3.黒ずくめの、小男。
転生した先が異性だったら……エロっぽくなりますねw
今回はあくまで同性。デカ乳姉ちゃんだったということで。
それでも十分書いてて楽しいんですけど。
さあ、純子。今回も頑張れよっと!
半分水浸しの森の中、純子は美少女と一緒に彷徨っていた。目的地があったわけでもなく、ただただ当て処もなく歩いていた。純子はすっかり無口になっていた。自分に起きている事態が理解できなかった。少女はそれが寒さのせいだと誤解したらしい。純子の身体を抱くようにして歩いている。
純子を戸惑わせているもの、それは胸の大きさだけではなかった。気がつくにつれて、違和感はどんどん膨らんだ。見たこともないごつい手足。妙に細い腰と大きなお尻。そして顔にかかる髪を持ち上げたとき、それは決定的な証拠になった。
(こ、これって……金髪? あたし、いつ染めた? それに長い。長すぎる!あたしは黒のショートカットだったはずなのに)
純子は自分の髪を何度も何度も引っ張っては見つめた。濡れて重くなっていても、その金髪は軽くフワフワした感じ。その髪が腰のあたりまで長く伸びている。中ほどで簡単にリボンで縛ってある。
(カツラ――そんなはずない。引っ張ると痛いから地毛だし。染めることは簡単にできるかも知れないけど、伸ばすのは短時間じゃ絶対に無理だし!)
自分のことに没頭していた純子は、立ち止まった少女に気づかずに衝突した。
「な、なに?」
ぶつけた鼻を撫でながら純子が聞く。
「お姉ちゃん……あの家、見える?」
「家?」
純子は前方を見つめた。森が一層深くなっていて、緑と言うよりも黒い塊のよう。
(ただの密林というか、ジャングルっぽい……え、家?)
目が緑になれてくると、そこには直線ぽい黒が浮かび上がってきた。恐る恐る二人が近づく。
「やっぱりこれ、家よね?」
「壁が真っ黒……塗装してあるのかなあ」
純子がそっと指を伸ばして触ってみる。立ち上る黒い埃。どこかで嗅いだことのあるような匂い。
「お風呂のカビだ!……つまり、これ、銭湯かなんか?」
(いや、こんな森林のまっただ中、道もないような場所にお風呂屋さんなんかあるはずないし)
「お姉ちゃん、出入り口も何もないわよ」
辺りを見回している少女が言う。(あ、あっちの方が冷静だわ)
屋根や壁の一部も森と同化しているようだった。ツタが絡みつき、屋根には草も生えている。樹木に邪魔されて全体が見えない。けど、相当の大きさがあるようだ。
「どうする? お姉ちゃん、他へ行く?」
そう聞く少女を純子は見つめた。丈夫そうに振る舞っているけど、震えているのは純子と同じ。降り続く雨に体温が奪われている。他を探したとしてもそんなに長くは保たないだろう。
(ダメで元々。この中で雨宿りができれば――)
「ううん。入る。なんとしても入り込む」純子は自分の口調に力を込めた。
「でも入り口がないわよ。どうするの?」
「入り口がないと言うことは、どこでもドアだと言うこと。なら、突っ込みましょう!」
純子は勢いよく体当たりをかました。
この行動には誤算があった。純子は壁をさわりはしたが、材質までは考えていなかった。相手が分厚いコンクリートの壁ならば強く跳ね返されて身体を痛めるのがオチだった。もしガラスなど壊れやすく、また鋭利な破片になる物ならば、それまた危険な行為だった。
幸いにして、この壁はコンクリートでもガラスでもなく、脆い木材であった。そして純子の勢いに大した抵抗も見せずにあっさりと粉砕された。それが純子に幸いし、そしてその身体は壁の内部に転がり込んでいったのである。
「どぎゃーーーーー。うわっふ、ぶぶう」
中で純子は奇声を上げた。もうもうと立ち上る埃。その中で咳き込んでいる。
「うへえ、何よ。これ。ちょっとは掃除しなさいよって、もう」
