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20.純子、絶体絶命。

 とうとう、死刑執行。火あぶりの刑でございます。

どうして斬首じゃなくて火あぶりかって?

 だってその方がおいしいから、じゃなくて!

 いきなり首を切られて復活したらゾンビじゃないですか。

 タンヌじゃなくて、ゾンビタンヌになっちゃいますよ。この話。

などとは関係なく、今回も頑張れ。ホントに頑張れ、純子。

でないと、死ぬぞ。

「あ、あのう……」サンチュがおずおずと切り出した。

「剣断……さんってどういうお仕事の方なんですか。さっきのご様子だとものすごく偉そうな方のようなんですけど」

『う、うっ……火あぶり、火あぶりだなんて……あたしなんか炙ってもおいしくないよ……』

 気がついたタンヌは泣き出している。

(食べるために炙るわけじゃないんだから……ちょいと黙ってて)

 純子はサンチュの話に耳を傾けた。

「その質問にはお前の方が適任だな」シニンはヘリシェファに話を振った。

「うーん、まあぶっちゃけた言い方をすれば、上司じゃ。一番上のじゃが」

「えー、そんな偉い人なんですか。あんな若そうなのに……」

「クリティアはやり手じゃよ。優秀じゃ。私の教え子の中でも一、二を争うような奴だった」

 シニンがぽつりと言った。


 ヘリシェファの話を純子なりにまとめた結果。追捕師が武器を持った警察なら、剣断は検察、裁判所が一緒になったようなもの。とはいえ、ここには弁護士はいない。つまり控訴もない。判断が下されたら、執行あるのみ。

「えっと、えっと、最高裁判所とか……あるわけないよね。つまり、あたしは……刑から逃れられない?」

「まあ、そういうことだ」

(そっか、江戸時代のお白洲でも弁護士なんていないもんなあ……)

 純子はテレビで見た時代劇を思い出しながら考えた。もっともあれが正確に時代を反映しているかは与り知るところではないが。

「だめだ、こりゃ……」

 純子はがっくりと肩を落とした。頭の中でタンヌも死んだような顔をしていた。

(いやいや、諦めたら終わり。諦めなかったら道は開けるもの。頑張ろう)純子は思い直した。

「そうだ、あの、追捕――ヘリシェファさん。外のお天気は? もしかして、雨じゃないですか。それも土砂降りとか? それなら明日に刑は延期ですよね」

 ヘリシェファは純子の顔を見て、ゆっくりと頭を振った。

「残念ながら、よい天気じゃ。きっとよく燃えるだろう」

『だめじゃん。ジュンコ。あたしと大して違わないわよ、その発想』

(うるせえ)純子は牢屋の中を見回した。

(衛士はこの中に三人、外に一人か。ならあたしたちも四人だから一人一殺ならできる……あ、シニンは目が見えないんだった。除外と。う……サンチュにそんなことできるかなあ。虫も殺せないような感じだぞ。不安だから除外……あたしとヘリシェファの二人かあ。二人で四人はちょっと……それに扉の向こうはどれだけいるんだろう。これは……無理か)

「下手な考えは止めて、少しでも休んだほうがいいぞ」

 ヘリシェファが順子の考えを読んだのか、声をかけた。

「諦めません。最後まで、……そうだ、放火するってのは? 火事にまぎれて逃げ出すというの」

「種火はどこにある? それと何を燃やす?」

 そういわれて純子は困った。確かに手にはマッチもライターも何もない。周りは石ばかり。

「じゃ、じゃあ、追捕師を人質にする。どう、これ?」

「ワシはもう追捕師ではない。それに剣断殿からしてみれば、何の価値もない。人質には使えんぞ」

「そうかあ。しまったなあ。さっき、剣断を人質に……」

 いきなり純子はヘリシェファに口を押さえられた。

「お前、そんなやばいことを口にするんじゃない。問答無用で殺されるぞ」

 二人の行動を衛士がじろりとにらみつける。純子とヘリシェファは冷や汗を流しながら、愛想笑いで誤魔化した。


 無い知恵を絞って、四人(と頭の中の一人)が何とか立てた作戦。外に連れ出されたら隙を見て武器を奪って逃げる。そんな単純なことしか思いつかなかった。

『そんなことでうまくいくんですかー』タンヌが泣きそうな顔で言う。

 純子もそう思うが、それでも不安は顔には出さないようにする。

(それしか思いつかなかったんだから、仕方ないでしょ)

