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4.ぼく少女の、サンチュ。

 異界転送ものを読んでて、思うこと。

よく、異世界へ移されて混乱しないよな、主人公ども。

普通、見知らぬ土地へいきなり連れて行かれたら、どうにかなるか?

オイラはたぶん、パニックになると思うので、

ラバ(はまだ自分の意思で来た訳ですが)も、倫子も、

そして純子も大混乱! てなわけです。

でも、普通そうならんか?

さ、今回も頑張れ、純子。

「厚かましいにも程がある!」そんな怒鳴り声が響きわたると思って、純子は身をすくめた。しかしそんな声はなかった。恐る恐る純子が目を開くと、椅子の上の男はそのまま。その手が机の上を探している。そして見つけたのは小さなベル。それを振ると、澄んだ音が響いた。

 そして現れたのは、赤毛の大女。純子よりもだいぶん年上のようだ。その女がじろりと二人を見定める。思わず身震いして抱き合う純子と少女。

「あんた、何の用だい?」

 その赤毛の女がシニンに向かって聞く。

「この二人が、食事をご希望なのだが、用意できるかい? モイル」

「ああ、ちょうど作ってたところだから、もう少しでできるよ」

「うん、それと着替えも出してやってくれ。私にもわかるぐらいにずぶ濡れなんだ」

「了解。すぐに持ってくる」

 そう言い残して奥へ消えようとした大女が、立ち止まった。

「あたしの名前はモイル。彼はシニン」椅子の小男を指さして言った。

「あんた達の名前はなんだい?」

(あたしは……)そう言いかけて、純子は言いよどんだ。なぜか言ってはいけない気がした。そして横に立つ少女の目をじっと見つめた。にっこりと微笑むと、少女が答える。

「ボクはサンチュ。お姉ちゃんはタンヌよ」

(タンヌ。あたしはタンヌ……)純子の頭の中で少女、サンチュの言葉が響く。その言葉が響く都度、純子の頭の中で何かが膨らんでいく。

「ふうん。シニンは無愛想で偏屈だけど、根はいい奴だから安心しなよ。話はあとでゆっくりと聞かせて……タンヌ? 大丈夫か。顔色がよくないぞ」

 純子はガタガタと震えていた。寒さもあったけど、それ以上の恐怖が純子を捕まえていた。

「違う……、違う」サンチュに支えられながら、そう呟いている。

「お姉ちゃんは衛士に酷く殴られて、それから言ってることが変なんです……」

「違うわ!」

 純子は叫ぶと、サンチュの手を払いのけた。

「あたしは、あたしの名前はタンヌじゃない。あたしは変なんかないの」

 そう呟きながら、しゃがみ込む。顔を覆った手の下から、涙がこぼれている。

「あたしの居場所はここじゃない。ここのほうが変なの。助けて、誰か、助けてよ」

「はい。これ、飲んで」

 モイルが突然コップを差し出した。純子は思わず受け取る。

「温かいスープ。落ち着くよ。大丈夫。変なものは入ってないから。安心して」

 残りの三人にも同じものが配られた。純子はそっと口をつける。

「おいしい……」そう呟いて、自分がいかに空腹だったかに気がついた。

「こっちのお嬢さんは落ち着くのを待つとして、サンチュとやらに伺おうか。何が起こったのか、話してくれんかな」

 サンチュは頷いた。


 モイルの持ってきたドレスっぽい服に二人は着替えた。シニンの目の前というわけにはいかず、扉の向こうでではあったけど。胸があまりに窮屈で、純子は仕方なく上のほうのボタンを外しておく。

(半分はみだしてるけど、ま、いっか。あたしのじゃないし……)

 モイルが机の上に並べた料理を口に運びながら、サンチュが話し始める。

「ボク達は丘の上の墓守の娘です。母さんとお姉ちゃん、そしてボクの三人で生活してました」

(こいつ、ボク娘だったのか……)頭のどこかで醒めてる純子が呟いた。

「いままでずっと平和な生活でした。食べるものには不自由してましたけど。でも、数日前突然母さんがいなくなってしまいました。それからすぐに衛士たちが家のそばのお墓で何か探している様子でした。そんなことはいままでありませんでした。

 そして今日、家に衛士たちがきたんです。お姉ちゃんが対応してたんですが、突然殴られたり蹴られたりしました。お姉ちゃんは倒れてしまって、身動きしませんでした。ボクも驚いてしまって、ただ見つめるだけでした。お姉ちゃんは死んでしまったんじゃないかって。

