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33.モイル、乱入。

 ヘカテミスはグロッキーですが、交代で登場ですか!?

結構、書きやすくて好きなキャラなんですよ。モイルさんは。

さ、今夜も頑張れ、純子。

でないと、埋没するぞ。

 純子の予想どおりに、素直には王宮には入れないようだった。馬車が近づくにつれて、その様子が見えてくる。王宮の手前には、たくさんの馬や衛士たち。どうやら馬車の進行を食い止めようという算段のようだ。

「畜生……。頼みのヘカちゃんは眠ったままだし、どうしよう」

 純子は唇を噛んだ。目の前にはサンチュが連れ込まれたに違いない王宮は見えるのに、そこへたどり着く方法が見つからない。馬車は速度を落としている。

(ここで諦めるなんて……)

『そんな、ジュンコ。何とかしてよ。あんたならきっとなんとかできるよ』

(タンヌ、あたしにだって無理ってものはあるよ)

 純子がほとんど諦めかけたとき、追捕師に抱きついていたウレアハルが言った。

「私が話してみましょう。説得できるかどうかはわかりませぬが」

『え?』

 タンヌが驚きの声を上げたとき、馬車が止まった。


 衛士たちは王宮の門の前で剣や槍を構えたまま、待ち構えていた。その前にウレアハルを先頭に、純子や女官たちが降り立つ。

「我は風笛の神殿、筆頭神官なるぞ。此度は王宮に急用があるもの。そこを開けられい」

 ウレアハルの声に衛士が応える。

「これは神官様。しかし、剣断殿のご指示により、何人もここを通すなとのこと。神官様も例外ではないそうです。残念ながら通すわけには参りません。再度ご指示があるまでお待ちくださいませ」

『やっぱり、クリティアだよお!』

 純子も頷いた。その様子を見て、ウレアハルはさらに声を上げる。

「此度は緊急なる要件。神殿からの緊急な要請にはいかなる場合も最優先との前例があるではないか。それを無視なさるとは女神を侮辱するのと同罪。それを覚悟のことか!」

 この言葉で衛士たちの間に動揺が走った。上役の顔色を伺うもの。仲間同士で話し合うもの。そして王宮へ馬を走らすもの。

「い、いや、ご指示は……待たれい。指示を仰いでおる。今しばらく、待たれい」

「待てないわよ!」

 純子が口を出した。

「その剣断に妹がさらわれたんだから! 早くどいてよ!」

 誘拐と聞いてさらに動揺するのかと思った純子。しかし、衛士たちはよりまとまりがなくなっただけ。

「こうなったら、力ずくでこじ開けようよ」

「いや、こいつらはできるかもしれないが、あの門は簡単には開けられない。ここで闘い始めたら、扉が開くことは期待できないぞ」

 追捕師の指摘で純子は黙った。

(早く、あの中に入って、サンチュを探したいのに!)


 何か、街のほうでも騒ぎが起きていた。橋のところの衛士を跳ね飛ばしながら、何かが橋を渡って、王宮へと走ってくる。

 わめき声、悲鳴。金属のきしむ音、そして聞き覚えのある蒸気が漏れる甲高い音。

『あれって……もしかして!』

「モイル!」

 巨大な金属の塊が目の前に現れた。大型馬車よりも大きく、背が高い。そしてその天辺で運転をしている、眼鏡をつけた赤毛はモイルに違いない。

 衛士たちは金属の化け物を見て悲鳴を上げながら、我先に逃げ出した。誰一人、闘おうとはしない。王宮の扉の向こうへ駆け込むと、門を固く閉めてしまった。

「モイル、モイル!」

「おう、タンヌ。ここにいたのか。シニンはどこだい?」

 シニンは神殿に残って、資料を漁っていると話すとモイルは笑い出した。

「は、シニンらしい。研究に熱が入ると、他のことには一切無関心になっちまうんだから。それでこの王宮を追い出されたようなもんだがね」

「モイルは、どうしてたの?」

 純子をにらみつけるモイル。

「セランを葬ってやった。墓守がいなくて、穴掘りから葬儀まで全部一人でやったがな」

『墓守ってあたしらじゃん。そりゃ誰もいないわさ』

 タンヌがぼやいた。確かに三人のうち二人も行方不明になっている。

「あたしがあんたに言ったこと、忘れてないだろうね」

 純子の心臓が縮み上がった。(確か、あたしを殺すって……)

「モイルを殺したのはあんた。だからあたしがあんたを殺す」

 モイルの冷たい声に純子は恐る恐る頷いた。

『冷静になれば、理解してくれるってシニンは言ってたのにー』

 タンヌは泣き声になっている。

「あたしが殺す前に他の誰かに殺されていないか、心配だったんだ。そうなっていなくてよかったよ。これからはあんたの身はあたしが護る。護りきれなくなったら、あたしが殺す。いいね」

『えーと、うーんと、それはどういうことになるんでしょ?』

 純子はちょっと考えると、モイルに手を差し出した。その手をギュッと握り締めるモイル。二人の顔に笑顔が浮かんだ。

「ありがとう、モイル」

「早合点するなよ。タンヌ。いつあんたの背後で剣を抜くかわからないぜ」

(そういうことなのよ。タンヌ。ボディガード兼殺人者ってこと)

『余計にわかんないよー!』

 わめくタンヌを無視して、純子は指差した。

「モイル、王宮へ入りたいの。あの門、突破できる?」


 もうあたりには人影はなかった。誰もいなくなった門を見つめる。

「ああ、何とかなると思う。実はあんたはあのまま、ここの牢屋に閉じ込められていると思ってたんだ。だから、無理やり入るような用意はしてきた。前を見てくれ」

 そう言われて、純子は車の前を見た。そこにはブルドーザーの排土板のようなものがついている。

「これで邪魔物を押しのけたり、防いだりできるんじゃないかなってな。これを用意していたのも時間がかかった理由なんだが」

 モイルと純子は車に乗り込んだ。ウレアハルと追捕師は女官たちと共に馬車で待機する。車はゆっくりと門に近づくと排土板で扉を押した。音を立てて門はきしむが、最後のところで踏ん張っている。

「壊れないわよ、モイル」

「しぶといな、こいつ」

 そう言いながらモイルは再度力をかけた。何かが壊れる音はするが、門は残っている。

「モイル、一回下がって。そこから全速で突っ込もう」

「タンヌ、やる事が大胆だな。しっかりつかまっていろよ!」

 そう笑いながら、モイルは純子の言うとおりに後退した。純子も眼鏡をかける。蒸気の迸る音。タイヤがきしみ、そして唸りをあげた。純子は保持棒を固く握り締める。

『くる、くる。ジュンコ、きたー!』

 タンヌの叫びが終わらないうちに、車は激しく扉に衝突した。前につんのめり、何かに激しく頭をぶつける。きしむ音、はじける音、そして壊れる音。もうもうと立ち込める埃と水蒸気。そして大勢の叫び声。足音。

 モイルに助け起こされたとき、純子は王宮の中庭にいることに気がついた。


 いよいよ本拠地に突入。そこで純子が目にしたものは……!?


 いえ、煽りです。まだまだ続きます。

ふざけました。ごめんなさい。

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