契約書が怖い
俺は帰宅する最中何者かに、襲われる展開を願望していた。自分の能力覚醒を知った瞬間に、その能力を素敵に披露するイベント発生は、俺が読むライトノベルで王道だったからだ。
能力に目覚めても世界観が変わる事は、ないのだと期待を裏切られたのと、自分の生活は今までと、同じなのだという安堵感が鬩ぎ合っている。
もしかすると先程の事は夢落ちかもしれないと思うくらいに、何事もなく帰宅出来た。
「ただいま」
そう言って玄関を開けると、リビングに料理が置かれているのに匂いで気付く。
「遼ちゃん帰って来るの早いじゃんか。一生帰って来ないんじゃないの?」
「帰らないといけない事があったんだよ。実は宇宙人にキャトラレてたから、急いで逃げて来たんだよ」
そんな半分嘘を付き妹の反応を見ようとした。
「あっそ。今日はそういう設定で一人遊びしてたんだ。ま……さっきのアニメ見てから、妹好きを拗らせているよりはマシか」
まだこの家の妹様は機嫌が悪いままなのかと思った。
「ここにある料理は俺の分も作ってくれたのか?」
と恐る恐る聞いた。
「馬鹿じゃないのあんたの分なんか作る訳ないじゃない。てさっきのアニメの綾乃なら言うわね。料理作るの楽しいし変に、冷蔵庫の物使われたくないから、遼ちゃんの分もあるから食べれば?」
といつものテンションより高めに予想外の返答があった。妹の機嫌は良くなっていた。因みに綾乃とは、先程見ていた【俺の妹が可愛すぎてこんなに辛いわけがない】のヒロインで我儘だけど、お兄ちゃんに常にデレデレな女の子の事だ。
二人きりの食卓に着き妹の作った料理を食べながら今日あった事を話す。
「そんな事より私を学校に行かせようとはしないの?」
「別に陽菜が学校行く必要ないだろう……凄い頭いいの分かってるからな」
「そうなんだ。てっきり妹と一緒に登校したいからて、理由で言ってくるかと思ってたし」
「だからあのアニメはネットで話題だったからで、シスコンなんかじゃない」
「ほんとかなー?」
そう言って妹は俺の顔に自分の顔を急接近させて笑う。その時の笑顔はまさに小悪魔的て表現がベストだった。
妹が引き籠りに見えないとここまで思うかもしれない。しかし妹はここ数年ぐらい俺以外の人間とは喋る所。
お兄ちゃん大好きブラコンじゃないが、嫌いでもないはずだと思っている。
「でさちょっと聞きたいんだけど、陽菜が日本侵略するならどうする?」
「遼ちゃんほんと頭大丈夫?」
「まあ今は兄を信じて待っててくれて感じかな。俺の妄想に付き合ってくれよ」
妹から見たら俺は、妄想好きらしいからそう返した。
「そうじゃあ私なら、まずはネット界から徐々にだね」
「なんでそうなる?」
「遼ちゃんがどんなに最強チート設定でも、そういう世界ならライバル登場するてのが、定番でしょ」
「確かにそういう世界なら奴らもいるかもしれない。で何でネットなんだ?」
先程あった宇宙人から聞いた話を思い出しながら妹に更に質問した。
「最近は動画投稿サイトで自分の創った歌とかを、ボーカロイドに歌わせて信者を増やすて手法があるの」
「ボーカロイドてあの緑色のツインテールのやつ?」
「多分それで合ってる。他に黄色の双子とかいるのね。そんなんで信者増やして行くのが、一番手っ取り早いじゃない。でも間違っても未成年の信者に手を出したらオワルヨ」
そう言って妹は俺の肩を叩き、立ち上がり。ご飯の御替りをお茶碗に注ぎに行った。
「アホそんな目的ないし。それより陽菜引き籠りなのに、炭水化物を沢山摂取すると太るぞ。もうすぐ60キロになるんじゃない?」
お茶碗に山盛り状態にしてるのを、見て妹に反撃する。
「太らないもん。そんな60キロとか絶対行かないよ。それに皆それくらい食べてるの。遼ちゃんが小食系男子なだけだしーー」
と顔を真っ赤にして言ってくる。普段はクールな感じにし、ているがちょっとからかったら直ぐムキになるのが、妹の可愛い所だ。もう少し可愛がる事にする。
「皆て陽菜に友達いないじゃんか」
「会ったことはないけど沢山いるし。ネットの世界ではそれなりに有名だよ」
「それて自撮りでエッチな動画とか配信してるとか?」
「そんなに自分の妹が淫乱に見えるんだ遼ちゃんは……」
「ごめん思ってないけど心配だったから」
ちょっとマズイと思い謝った。俺は空気が読めない人間ではない。
