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36.タンヌの、母さん。

ああ、今日はA感覚開発……じゃなくて、

大腸内視鏡検査にいってきました。

お尻に麻酔塗られるとき、ちょっと感じたぞ。(笑

でも疲れて9時まで寝てしまった。

それから慌てて書きました……。

頑張れ、オイラ。じゃなくて、純子。

「剣断は、ここにおると言うのだな」

「はい。風笛の神殿から追いかけてまいりました。外を護る衛士たちにもお訊きください」

 女王は貫主を呼ぶ。そして貫主から衛士たちに命令が飛んだ。

とたんに動きがあわただしくなる。

『ジュンコ、母さんのことも訊こうよ』

「そうだ。母さんもこの王宮に捕らわれていると思うんです。一緒に調べてください。お願いします」

「その名はなんと申す?」

(か、母さんの名前? うひゃ、タンヌ。名前何よ?)

 純子の口が勝手に開いた。

「デハウ。デハウ・ヂって言います」

「デハウか。如何にもの名前だな」女王から再度指示が飛んだ。

 書類を持って文官が現れる。そして分厚い書類の束から何かしら調べている。それに追捕師も加わって何事か、話し合われていた。

「タンヌ。残念だがやはりデハウというものが捕まったという記録はない」

 純子は大きくため息をついた。やはり、以前追捕師が言ったとおり、ここに来てはいなかったということなのか。

『じゃ、じゃあ母さんいったいどこいっちゃったのよ。どうするのよ、ジュンコ?』

(いや、あたしに言われてもなあ。どっかで死んでるとか?)

『縁起でもないこと、言わないでよお!』

 頭の中でタンヌは泣き始めた。

「だが、デハウという名前の記録はある。食堂の下女として数日前から来ておるようじゃ」

「食堂?」

「うむ。しかもその書類に承諾をしておるのは、剣断じゃ」

「剣断殿が! どういうことなんでしょうか」

「わからぬ。直ちに人をやってそやつを連れてくる。しばし、待たれい」

『どういうこと? もし母さんだとしても母さん、剣断と知り合いだってこと?』

(あたしに訊くなって。わかるわけないじゃんか)

 純子にとって、イライラするような時間が過ぎた。相変わらず剣断、そしてサンチュの行方はわからない。下女のデハウというのは、母親なのか、別人なのか。

『今度は人形なんかに騙されないからね』

(そんなこと、力んで言うな!)


 数人の女官に取り囲まれるようにして、女性が現れた。薄青の瞳。ぽっちゃりというよりは小太りの体系。金色の髪。薄汚れたドレスには大きな前掛けをつけている。

(タンヌ! 母さんなの、これは母さんなの?)

 だがその答えは頭の中よりも先に向こうからやってきた。

「あら、タンヌ。あんたもここへ来たの?」

 まるでいつもの挨拶のような、拍子抜けする言葉。

(こ、これがお前の母さんかあ!)

『いつものように、緊張感ないわあ……』

 ニコニコ顔でデハウはやってくるとタンヌを抱きしめた。

「ああ、タンヌ。なーにしとったんかね。やっと会えたなあ」

「こ、こ、この……」

 あまりにお気楽な言い分に純子は絶句した。

「あんたのことやで、ちゃんとやっとると思っとったけど、やっぱりここへ来たんやなあ」

「何言っとんのや!」

 その叫びは純子なのか、タンヌなのか本人達にもわからなかった。

が、両者とも同じ気持ちであったことは確かなのだが。

「母さんが急にいなくなるは、それから衛士には襲われて片目をなくすは、禁忌の土地から牢屋にぶち込まれるは、風笛の神殿には行かれるし、戻ってくれればこの有様」

(タンヌ、あたしのことは言わないほうがいいよね。きっと混乱するよね)

『うん。娘の中に別人がいるなんて理解しろっていうほうがムリムリ。そいう話はこの人の理解を超えてるから。止めておこうよ』

「やっと見つけた母さんはそんなあたしに、なにしとったかっていう訳? いったい母さんこそ、娘達を見捨ててなにしとっかんかって言いたいわよ!」

 タンヌの剣幕に、デハウはおろおろになっていた。

「ごめんよお、ごめんよお。最初はすぐに帰るつもりだったんだよ。お金も食料もなくてさ、もうどうしようもないと思ったもんだから、この王宮へきちまったんだよお。

 ここでお金か食べ物かもらったらすぐに帰ろうと思ってたんだよ。だからあんた達には何も言わなかったんだけどな。

 そしたらここでは食べ物もたくさんくれるし、ずっと居ていいなんて言ってくれるから、ついつい長居しちまって。

 悪かったなあ。母さんが悪かったよお。堪忍してくれ」

 涙目で話すデハウにタンヌの気持ちも落ち着いてきたようだ。

『母さんがそう言うんなら……ま、いいか』

(ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんた、そうやってすぐ流されるんだから)

 純子が慌てて制したとき、女王の声が響いた。

「デハウ。お前に居ていいと言ったのは誰か?」


 王座の椅子から頬杖をついて、女王が訊いていた。女王を見て、デハウは慌てて跪いた。それまで女王が居たことに気づいてなかったようだ。

「もう一度訊く。お前に王宮に居るように言ったのは誰だ。名を言え」

「そ、それは……剣断殿です」

「ほう。剣断と会えたのか」

「はい。ここに参りましたところ、剣断殿と面会することができまして、その場で言われました。仕事も食事も世話するから、ここにいろと」

『厨房のおばさんねえ……。うってつけというか、何と言うのか』

(そうなんだ、料理得意なの?)

 純子の質問にタンヌは呆れ顔。

『ジュンコ、飯盛女って言葉、知らないの?』

(知らない。仲居さんってことかな?)

 純子の答えにタンヌはため息をついた。

『ううん。知らないほうがいい言葉かも知れない。けど母さんにふさわしいって思っちゃった』


 女王は笑みを浮かべた。

「剣断はそんな慈愛に満ちたものではないぞ。自分の利益を考えずに行動するような奴ではない。お為ごかしというやつだ。

 お前、剣断に何を言ったか。本当のことを言え。まだ言ってない事があるだろう。剣断の利益になるようなこと、または不利になるようなことと取引したのではないか」

「い、いえ、決してそのようなことは……」

 だが、デハウの顔には汗が浮かんでいた。視線が定まらない。女王から始まっていろいろな人の顔を転々と動く。

そして、タンヌに止まった。

「タンヌ、タンヌ。お前から言っておくれ。母さんはウソなんかついたり、人を騙したりするような人じゃないって」


 デハウさん。物を言うのは日頃の行いですよ。

さあ、いよいよ物語の核心が近くなってきましたね。

では。

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