56.人でなしの、掃除機。
もうそろそろバラし始めてもいいのかな。
投稿用に書いたバージョン。タンヌに純子が転生するのは同じ。
でも、Siriタンヌと名づけられて、純子の質問に答えるみたいな感じでした。こっちのタンヌは自由自在に茶々入れてますけどね。
シニンは名前のとおり、もっと死神っぽかったです。モイルはこっちのみ。でもシニンとモイルっていい味、出してるんですよ。
さ、最後の力で頑張れ、純子。
「埃よ、埃!」純子は叫んだ。
「埃?」
モイルは辺りを眺めた。
「埃なんかないぞ」
「だからおかしいのよ! 上の部屋にはあったのよ。どうして誰もいないここには塵一つないわけ?」
純子の声にモイルの顔も曇る。
「ということは――」
「つまり、誰かがここにはいるのよ。お掃除大好きな奴がいるはず」
『もしくは埃食べちゃうような怪物とか?』
(そ、そんな怖いこと、言わないでー!)
怯える純子の耳に、なにか引きずるような音が聞こえてきた。それが段々と多くなり、そして近づいてくる。
『いやー! ジュンコ、本当に来たー!』
(馬鹿タンヌ! あんたがあんなこと言うから! 帰ったらお尻叩いてやるから!)
四人は後ずさった。しかし、クリティアは動こうとしない。
「クリティア! 逃げるわよ」
しかしクリティアは首を振る。
「何言ってるのよ。怪物が近づいてきてるのよ!」
「そんなもの、恐れるものか! ここへきてまだ何も手に入れてないんだぞ! ここにあるはずの知識も力も何もだ。手ぶらで帰れるか! 怪物なんぞ、切り刻んでやる!」
クリティアは腰の剣を抜くと身構えた。純子たちも立ち止まって様子を伺う。得体の知れない音はどんどん近づいてきていた。そして音の主がとうとう壁の向こうから現れた。
「な、なんだ。これは!」
クリティアが叫んだ。
純子にはある言葉が脳裏に浮かび上がった。(ロボット……)
金属製の輝く身体を引きずるように動かし、なにかを探すようにうごめいている。が、純子が次に思ったのは、ゾンビ映画だった。不器用な体の動かし方がまるでゾンビだった。
「いやー! ゾンビなんていやー!」
自分で思いついた恐怖に、純子は叫んだ。その声にはじかれたように、クリティアは剣を金属の怪物に繰り出した。しかし、剣は簡単にはじかれる。クリティアの抵抗は意にも介さず、怪物は近寄ってくる。
「クリティア、逃げるわよ!」
「畜生! こんな奴らに負けるもんか!」
だがクリティアの腕は怪物に捕まった。簡単に捻りあげられ、剣を取り落とす。
「クリティア、クリティア!」
「くそっ! 助けてくれ、頼む。助けてくれ!」
しかし、ヘカテミスは首を振る。
「もう遅い! タンヌ、モイル、逃げるぞ」
四人は走り始めた。足元がよろけるシニンをモイルと純子が支えて走る。
「駄目だ!」
前を行くヘカテミスが急に立ち止まった。その前にもあの怪物たちがいた。じわりとこちらへと迫ってくる。
「畜生。はさまれたぞ。どうする?」
純子は周りを見回した。この通路以外に逃げられるようなところはない。
「前にもいるのか」シニンの問いにモイルがそうだと答えた。
「数は多いのか」
「いや、数体だ。何とか突破できるかもしれん」
「なら、私が囮になろう。その間に逃げ切れ」
シニンの言葉にモイルは驚いていた。
「し、シニン。あんた、何を言うんだ――」
「私は目が見えない。お前達のように簡単に逃げるというわけにはいかない。それにここに入ってきた責任は私にある。だから囮になっている隙にお前達は逃げろ」
「そんな、シニン。あんたを置いてくなんてこと――」
純子の声にシニンは笑った。
「必ず逃げ切れ。そして助けに来てくれ。私もお前達の助けを待っているからな。タンヌ。いやジュンコか。楽しかったぞ。こんな高揚感は久しぶりだった」