「ふーん。まあ別に怒ってないから謝らなくてもいいけど、どうせやるなら土下座してよ」
「俺は不正ばかりする銀行員じゃない」
妹と俺はたいてい一緒にテレビを付けてご飯食べてるから、日曜夜9時からの人気ドラマも一緒に見ていたのでツッコミ反した。
「はいはい、ナイスツッコミだね。じゃもうお腹一杯だから寝るね。片付けと皿洗いよろしくねお兄ちゃん」
妹の台詞を文字にすると、語尾に(笑)が付きそうな感じで、言い残し2階の自分の部屋に行こうとする。
「すぐ寝るて牛になるよー」
「うさっい早くサ・ラ・ア・ラ・イ」
「了解」
妹は全然太ってない。むしろ細見だが、胸も小学生の頃から成長していないので、少しはそっちに栄養が行って欲しいんが、兄としての心境だ。
皿洗いは食器洗い機がないので手洗いになるが、料理を作る手間と比べたら全然楽なので、この役目をいつも引き受けている。
以前妹が小学生の頃卵焼きを、俺が作り御馳走したら殻沢山で食べれないと言われ、それから俺は料理を作らせてもらえない。妹の料理は世界一だ、ただしシスコン補正でだけど。
明日も学校なので、皿洗いとお風呂掃除を終えて、お風呂に30分程かけて自分も寝る事にした。妹はいつも俺が寝てからお風呂に入っているらしい。どうしてそんな遅い時間にと問うと、ラッキースケベで入浴シーンや裸見られたくないから、と以前言われた。
二階に上がり部屋の扉を開けると、ベットに変な膨らみがある。おそらく妹が俺のベットの布団に、包まって驚かそうとしてると思う。お兄ちゃんの匂いがするクンカクンカはないと確信しているが。
俺は布団を掴み思いっきり引っ張った。妹しかありえないと思っていただけに、布団の中身に心臓が止まるかと思う位驚いた。
「遅かったねお兄ちゃん早くハァハァしよ?」
お兄ちゃんなんて言うが、家の妹は胸がこんなに大きいわけがない。そこにいたのは、昼にあった宇宙人だ。恰好は何故かメイド服を着ているが、それでも胸の膨らみが分かる。是非とも妹に分けて、上げて欲しいと思う。
「何しに来てんだよ?」
だが胸の事よりも宇宙人の、突然訪問に声を荒げ問い詰める。
「シー。静かにしないと隣の実妹に気付かれるよ。お兄ちゃんなんで女連れ込んでるの変態死ね。て包丁で突き刺される結果になりますわよ」
「俺と妹の家なんだけど、なんでいるんだ?」
「それよりも、早くこっち来て」
そう言って俺を引っ張り布団に、一緒に包まる形になった。やけに密着してるが、何が目的か分からない。
「近い……離れてくれ」
本当はこのまま密着しているのも悪くないが、一応形だけでも否定的なのを見せる為に言う。妹一筋だけど妹以外の女性に、興味がないと断言は出来ないが。それにこの宇宙人はかなり美人だから正直離れたくない。
「ふーーん貴方の拒絶能力だいたい分かっちゃた。本人の意思で発動するんだね」
「何でそう決めるんだ?とある学園第一位みたいに自動的に発動かもしれないだろ」
「それなら私を拒絶しているはずだわ。貴方はこの今の状況を気に入ってるじゃない」
「お前は人間の心読めるのか?」
「読めるわけないわね。例え私がそんな能力持っていても、心を読まれるのは拒絶してるのよね?」
「あーー騙したな」
軽く自分の失態に嫌気が、したがこいつと話していると、能力の実態が分かって来るから拒絶しない。しかし拒絶出来るわけがない。その理由は、先程より密着し胸がぎゅと当たってるからだ。
「てか貴方さっきから顔赤いけどどうした?」
「…………」
俺は腕に当たっている胸の感触に、かなり動揺して何も返答する事が、出来なかった。思っていたより柔らかくないんだなと、そればかりが頭を巡る。
「こんな脂肪の塊が当たってるだけで、怯むて人間の雄はホント脆弱だわ」
「わ……わざとなりゃやめてくだ……しゃい」
動揺して呂律がヤバい事になってるのに、俺はこの時は気付いていない。しかし流石にこの状況は不味いと思い、宇宙人の肩を手で押し、自分から引き離す。
「きゃーーやめて下さい。ご主人様まだ昼間ですので」
と意味不明な事を言ってきた。
「何言ってんだよ」
「そこは駄目ですご主人様。お許しください」
宇宙人は頭が沸いて来たのかと思った。だがすぐにこの意味不明な台詞が、周囲に与える力を身を持って理解する事になる。
隣の部屋から壁をドンドン叩かれてる音が聞こえてくる。