 それでもサンチュはしっかりと純子の手を握ってくる。少しでも励まそうという心が伝わってくるような気が純子はした。その時だった。

「おい、出ろ!」

 衛士が大声を出した。衛士たちが四人を追い立てる。扉を抜け、そして階段を上がる。お城の横に出ると、そこには広場があった。目の下には川。その向こうには街が広がっているのが見える。空はヘリシェファが言ったように、青空が広がっている。

「いい天気にいい眺め。うん、処刑じゃなかったらよかったな」ヘリシェファの気楽な声が気に障る。

「うるせえ!」

 広場の中心には柱が立っている。足元には材木の山。

『いやー、これで燃やされちゃうの。勘弁して!』

(勘弁してあげたいけど、今のところ難しいねえ)

 タンヌがパニクっている分、なんだか純子は醒めた感じ。周りを見回しても、たくさんの衛士ばかり。こんな中を逃げ出せるはずがない。(だめか……)諦めのため息を純子はついた。

 剣断が近づいてくる。顔には妙な笑みが浮かんでいた。だが手の届く範囲には近寄ってこない。こちらから近づこうにも衛士が立ちはだかり、動きを抑え込まれる。

「こいつはここに縛り付けろ。他のやつはこの周りで見学させろ。オレに逆らうやつの末路はどうなるのか、たっぷりと覚えていただこう」

「この、……あれ、あんた、名前なんだっけ?」

 毒づこうとした純子は肝心なことを知らないことに気がついた。

「ふん、冥土の土産という奴か? オレの名はクリティア・アテロイ。覚えておいてくれ。とはいっても地獄へ持っていくことしかできないがな」

「うるせえ! クリティア、目を抉られた時から誓ってるんだ。あんたに絶対に復讐するってな!」

『そうよ、そうよ。このタンヌ様を甘く見るんじゃないわよ!』

 純子は毒づいた。身体は押さえ込まれていて、何もできない。それでもなんとか、つばを飛ばす。残念ながらその軌道はクリティアのはるか手前で軟着陸した。

「まったく田舎の粗野な娘がすることといったら、とんでもないことばかりだな」

『い、い、田舎娘で悪かったわね!』タンヌが真っ赤になっている。

『貧乏で粗野でデカ乳だけが取り柄のイモ娘ですよーだ!』

(わかったから、タンヌ静かにして。あんたがどれだけ毒づいてもあたしにしか聞こえないから)

「田舎娘でもね、一生懸命生きているのはあんたと変わらないんだからね。自分の都合で、他人の生活と命、もてあそぶな!」

 純子の叫びにクリティアの動きが止まった。クリティアだけではない。衛士たちもじっと純子を見つめている。その様子を見て、クリティアは一言だけ言った。

「やれ」

 屈強な衛士が純子を持ち上げ、鎖で柱に縛り付けた。どうもがこうが鎖は外れそうにない。

「ちくしょう、ちくしょー!」純子は声を限りに叫んだ。

 松明を持った衛士が近づいてくる。遠くには笑い顔のクリティアが見えた。

(こんなときに、白馬の騎士様がきてくれる――ウソよ、どこにいる、そんなかっこいい人がどこにいる!?)


 ああ、主人公が死んでまう……死んだら、神様のところへ行くんでしょうか。ってことはこの話、最初に戻る?

 う、永遠の輪廻ってやつでしょうか。


 冗談です。さあ、カモン! 白馬の騎士よ!(笑

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