 でも、お姉ちゃんがようやく気がついたら、今度は右目を……」

「それで、逃げ出してきたってわけかい」

 サンチュはこくんと頷いた。純子も食べながらサンチュの話を聞いていた。

「そいつは災難だったな」シニンがつぶやく。

「次はお姉ちゃんの話を聞きたいけど、その前に右目をみせなよ」

 モイルの言葉に純子は髪をかき上げて顔を見せた。モイルは平然とした顔で傷の状態を見ると、何か薬のようなものを出してきて塗る。そして眼帯を当てた。薬からはいい香りがする。

「化膿止め。これで傷のほうは落ち着くと思うよ。傷のほうは手際がいい。手馴れた手腕だね」

 自分も手際よく傷の治療をおこないながら、モイルが言う。

「あ、ありがとうございます。なんだか痛みが消えたような気がします」純子がお礼を言う。

「へ、そんなすぐに効くはずはないさ。でも、ありがと」

「さて、今度はお姉ちゃんの番だが、話ができるかな?」

 純子はシニンに頷いてみせる。

「だけど、あまりよく覚えてないんです。目が覚めたらいきなり殴りつけられて、あの衛士ってのに目を奪われて。後は妹に、サンチュにずっと助けられてきたんです」

「その前、目が覚める前のことは?」

「覚えてません。えっと夢を、神様と話す夢を見たような気がします」

 笑われるのかと思った純子だったが、しかし誰も言葉を挟まなかった。

「神様はあたしに何かやれっていったような気がするんですけど、覚えてなくて……」

「ふうん。ということは、お告げではないんだな……」

 シニンのつぶやきに、かえって純子の方が驚いた。(夢のことをまじめにとってる?)

「ああ、すまない。じゃあ以前のことはあまり知らないと。でもどこかからここに来た、そういうことだね?」

 純子は頷く。

「名前はなんていうんだい? さっき、タンヌじゃないって言ってたよね」

 モイルの言葉に、純子はサンチュを見つめた。そして、そっと小声で言った。

「純子……」

「ジュンコか。うん、いい名前だ。悪くない」シニンの返事に驚いて顔を上げる。

「で、でもお姉ちゃんはタンヌ……」言いかけるサンチュを制する。

「そうなんだよ。つまり今のあんたは二つ名前があるわけだ。ジュンコとタンヌ。混乱するよね。さあ、どっちの名前にしておこうか。とりあえず、仮にということでいい。落ち着いたらじっくりと考えて決めればいい。あわてることはないから」

 そう言われて純子は考えた。確かに二つも名前があるのは間違いやすいのは確かだ。自分としては当然、純子と呼んで欲しい。だけど、それでは間違いなく混乱するのがサンチュだ。この、純子のではない体を、サンチュはずーっとタンヌと呼んできているのだから。

 それにこの体がタンヌである以上は、みんながきっとタンヌと呼ぶだろう。となれば、答えは見えた。純子は腹を決めた。

「タンヌと呼んで下さい。その方が、混乱が少ないと思います」純子ははっきりと答えた。

「うん。その方がいいだろう。あんたは理性的な判断ができるようだ。おかしくないと言っていいんじゃないかな」

 シニンの声に純子は頬を赤らめる。けど、悪い気持ちじゃない。四人の食事がゆっくりと進んだ。


「さっき、聞きそびれた事があるんだが」とシニン。

「どうやってここを見つけた? ここらあたりが禁忌の地と呼ばれていることは知っているだろう?」

「はい」サンチュの返事。

「衛士に追われて、とにかく逃げたんです。ここが禁忌の地だから、あいつらも追ってこないだろうって思って」

「でも追ってきました。特に犬に追われてたんです」と純子。

「犬? よく犬から逃げられたね」お皿を片付けながらモイル。

「水に落っこちて、流されながらも岸にたどり着いたんです。そしたら犬もそれ以上追ってこなくって」

 サンチュの説明にシニンが頷いた。

「ああ、犬の鼻が追いかけたあんた達の匂いを水が消してしまったんだな。なるほど」

「でも、ごめんなさい。でも、どうして、ここが禁忌の地といわれるんですか?」


 11時過ぎに話をアップして、それから一話ぐらい書いているんだけど、そうすると寝るのが1時過ぎ。さすがに朝が眠い。

 ので、今日は上げたら寝ますね。おやすみなさいませ。

では。

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