42.女王の、意向。
なんか、下書きとずれ始めています。大丈夫かなあ。
なんとかまとめる方向で検討中。軌道修正なるか。
とは言っても、今夜も頑張れよ。純子。
辺りは闇に包まれていた。
しかし、王宮の中庭でも門の前でも赤々と焚き火が炊かれ、人々が集まっていた。
けが人の治療も食事も与えられているようだった。
暗い川の向こう、街のあちこちでも赤い炎があった。
しかし、それは火事ではなく、王宮と同じように焚かれている焚き火の明かり。
その周りでも同様の救援活動がおこなわれているはずだった。
「女王様、如何でございましたか?」
純子はイアフメス=ネファルトスに訊いた。
王宮の外の様子を見て、帰ってきたところなのだ。そばには貫主も控えている。
「うむ。民は落ち着いておった。みな、感謝の言葉を申しておったぞ。タンヌ、お前の考えは正しかったな」
女王の言葉に純子は頷く。
「それはよろしかったです。こんなときは誰もが心細く、不安になるもの。それを安心させるのが、王道というものです。女王様」
「我とて、人死にを見るのは好まぬ。みなの安心した顔を見るほうが好きじゃ。なんとか、このままジシンとやらがこないようになって欲しいものじゃ」
「そのことでございますが……」
二人は振り返った。
そこにはヘカテミス、ウレアハル、そして女官たちが控えている。
「なんだ、神官どもよ」
「はい。女王様にお願いいたしました、風笛の神殿への使い、どのようになりましたでしょうか」
ウレアハルが不安げな表情で女王に問う。
「あれからすぐに使いの馬を走らせた。しかし……」
「しかし?」
女王は固い表情で言葉を続ける。
「道はあちらこちらでがけ崩れや崩壊を起こしておるそうじゃ。結局、使いは神殿にたどり着く前に暗くなってきたことから、諦めて帰ってきおった」
「そうですか。では神殿の様子はまだ誰もご存じないのですね……」
大きなため息が聞こえたような気がした。純子にも彼女らの気持ちが痛いほどわかった。
神殿には彼女達の仲間がいるのだから、その安否が不明では穏やかな気持ちでいられるはずがない。
モイルがその話を聞いたときには、使いを殴りつけようとしたぐらいなのだ。
『シニンも神殿にいるんだからねえ。モイルも不安だわ』
(とは言っても、道が通れないんじゃあしょうがないし)
「これから夜道を徹して神殿に帰りたいと……」
「ならぬ!」
女王の厳しい口調にウレアハルは身体を震わせた。
「気持ちはわかる。が夜道はよせ。道ならぬ道になっておるのだぞ。日の明るいうちでも危険というのだ。夜道では絶対にダメだ。明日、明るくなってから行くがよろしい。あの、事故を忘れたわけではあるまい」
女王の言葉にヘカテミスはうつむいた。あの事故とは両親の事故のことなのだから。
「はい。わかりました、女王様。今夜は我慢いたします」
ヘカテミスの消えそうな声に女王は頷いた。
「そのことでございますが、女王様――」
「なんだ、タンヌ」
純子はじっと女王の顔を見つめた。
「実は私もサンチュと神殿へまいりたいと思っております」
「それは如何なる理由じゃ」
問い詰めるというよりは確認をするような口調で女王は訊く。
「私達は――いえ、特にサンチュは、剣断から狙われております。ヘカテミス様のご活躍でなんとか逃げることはできました。しかし、次はわかりません。ここ王宮では人の出入りが激しいのです。また衛士にでも化けられては見分けられません。
しかし、神殿では人の出入りは少なく、衛士では返って目立つばかり。神殿のほうが安全であろうと、神官様とお話したのです」
「そうじゃな。我もそう思う。ましてや今の王宮は壁は崩れ、天井がひび割れて雨でも降ろうものならダダ漏れ状態。うむ。神殿に行くがよいであろう」
『よかったね。ジュンコ。お許しがでたよ』
タンヌに純子は落ち着けと合図。
「しかし、母親は、デハウは如何する?」
『それなんだよねー。どうしようねえ、ジュンコ』
(あんたの母親なんだけどね)
ちょっとだけタンヌに言ってから、純子は女王を見つめた。
「できれば一緒に神殿に連れて行きたいと思います。サンチュやあたしがここから消えれば、剣断が次に狙うのは母さんでしょう。いえ、既に一度、母さんに似せた人形で騙されました。母親を人質にサンチュを狙う。それぐらいことはやって当然だと思うのです」
純子の言葉にイアフメスは頷く。
「ならば、一緒に神殿に入ったほうがよいと思います。それに……」
「それに?」
「サンチュが母さんに対して蟠りを持っているようなのです」
決して口にはしないが、態度が物を言っていた。
妙にそっけなく、つれない態度。しかしそれでも視線だけは母親を追っている。
「サンチュにしてみれば、自分の父親のことを知っている女。しかし、このことを今まで、そして今でも一言も話さなかった母親なのです。その理由は何なのか、わからないのですから、苛立ち、不安は増すばかりでしょう。なんとか、その訳を聞きだし、もう一度仲を戻したい、そう思います」
「うむ、そうじゃな。実はデハウはこっそりと言ってきた。神殿に行きたいとな」
「母さんが神殿に?」
「うむ。女神に全てを告白し、娘達に許しを請いたいそうじゃ。デハウも悩んでいるのじゃな」
女王は純子に笑顔を向けた。
「ウレアハル!」
「は、はい!?」
「追捕師はどうする。お前はヘリシェファのところへ押し掛けるのではなかったのか」
ウレアハルは顔を伏せた。
「そのつもりではございます。しかし、神殿の仲間達も見捨てられませぬ。身体が二つあればよかったと思っておりまする」
「なるほど、二つか。ではどちらが追捕師につくのじゃ? 両方ともそうするのではないか?」
女王の冗談にウレアハルは赤い顔になる。
『イアフメス、意外に冗談言うじゃんか』
(これこれ、女王に失礼であるぞよ)
「案ずるな。追捕師も神殿に派遣しよう。二人の時間を大切にするがよい」
女王の言葉にウレアハルの顔が晴れた。が、貫主の顔が曇る。
「女王様。しかし、追捕師殿を神殿にやられたのでは、警備のものがおりませぬ。女王様の身を護るのは誰になさいますか?」
「追捕師じゃ。ヘリシェファに頼めばよい」
イアフメスの返事に貫主は目を白黒させた。これでは、ヘリシェファこそ身体が二つ必要になる。
『どういうこと? これも冗談?』
(まさか、それって……)
「女王様も神殿にいらっしゃるのですか?」
ヘカテミスが小声で言った。イアフメスは頷く。
「今夜はみなじっくりと休んで英気を養え。明日、皆で登る。神殿が無事ならば、女神様の御宣託を是非伺いたい。
デハウの話も聞かねばならぬ。我もともに登るぞ」
貫主は青ざめた顔をしていた。が何も言わなかった。
『言い出したらきかないって顔してるもんねー。イアフメスって』
オールキャストが神殿にそろってきますね。
そろそろ結末が近いかな……?
では。




