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花恵さんの寿命が見える  作者: 線対称


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2/4

2話 天羽さんの笑顔のためなら

───バキッ


 凄まじい金属音。見ると、信号機が根元から倒れていく。その先には───


天羽(あもう)さんっ!」


 天羽さんが、迫り来る信号機に気付いたが、ただ立つ事しか出来ずにいた。

 知っている。この先の未来も。

 だから動け。僕が守るんだ。

 恐怖を踏み潰すように、今出せる力いっぱい地面を蹴ろ! 跳べ! 動け!


───ゴォォォォォン


 轟音が空気を切り裂く。重く、鈍く、金属音が爆ぜる。アスファルトの地面が揺れる。耳鳴りがスゴい。

 何とか薄目を開ける。信号機は原型を留めない程ぐしゃぐしゃに潰れていた。さっきまで綺麗だったアスファルトの地面が割れている。人なんか絶対に耐えられない。下手すれば……そう思うと心臓がバクバクうるさい。だけど、心臓が動いてるという事は、とりあえず生きているようだ。


「っ、天羽さん!」


 腕の中を見る。天羽さんが、縮こまって震えて、僕にしがみついていた。

 そう。僕は寸前で飛びかかり抱きしめ、天羽さんと一緒に転がる事が出来た。信号機の直撃を避け、天羽さんの未来を守れた。

 でも。


「はっ……はっ……」


 天羽さんの呼吸は乱れ、まるで極寒の山に遭難したかのように身を震わせている。

 どうする。ここから先は、どうすればいい。僕に何が出来る?


「大丈夫。もう大丈夫」


 僕は、天羽さんの頭を撫でる。どうか落ち着いてほしい。そう願っているのに、天羽さんは震え続けている。恐怖と戦っているのだろう。ぎゅうっと、僕を抱き締めてくる。

 ああそうか。ここにいる限り安心出来ないんだ。


「天羽さん。立てる?」


 僕は天羽さんに肩を貸して支える。しかし、上手く力が入らないようだ。ならば、一刻も早く移動するには。


「天羽さん。抱っこしてくよ。しっかり掴まって」


 そう一言添えて、僕は天羽さんの背中と膝裏を持って、いわゆるお姫様抱っこで持ち上げた。天羽さんも、より強くぎゅううっと僕を抱き締めてくれて、より安定感が上がった。そのお陰で持ち上がる事に成功したけど、天羽さん、僕より身長が小さいのに意外と……おっと何を考えているんだ僕は。心で思うのも失礼だ。気のせい気のせい。余計な事を考える余力があるなら大丈夫だろう。

 そうして、すぐ近くの柿の木のある民家にお邪魔させてもらう。ここなら安全そうだ。


「もう大丈夫」


 僕はしゃがんで天羽さんの腰を降ろす。もう手を離していいという意味合いで、天羽さんを支える手の力を緩める。

 なのに。

 天羽さんが、更に強くぎゅうううっと僕を抱き締めてくる。

 ………ぎゅうううっと。


「……」


 ああ。

 意識が向いてなかったから、改めて気付く。

 すっっっっっごく、すごい。

 よし、状況整理だ。

 僕は天羽さんを抱き締めている。天羽さんも僕を抱き締めている。つまり抱き合っている。重要なのでもう一度言おう。抱き合っている。しかし僕はもっと受け入れねばならない現実がある。それは僕と天羽さんの間にある柔らかいもちもちだ。このもちもちが天羽さんの呼吸を認識できる程の穴埋めをするように接点を生じさせている。この絶妙な弾力は断じて制服が生み出す芸術ではない。そして天羽さんも僕も太っていないから贅肉でもない。否。ある。出ている所はある。今まで僕は直視しないように気をつけていたそこは制服の上からでも大まかにラインが浮き出ている最も顕現するのが体操着を着てバドミントンのラケットを振りかぶる瞬間に慣性の法則に従って体の動きに遅れて付いてくる小さな動きでゆらゆら大きな動きでばいんばいんなそれは僕の記憶の秘蔵ファイルに眠ってるから忘れる訳がない。

