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プロローグ:神様と天使と

 さる所に投稿し、D評価を頂いた作品が下敷きになっております。そのまま投稿して評価してもらおうかな、とも思ったのですが、それでは芸がない。のでここ数ヶ月、ちびちびと書き直してました。ようやく公開できるところまでこぎつけられたのがうれしいです。

 純子が気がついたとき、そこは薄暗がりの中。唯一の明かりと言えば、目の前の人物にスポットライトが当てられているもの。長い白髭、照り輝くヤカンのようなつるっぱげ。大柄の身を包むゆったりとした衣装。

(サンタクロース?)それが純子の第一印象。

(でもカーネルサンダースってハゲだったっけ? ってそれはチキンでしょ!)

一人ツッコミを頭の中でやりながら、純子はその人物を見つめた。

「おい、もうちょっとこっち向けて。バランスが狂っちょる。何度言ったらわかるんじゃ」

 その老人の周り、照明装置をせっせと置き直している少女に指示の声。

(うわ、なんか気むずかしそうでヤな感じ)

 しかめっ面に気がついたのか、老人は純子に視線を向けた。

「あー、気がついたのか。よくまあ来た。ゆったりしてくれ。時間はないんじゃが」

「はあ、お邪魔してます。……ってここ、どこですか?」

「細かいことは気にするな。時間がないんで、要点だけ話す。お前、死にかかっておる」

「は、はあっ!?」


 呆然としている純子の前で、少女が老人に話しかけた。

「あのー、そんなこと唐突に言ったら、誰だって固まっちゃうと思いますよぉ」

「何を言っておる。時間がないって言うたろう。余計な口は挟むんじゃない」

 老人に叱られて、少女は口を尖らせながら引き下がった。

「というわけじゃ。だから下へ行かなければならないということじゃ」

 何かが純子の中で反応した。老人の言い方か、その突拍子もない内容か。が元々、逆らうよりは流される性格ゆえに、その言い方はおとなしかった。

「あ、あの、死んじゃうとか下へ行けとか全然わかんないんですけど。その、まず、あなたはどなた?」

「おお、自己紹介という習慣があったのう。そうじゃ、わしゃ、神様じゃ」

「……じゃ、あたしは、純子」

 純子のあからさまな不信の視線に、自称神様の老人も気がついたようだ。

「なんじゃ、何か不服か」

「ええ、まあ。最近は変な新興宗教とかもあって、神様なんて信じられないんですよね。ましてや、自分のことを神様だなんて言う人はどっかおかしいんじゃないかということで」

「な、何を言うか。神様が自分のことを神様というのは当然すぎて、噴飯モノじゃ!」

(噴飯――ご飯、吹き出しちゃうほどおかしいってことか)

 どっか醒めてる純子に対して、神様の方は怒り心頭のご様子。

「し、信じられんのならそれでもいいわい。じゃが、ここに来た以上は下にはいってもらわにゃならん。

もう顔も見たくないわい。さっさといかんかい!」

「え、えー、もうちょっといろいろ聞かせてください」

「うるさい、うるさい! どうじゃ、これでも行かぬか!」

 取りなす少女を蹴飛ばして、神様は片手を振り回した。薄闇の中で電光が走る。純子の足下に、スパークの火花が散った。

「ひ、ひいっ!」

 慌てて後ずさる純子。

「神の力を侮る奴には、天罰じゃ! どうじゃ、わかったか!」

「は、はい! 神様のおっしゃるとおりにします!」

「わはははは! ならば、行け!」

「はい!」

 その返事と共に純子の姿が消えた。小さな光が遙かな下界に消えていく。


「あーあ、神様ぁ。行っちゃいましたよぉ」

 さっきから神様をなだめようとしていた少女があきれ顔。

「当然じゃ。わしが行けと言ったんじゃから」

 自分の思いどおりになったことですっかり満足顔の神様。

「でも神様ぁ。何のために行かせたのか、ちゃんと説明しましたぁ?」

 お前もわしのことを信じてないのか、嘆かわしいという顔の神様。

「当たり前のクラッカー。それを言わずしてあやつに一体何をさせようということじゃ」

「でも、でも、神様ぁ。さっきのご様子、もう一回見てみますよぉ」

 少女の指が動く。と暗闇に画像が再生される。その画像が進むにつれて、自信ありげな神様の顔がどんどん曇った。

「ありゃー、わしゃ、言わんかったようじゃのお」

「ほらねぇ。神様ぁ。あたしの言ったとおりでしょ。で、どうするんです? 呼び戻しますかぁ?」

 神様は、対照的に得意げな少女を忌々しげに睨み付けた。

「そんな馬鹿な事ができるか。神様の威厳が消えちまう。もっと良い方法を考えんか」

「ほーい。ちってもねぇ、なんかいい方法、ありますかねぇ」

 神様の威厳なんて、そもそもないじゃん。態度でそう伝えている少女。

「そうじゃ。よい方法があるぞ。呼び戻すのではなく、伝えに行くんじゃ」

「おぉ、それはナイスではありませんかぁ。で誰が行くんですかぁ?」

「お前じゃ、天使」

 神様の言葉に少女は青ざめた。慌てて神様の足下にしがみつく。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよっ! どうやってあの娘を――」

 が一歩遅く、少女の姿は消えた。

「神様のバッ――!」

 言いかけた言葉を残して、先ほどの純子と同じように小さな光が下へ落ちていった。

「やれやれ。若い奴らは礼儀というモノを知らん。これからの人生で苦労するぞ。お前ら」

 神様はぶつぶつ呟いた。

「しかし、忘れっぽくなったのは事実じゃのう。うん。気を付けんといかん。女神の奴もこういうことなのかも知れんなあ。お互い、長い人生だからのう。よく、肝に銘じておこう。とは言え、てきぱきと仕事をこなすと腹が減るものじゃ。これ、天使。お茶にするぞ」

 呼びかけるが、当然返事はない。

「まったくどこをほっつき歩いていることやら。真面目に仕事をせんと飯をやらんぞ。おーい、天使。早く出てこい。おーい」

 あたりをフラフラと歩く神様の足に、照明装置のコードが引っかかり、派手にひっころがる。

「くそ、天使のアホめが。ちゃんと片付けておかんかい。おーい、天使やーい。お前がいないと、何も分からん。怒らないから出ておいで-」

 本当に神様なんやら、痴呆の老人と区別がつかない様子を見せながら、神様は天使を探し回っていた。

 一応、予定は毎日更新を目指します。がんばー、オイラ。

では。


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