「遼ちゃん別にエロゲーするなとは言わないけど、せめてイヤホン付けて。流石に気持ち悪いから……あとやるなら窓開けて」
ぐわぁ妹に最悪な勘違いしれてしまった。この宇宙人があざといアニメ声で喋るから。下手に言い訳すると深手を負うので妹に対しては、返答する事は諦めた。
「おい。お前謝罪が必要じゃないか?」
「何を言っているのよ。客観的に見たら私は胸を触られた被害者になるわ」
「さっきはただの脂肪、みたいな事言ってただろ」
「エロい人は言いました。この中には無限大のロマンが詰まっていると」
そう言って両手で胸を掴み強調しながら、ゆっくりと揺らした。男にとっては、魅力的なシーンだが隣に妹がいるので早急に冷静にならないと駄目だ。一生妹に口を聞いて貰えない恐怖に比べたら、目の前にある誘惑に打ち勝った。
「もう脂肪の話はお終い。それより俺の能力詳しく教えてくれないか?」
「いいのよ無理しなくて。なんなら好きに揉んでもね。妹は残念な程貧乳だから魅力的な提案でしょ?」
「ふざけるなこのおっぱい星人が。貧乳は個性なんだよ」
某埼玉在住の女子高生ヲタクみたいにビシッと決め台詞を言えたと思う。
「この星の言語だとおっぱい星人は、おっぱいが好きで好きで堪らない男の人を指すんじゃないの?私が使ってる最近、発売された地球語翻訳機なら激オコぷんぷん丸からつるぺた幼女やへタレ攻めまで、ありとあらゆる意味が網羅されているのよ。それに間違えがあるとか私クレマーになるわ」
と唖然とした表情で此方を見ている。
「その翻訳機が正しいが、さっきからおっぱいおっぱいうるさいし。それに名前知らなかったから、おっぱい星人で呼び方いいかな?」
「ふーん。妹の前でそんな下品な事言えるの?」
「分かったそれは、止める。じゃあ何て呼べばいいんだ」
「蜃気楼か紅蓮辺りがいいわね。でも反逆者側じゃないわよ私」
「いや……無頼」
余りにも強い機体に付いている、名前を言うからつい量産機のを返した。ごめんこのネタはかなり分かり辛いなと思う。
「そんな第四世代は無理よ。第七世代以下は雑魚だわ。そんなマニアックな話より私の事は、胡蝶と呼べばいいわ」
「それは何かのネタか?」
この宇宙人かなり日本のサブカル詳しいから、きっと何かあるに違いないと思った。
「それより貴方能力知りたのじゃない?やっぱりヲタ同士だと盛り上がる定めなのね」
「そうだった。俺が日本侵略するなら力貸すて言ったけど」
「力を貸すのは全然構わないけど、本来地球上の生物との長時間接触は違反行為なのよ。私はこの世界の警察みたいな存在だけれど、例外は当てはまらない。禁止行為になる」
「じゃ何か武器をくれるのか?」
「それこそ無理よ。地球の文明はかなり遅れているの。そんな所の住民に武器を貸すとか、小学生に核兵器の発射ボタン渡すレベルね。その武器の使い方やそれによってどう影響するか分からないでしょう?」
胡蝶と名乗る宇宙人が遠回しか分からないが、力は貸せないと言われてる気がした。とにかく結局俺一人でしないと駄目だと思うと気が重い。
「実は私の権限で接触時間の、制限をなくす事が出来るのよ。契約書みたいなのにサインするだけ。地球人は契約書とサイン大切にするのよね?」
そう言って目の前に、俺が読めない文字で書かれた1枚の紙が差し出された。今の状態が漫画なら、ざわざわと言う擬音語が俺の後ろに描かれているだろう。胡蝶の申し出にあっさりサインするほど俺は馬鹿じゃない。
「これ日本語に訳してくれないか?サインしたら詐欺でしたとかは、流石に不味いから」
「別に三羽烏が鳴くとかじゃないわよ。それに私は取り締まる側だから、心配の必要ないわ。それに貴方を騙そうとしても拒絶の力が発動するもの」
そう言われ納得した。胡蝶のキャトラレから生還した、自分の異能力自信があったから。
「そうかならサインしよう」
そう言って俺は自分の名前を書き、左手の人差し指にインクを付けて押した。
「はいこれで契約成立だわ。まずは明日からは私の任務に同行させるわね」
「同行てなんだ?侵略に取り締まりを見学する意味あるのか……」
「頭悪いわね。警察が教える完全犯罪程為になるものはないわよ。今地球侵略がどのような物かも知っていないとね」
あっさり事が進んでしまった事に、この時は全く違和感を覚えなかった。このサインした契約書の内容を知ることなくのちに後悔する。