 状況整理終了。このすっっっっっごくすごいのは……天羽さんの…………


「っーーーーーー!!」


ジュワーッと湯気を出てもいいくらい、頭が熱を帯び、僕の意識は溶けた。





◆◆◆◆◆




「次のニュースです。昨日の午後4時半頃、挙母市(ころもし) 井上町(いのうえちょう)の交差点にある高さ約3メートルの信号機が根元から倒れました。横断していた高校生2人にケガは無いという事です。倒れた原因は、連日の強風と劣化によると推測されており、警察が詳しく調査しています」


 すごい事になってるらしい。

 朝目が覚めて、自室のテレビを何となくつけたら、よく知るあの場所が映っていた。立ち入り禁止のテープが張られ、大勢の警察が写真を撮ったり交通整理とかしている映像が流れていた。


「ふぁぁ」


 ベッドの上であくびを1つ。

 昨日のあの後は、寝起きでも鮮明に思い出せる。

 抱き合って沸騰した僕。

 その時、天羽さんの意識が戻ってパッと手が離れた瞬間、ダッと走って、ガッと帰宅して、ボッと布団に直行して、ムッと目が冴えて眠れないと思っていたら、フッといつの間にか寝落ちしてて、ハッと気付いたら今日になって、パッと今に至る。自分でも何言ってるのか分からないくらい、本当に、昨日は色々ありすぎた。まだ熱が抜けきっていない。


「はぁ……眠い。サボろっかな」


 ゴロンと寝て、ふと、ついさっき眠っていた時に一瞬だけ見た白黒の夢を思い返す。

 それは、眠気を覚ますには充分だった。


「…………」


 深く深呼吸を深める。

 改めて思う。あのデジタル時計は、まさしく、天羽さんの寿命。考えたくないけど、もし僕が気付くのが遅くなって、ゼロになったら……


 死…


駆馬(かるま)

「っ!?」


 部屋の扉から声が聞こえた。


「お、おはよ。どしたの?」


 すると、お母さんがドアを静かに開けてきた。


「おはよう。やっと起きたね。学校は行けそうかい?」

「学校は……悩み中」

「そっ。まぁ、今日は休むのも良いと思うよ。けど、今、花恵ちゃんのお父さんが来とってさ。挨拶だけでも行けれそう?」


 ……今、何て?


「昨日、ね。色々聞いた。あんた花恵ちゃんが危ない所を助けたって? 良い事したじゃんね。そのお礼をしに来るって昨日電話があったけど、あんた寝てたから」


 天羽さんのお父さんが、来ている。

 天羽さんを今日まで育ててくれた方。

 待たせる訳にはいかない。


「ぬぅぅぅん!」


 布団を蹴飛ばして跳ね起き、カーテンを開ける。おはよう僕。くよくよタイムは後で。また今度たっぷり悩むとしよう。


「まあそんな急がんでええよ。朝の支度が終わるまで車で待っとるってさ。もし学校に行くんなら乗せてくれるし、行かんならその通りにするってさ」

「ん、分かった!」


 と言う頃には着替えを終える。リュックは昨日片桐に渡してきた。きっと学校で渡してくれるはず。

 という訳で、荷物は無し。寝癖を直して玄関へ。


「駆馬。忘れ物」


 靴を履いていると、お母さんが僕を呼び止める。その手には、いつも持っていくお弁当の包みが。


「え? 作ってくれてたの?」

「一応、ね。休みなって言ったけど、いらんお節介だったね。むしろ学校に行く方が元気になるみたいだし。花恵ちゃんに会えるもんね?」

「ちょっ!? か、関係無いよ!」

「あははは! ごめんごめん! ははは!」


 お母さんめ、僕で遊んでいる。言い返したいけど、肯定も否定も出来ない。

 しかし、まぁ。そこに関して嫌な気持ちは無い。お母さんは、心配しながらも、僕の行動を見透かしてお弁当を作ってくれていた。すごく助かる。だけど、それくらい僕をよく見てくれて、察して、支えようとしてくれてる。

 優しさにこれ以上甘えてはいけない。でも、今僕に出来る事は、その優しい笑顔から視線を逸らす事だけだ。

 

「心配かけてごめん」

「全くだよ。無事に済んだとは言え、あんたに何かあったら嫌だからね」

「うん」


 本当に、昨日みたいな事にならないよう気を付けないと。天羽さんを守れて良し、なんだけど、お母さんにこんなに心配させるのは、僕だって嫌だ。

 なんて恥ずかしくて言える訳も無く、心の中でこっそり呟いて、僕はお弁当をしっかり受け取る。

 

「じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい。気を付けてね」

「うん!」


 強く、ドアノブを握る。

 僕も、天羽さんも、ケガしないように。

 進め、天羽さんを守る為に。

 そう決意を込め、僕は玄関を出た。


「……え?」


 だが。僕はまだ、寝ぼけていたらしい。天羽さんのお父さんだけが来ていると思い込んでいたから。


「おはよう!」


 天羽さん本人が、制服を着て、家に来て、僕に手を振って、僕の方へ駆け寄ってくれているだなんて……。


 おお、神よ。

 それは、天から舞い落り、雲の如く柔らかな羽で包み、人々を癒す天使か?

 あるいは、色鮮やかな花を咲かせるように、人々に彩りを恵む精霊か?

 いいえ。その光の名は、天羽花恵さん。

 あなたの笑顔、守りたい。


「石上くん? 大丈夫?」

「……え?」


 しまった。急に嬉しい事が重なりすぎて、軽く昇天していた。

 返事をどうしよう。心の準備が何も出来てない。どうするどうするどうする。


「もしかして、疲れが取れてない?」

「や、もぅ、大丈夫」

「そう? なら良いけど。急に来ちゃってごめんね。無理しないで言ってね」


 ニッ、と微笑んで、緊張で言葉が噛みまくりの僕ごと、空気を優しく包んでくれた。天羽さんマジ天使。


───バン


 そんな時、車のドアが閉まる音が聞こえた。


「駆馬くん。驚かせて申し訳ない」


 運転席から誰かが降りて来た。筋肉隆々で高身長な、スーツ姿の男性。肩が筋肉で張っていて、力を込めたら服が炸裂しそうな威圧感がある。


「ありがとう。娘を守ってくれて、本当にありがとう」


 フッ、と爽やかに微笑み、僕の手を両手で包んで握手。いつ、この人に喜ばれる事をしたっけと思ったけど、今、気になる事を言ったな。


「娘?」

「うむ。花恵の父親だ。宜しく頼む」


 先程の微笑みと違い、1人の娘を16年守ってきたと言わんばかりの深みを感じさせる微笑みだ。出来る男オーラなんて表現するのは幼稚だが、そんな感じに語彙力でも敵わないような、大人の貫禄に圧倒されてしまった。

 せめて挨拶だけでも!


「おおお初にお目にかかります! 僕の名前は石上駆馬です! 晴天眩しい朝早くにご足労頂きまして誠に感謝の極みでございますぅ!」

「はっはっはっは! 面白いな! しかし、かしこまる必要は無いぞ。私たちの好きでやる事だからな!」


 なんと。緊張で迷走した僕の失態を笑い飛ばして下さった。器が大きい。


「さぁ、制服を着ているという事は、学校に行くのだろう。乗ってくれ。君に礼を言いたいと娘が張り切っていてな」

「パパ! もう! もう!」

「はっはっは! 花恵も面白いな」


 ああ。ぷんぷん怒る天羽さん、良き。

 パパと呼ぶ天羽さん、良き。




◆◆◆◆◆




 ややあって。

 お母さんに手を振って見送られ、車が発進した。発進して、すぐに思考停止してしまった。どうしよう。超至近距離で、天羽さんからラベンダーっぽいシャンプーの香りが、僕の鼻を優しく包む。普段の学校では、ここまで至近距離で香りを独り占めするのは不可能だった。良くて、すれ違いざまに一瞬だけ。しかし今は、嗅ぎ放題。まさに最高級レストランのビュッフェさながらの極上のおもてなし。なるほど、お礼がしたいというのは、この香りの事なんだね、天羽さん。


「あ、あのね」

「ありがとう。最高です」

「え?」

「え」


 しまったぁぁ! つい心の声がこぼれたぁぁ! 香りをありがとうとか普通にキモいだろうがぁぁ!  それに、言葉を遮っちゃったぁぁ! 天羽さんを困らせちゃったぁぁ! 何とか会話を繋げないと!