モイルはシニンを抱きしめた。
「あんた、あんた……」
「モイル。こいつらを最後まで護ってやってくれ。いいな」
「わかったよ。あんた。あたいが来るまで簡単にくたばるんじゃないよ」
シニンが金属の怪物に向かってゆっくりと歩き出す。そしてその身体を怪物が捕まえた。怪物たちがシニンを取り囲む。その隙間を三人は駆け抜けた。
ヘカテミスはその小ささで、モイルはその脚力で。一番遅い純子はあわや金属の腕に捕まりそうになった。引っかけられて服が破れる。破れた服は無視して、胸を揺らしながら必死になって駆ける。
「畜生、ちくしょーっ!」
モイルの絶叫が、通路に響いた。
三人は転げるようにして扉を潜り抜けた。外で待っていたサンチュたちが慌てて駆け寄ってくる。
「閉めて。ヘカちゃん、扉を閉めて!」
ヘカテミスが閉めきった扉をモイルが叩いている。その口からは嗚咽が漏れていた。
「お姉ちゃん。あと二人は? クリティアさんとシニンさんは?」
サンチュの問いに純子は中で何が起きたのか話した。
二人が金属の怪物に捕らえられるところではサンチュが悲鳴を上げ、イアフメスは震え上がっていた。
「ここは大丈夫なのか? そやつらがこの壁を越してきたらどうなる。もっと逃げなくて良いのか?」
女王の問いにはヘカテミスが否定した。
「そんなことは起きません。ここが禁断の地との境。ここを越してきたことは今までありません。もしあったとするならば、もうこの神殿はやつらが支配しておりましょう。ここは大丈夫でございます」
「シニンは、シニンは無事なのか。一体、あいつらは何だ?」
モイルが割り込んできた。ヘカテミスは純子を見つめた。その視線に後押しされるように、純子は話す。
「あれは……たぶんだけど、ううん。たぶん、あってる。あれは……掃除機だと思う」
「ソウジキ? なんだ、それは?」
純子は思い出しながら、丁寧に説明した。空気の力でごみや埃を吸い取って、袋にためていく機械。
「ほら、あの場所。埃がないって言ってたでしょう。埃だけじゃない。金属だって光ってたじゃない。あの怪物が掃除してるんだと思う。怪物じゃなくて掃除をする機械なんだよ」
「しかし、あの二人は埃じゃないぞ。人だぞ。それがどうして――」
「異物ということでは埃も人も同じこと。あの怪物にとってはね。異物を捕まえて排除する。余計なものを取り除いて元通りにする」
純子の説明にモイルは黙った。その後をサンチュが訊いてきた。
「二人はどうなったの? 捕まった後はどうなっちゃうの?」
それこそ誰にもわからない質問だった。想像は純子にもできた。が、それは口にするのもはばかるようなことだった。
『うん。ジュンコ。言わないほうが言い。それは絶対に言わないほうがいいよ』
そして、あたりは沈黙が支配した。
「どうするんだ!」
突然、モイルの怒声が響いた。純子は身体を震わせる。
「二人は向こうにいる。生きてるか死んでるのかもわからない。でも助けに行きたい。あたいは行きたい。ヘカテミス。女官たちを動かすのか。それでも勝てるとは思わない、が他に手段があるのか」
「女官たちには無理。それはモイルにもわかっているはず。あの怪物には対抗できない。でも方法なら、たった一つの方法なら、ある。本人が同意してくれれば、だけど」
そしてヘカテミスは純子を見た。
「タンヌ。あんたのことなんだけど」
「へ?」
純子は間の抜けた返事をした。
前も書いたと思いますけど、基本はサンチュの貴種流離譚。
女性化したのは、タダの趣味です。(笑
前はサンタという男の子で、とにかく逃げまくってました。
最後はイアフメス、つまり、双子の妹と結婚して王の座に着くという滅茶苦茶な終わり方で。はい。