純子が開けた壁の穴から光が差し込んでいる。その光の中、渦巻く埃とカビの粉。その光で何とか建物の中が見える。もちろんお風呂はない。壁と床、天井。家具も何もない。人影もない。
純子がおこした煙幕が落ち着くと、ようやく少女も中に入ってきた。できるだけ埃やカビに接触しないように、用心しいしい。
「お姉ちゃん、壁に穴、開けちゃったわよ。どうやって塞ぐの?」
純子は立ち上がった。
「あそこが出入り口になったんだから、塞ぐ必要はないわ。これから奥を調べましょう」
少女が近づいて純子の手をとる。
「奥は誰かいるかも知れないわよ。出会ったらどうするの?」
純子は穴を指さした。
「これだけ派手にやったんだから、もう気がついているわよ。でなかったら余程のお間抜けさん。だからこっちから行くの。壁に穴開けちゃいましたってね」
少女は純子の顔を見つめて、プッと吹き出した。
「お姉ちゃん、元気出てきたみたいね。よかった。安心したわ。うん。ここの人、探しましょう」
二人は薄暗がりの中、埃だらけの床の上を歩き始めた。開けた穴からの光はたちまち弱くなり、目が慣れるまで立ち止まって待たなくてはならないほどだった。通路のようなところを入っていく。そしてその突き当たりには扉。少し躊躇したものの、思い切ってその取っ手を握る。そして引っ張る……動かない。
「くそ、鍵かかっているのか?」
純子が取っ手をガチャガチャやってみるが、周りはすれど動きはない。
「お姉ちゃん、さっきみたいに体当たりするの?」少女が心配そうに聞く。
さっきの経験から今度は扉を軽く叩いてみた。ぶ厚そうな重い響き。
「いや、これは無理だと思う。こっちが跳ね返されるような気がする」
「壊さずに入ってこい」
「イヤ、だから開かないんだって……って、今の声、あんた?」
「ううん、何も言ってないわよ」
「押せば開く。今度は壊さないで入ってくれ」
声は扉の向こうから聞こえてきていた。低く、乾いた声。その声に思わず身震いしたものの、純子は取っ手を掴むと今度は押した。扉は何の抵抗もなく動いた。そして二人はその中へと入り込んだ。
その部屋の中も薄明かりだった。しかし今まで歩いてきた所よりは明るい。その薄暗がりになれた二人の目には十分すぎるほどの明るさだった。その明るさの元は机に置かれた、灯具のようだ。その明かりが部屋を照らしていた。
よく使われているのだろう。この部屋には埃はない。机の前には椅子。そしてそこに腰掛けているのが声の持ち主らしかった。
第一印象は黒の小男。服もズボンも靴も黒。室内なのに黒の帽子。そして黒い大きなサングラス。そのせいで表情がよく見えない。だけど、少なくともにこやかに歓迎しているようではない。
(歓迎されざる客……だよね。納得するけど)
扉を後ろ手で締めた純子は自分たちの姿を見てそう思った。ずぶ濡れの少女二人。床にはポタポタと水滴が滴り落ちている。一瞬、母親のしかめっ面を思い浮かべて、慌てて頭を振る。
「こっちにこい。二人。だいぶ濡れているようだな。さっきの音といい、埃とカビの匂い。そうか、外壁を壊してきたんだな」
「えっと、あの、入り口が分からなかったから、その……」
「まあいい。壊しちまったものはしょうがない。後で直すだけさ。それよりも壊しても入りたがったお前達の方が問題だ。さて、どうしたもんかな?」
(どうするってのは、ていよく処理するってことか?)純子が身構えた瞬間、少女が叫んだ。
「あ、あの、お腹が減って死にそうなんです。なにか、食べさせてください!」
いやいやいやいや。
昨日は大失態が判明。R指定でノクタに飛ばされてました。
いやー、それはそれで考えてもいいけど、これはそこまでやらないから。
というわけで、登録日が同じになってしまいました。
こっから、改めて一日一善……いえ、一本です。(笑