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Ⅰ.禁忌の地 1.目覚めれば、痛い。

 ”下”に落とされてしまった純子のお話です。とぼけた神様ですからお話はなかなか進みません。ってそれは神様のせいなのか?

などと言いつつ、お話スタート。

 ちょっとハードスタートです。ご注意を。

(これも伏線だったりして。クスクス)

(変な夢、見たな……)

 ぼーっとした頭で純子は思った。(神様? 天使? もう、死んじゃったってことじゃんか。ならここは天国か、地獄ってことで。天国ならいいな)

 のんきそうに考えていると、小さな物音がした。何かが倒れるような、そして「お姉ちゃん」の声。

(えー、あたしテレビでもつけっぱなしにしたんだっけ?)

 そう思ったときだった。力尽くで無理矢理身体を引き起こされる。驚いて目を見開くと、目の前には見たこともない風景が広がっていた。

 隙間だらけの板壁。床板にも穴が空いている。それを背景にして、一人の男が目の前にいた。なにか、ヘルメットのようなものを頭に被り、その陰で顔がよく見えない。見えるのはモジャモジャの髭。その男の手がゆっくりとあがると、いきなり純子の顔を殴りつけた。

 強烈な痛み、そして口の中に広がる血の味。

「い、痛ってえ」

 痛みと共に、どこか、夢見心地の純子の頭がようやく晴れた。しかし、抵抗するまもなく、続けざまに頭を床に押しつけられる。純子の頭の下で、床板が悲しそうに軋んだ。

「ふん、死んだかと思ったらまだしぶとく生きてやがる」

 男は呟くと、純子に怒鳴った。

「おい! 弟はどこだ。さっさと吐かねえとさっきみたいに死にかかるぜ」

(なんか、夢でも現実でも死にそうになってるなあ、あたし)

 頭の片隅はなぜか醒めた感じで、純子は思った。

「弟なんて、知りません。あたしは――」

 一人っ子です、と言いかけた純子の頬に再び鉄拳がふるわれる。数発食らったところで、別の男の声がした。

「まあ、待て。女は優しくした方が言うことをきくこともある」純子はその男の方を見た。


 黒いボサボサの髪。それが顔を縁取るように垂れている。端正な整った顔立ち。でもそれ以上に印象的なのが、目。黒く澄んだ瞳に、まるで吸い込まれるような、そんな感じを純子は受けた。

「なあ、娘さん。正直に話しなよ。手荒なことはしたくないんだ。素直に話せばこれ以上酷い目にはあわせない。けど、ウソをつくようなら容赦はしない。どうだい、話す気になったかい。さあ、弟はどこだね?」

 静かな中にも威圧的な響きがあった。純子は背筋に震えが走るのを感じた。

(怖い。この人は、恐ろしい。言うことをきかないと、何されるかわからない)

 純子のおびえが伝わったのか、その男の顔に残忍そうな笑みが浮かんだ。

「さあ、言えよ。楽になりたいのなら」

「ご、ごめんなさい。あたし、本当に何も知らない――!」

 純子はお腹を押さえた。いきなり蹴りつけられたのだ。

「お姉ちゃん!」どこかで声がする。

「下手に出てると思って、このクソアマ嘗めやがって。思い知らせてやる」

 男はナイフを取り出すと、純子の目の前に突きつけた。輝く白刃に怯える少女の顔が写る。金髪に碧い瞳。

(あ、あれ?)

 妙な感覚に囚われたのはほんの束の間。右目の前にあったナイフが煌いた瞬間、痛みともに視界が揺らめいた。悲鳴とともに、純子は両手で右目を抑える。生暖かい液体の感触。

そして、ニヤニヤ笑う男のナイフの先には白い眼球が――!

「こ、この、なんてこと、なんてことを!」

 純子はわめいた。痛みと恐怖で何か言っていないと、心が持たない。

「仕方ないだろう。容赦しないってさっき、言ったじゃないか」

 男の笑みが大きくなる。

「どれだけでも罵ってくれ。力があるってことを実感できる瞬間だから」

「お姉ちゃん、お姉ちゃん! 大丈夫?」

 誰かが声とともに、純子にしがみつく。男はそちらを一瞥して、

「まだ抵抗する気がありそうだな。もっと懲らしめてやれ」

 周りの男達はうなずいている。と、一人が声を上げた。

「どうせ、後で殺しちまうんなら、愉しんだっていいでしょ。剣断殿」

 男は小さく乾いた笑い声を上げた。

「好きにしろ。いたぶろうが愉しもうが文句は言わん。弟の居場所さえ聞き出せばこの姉妹に用はない」

 右目があったはずの場所を手で抑えたまま、純子は残された片目で男を凝視した。

「オレはそっちには興味がないんでな。馬車で待つから事が済んだら知らせろ」

 そういい残して、家を出ていった。数人の男どもがそれに続き、残ったのは二人だけ。その二人がヘルメットを脱ぎ、いやらしそうな笑いをひげ面の顔に浮かべながら純子に近寄る。

「オレは姉のほうをやるから、妹のほうをやりなよ。へへ、でけえ乳だぜ」

 そう言いながら、一人が純子の胸に手を伸ばす。

「い、いや、いや。お姉ちゃん、助けて!」背後の声が悲鳴を上げる。

「妹は別嬪だなあ。そう嫌がるなよ。愉しくやるんだからよ」

(いったい、何がどうなっているの? 夢? これって悪夢なの? じゃあ早く醒めてよ!)

 いくら純子がそう願っても、男の体重が体にのしかかってくる。

(このまま犯されて殺されるなんて、こんな人生ありなの!?)

 観念して目を閉じたときだった。奇妙な音が背後でした。その音で男が顔を上げる。次の瞬間、男はぐったりと全体重を純子にかけてきた。

「ぐ、ぐえぇ! お、重い」

 精一杯の力で跳ね除けようとしても動かない。

(ええ? このまま押しつぶされる? そんな死に方、すごく情けない!)

 誰かの加勢でやっと男は床に転がった。白目をむき出しにして伸びている。

「お姉ちゃん、大丈夫だった?」

 そこには金髪の美少女が、涙を浮かべながら純子を抱きしめていた。

(さっきからお姉ちゃんって言ってたのは、この娘か)

「いったい、何をしたの?」聞きながら、純子は少女を見つめた。

「薪で、転がってた薪で殴ったの」

 二人の男がヘルメットを脱いだのがラッキーだったようだ。

「それより、お姉ちゃん、あいつらが戻ってくる前に逃げましょう」

「逃げるってどこへ?」

「どこでもいいから。こいつらが気がついたら、ボク達絶対に殺される」

(そりゃそうだ。ここまでぶちのめしたら、復讐は恐ろしいな)

 傷みながらもどこか冷静な頭の片隅で純子は思った。


 この家、いや小屋はボロボロで隙間だらけなのが今は幸いしたようだ。二人がその隙間から外をうかがうと、馬車の側に男達が屯しているのが見えた。すっかり油断しているようだ。犬と遊んでいる奴まで見える。

「前はダメ。裏から逃げよう。お姉ちゃん」

 少女に手を引かれて、純子は小屋を出た。空はどんよりとした曇り空。今にも雨が降り出しそう。

「雨が降り出せば助かるかも知れないわ。お姉ちゃん、急ぎましょう」

 先の見えない道へと純子は走り始めた。

”聖痕”。スティグマでしたっけ。

とりあえず、美少女の名前はそのうち出てきますけど、ボク少女です。

違和感あったらごめんなさい。

では。

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