かお探しですか?」
「あっ、は、はい…」
高級感が溢れすぎてそわそわする私。
店員さんは優しいが、手には白手袋。
うわぁ…こりゃもう場違い感。
奏だったら溶け込みそうなもんだけどなぁと心の中で悲鳴をあげる。
それでも、目的の物はすぐに見つかって、私は見せてもらうことにした。
「あの、これを…」
「カフスリンクスですね」
うん…これなら奏に似合うはず。
喜んでくれるかな、って幸せに思う。
「プレゼントですか?」
「あっ、はい…彼に」
「素敵なプレゼントですね、普段から付けてらっしゃいます?」
「はい。私くらいの歳では珍しいとは思うんですけど」
「そうですね、若い方にはあまり馴染みがないかもしれません…付けてらっしゃるなら、お洒落な方ですね」
「…そうですね、すごくキラキラしてます」
「素敵ですねー!何かの記念日です?」
「えっ?…あ、はい、付き合って一周年が…」
「うわぁ、いいですね!…何だかお幸せそうなお顔されていたのでつい…失礼しました」
「そっ、そうですか?」
「ええ、とても」
そ、そうなんだ。
私、そんな顔してるんだ…。
そわそわしてしまうけど、少しでも品があるようにと、微笑んで見せた。
「ありがとうございます」
店員さんはそれ以上ににっこりすると、
「喜んでもらいたいですね」
と、素敵な言葉をくれた。
…私は購入を決め、綺麗に包んでもらった。
お姫様。
1度は憧れたろうか?
…私はどこか達観していて、
小さな頃から
自分はお姫様にはなれないと
そう思ってた。
…けれど、私をお姫様にしてくれる、
そんな人がいる。
一周年まで、あと少し。
一周年へのカウントダウン。
そこが一区切りと考えています。
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