「その……学校まで送ってくれて、ありがとう。乗り心地、最高です、はい」

「ふふっ。ふふふふっ」


 何故でしょう。クスクス笑ってらっしゃる。


「お礼、先に言われちゃった」

「あっ」

「いいよ。どういたしまして。車はね、パパが提案したの。昨日あんな事があったし、心配してね。でね、石上くんも一緒にどうかな、って私思って」

「……僕も?」

「あ、石上くんの都合とかあれば、そっちを優先してもらっても」

「大丈夫です! お父さん、あざます!」

「はっはっは! 任せたまえ!」


 っしゃああああ! 何たる幸せ! お父さんグッジョブ!

 と、叫ぶのは心の中だけで、あくまでも冷静になれ、僕よ。


「良かった。これで……ゆっくりお話出来る」


 と。天羽さんがより一層落ち着いた声になる。ふと見ると、僕と天羽の視線が重なった。黒い真珠のような瞳で、綺麗だな、なんて思っていると、天羽さんは目尻を細めて僕に微笑んでくれた。


「石上くん。昨日は、本当に本当にありがとう。私を守ってくれて。安全な所に運んでくれて。大丈夫って言ってくれて。さすってくれて。すっごく元気をくれて。もう、何回言っても足りないくらい、ありがとうって思ってるよ」


 ゆっくり。一言一言。思っている事を頑張って言葉にしてくれているのは、容易に分かった。それほどに、心で感じている事を言葉にして僕に伝えたかったのだろう。

 だからこそ、言い切った後の今の方が、天羽さんの笑顔が増して、白い前歯がチラリと見えている。

 ……。

 微妙な刹那。耳に掛かっていた栗色の長い髪がサラリと垂れる。お互い何も言わず目を合わせる。今は、僕が返事する番。この笑顔に笑顔で応えるべき。そんな事は分かっている。なのに、僕は目を下に逸らしてしまう。


 ちっとも誇る気になれない。


 天羽さんのお父さんに感謝された時もそんな感じだった。

 お母さんに褒められた時も同じ感覚だった。

 今思えば、今朝、左手薬指を見てから、ずっと気分が重かったり、妙にテンション高くなったりと、いつもの僕じゃない。

 その原因は、きっと。

 まだ終わってないからだろう。


「あっ、あとね、お礼に、これも。あれからお菓子を作ったんだけど、どう? 学校で渡すと皆が見ちゃうから……」


 天羽さんが、鞄から正方形の桐箱を取り出す。両手の上に乗るような小ささだ。

 受け取り、蓋を開けると、こんがりと焼き目の付いたパンが9個入っていた。縦3個、横3個で可愛く整列している。そのどれも1口サイズに小さい円形で、表面は光沢感のある艶がある。ほんのりとリンゴの甘い香りが鼻をくすぐる。


「アップルパイ?」

「正解! よく分かったね!」

「香りで分かったよ。すごい美味しそう。でも、本当に僕が食べていいの?」

「うん。石上くんに食べて欲しい」

「っ!?」


 食べて欲しい。

 そう聞いた瞬間、笑みがこぼれた。天羽さんが、僕の為に手作りしてくれた。やばい。嬉しすぎて、もうこのまま走り出して車より先に学校まで行けそうな気分だ。


「えっへへ! 食べて食べて!」

「うん。じゃ、お言葉に甘えて、1口頂きます」


 いざ実食。

 潰れないよう、優しく摘み、口に入れる。瞬間、サクッと生地が崩れ、リンゴとシナモン、遅れてアーモンドの風味が口いっぱいに広がる。この1口サイズで全て完結している。なるほど、車の中で食べやすい事も考えて、この小ささなのか。天羽さん、なんて優しくて料理上手なんだ。将来はスゴいパン職人になるぞ。オープン初日から毎日行かねば。


「これ、むっっちゃ美味しいよ」

「良かった! ふふふ! まだあるからね! ゆっくり味わってね! ふふふふっ!」


 僕の反応に天羽さんが笑う。その笑顔を見て、ふと思い出す。

 あなたの笑顔、守りたい。


「……」


 1口アップルパイをもう1つ取り、眺めつつ、瞼を閉じる。

 眠りが浅くてほんの少しの夢だったし、その瞬間を見るより前に目覚めた一瞬の夢だけど、鮮明に覚えている。


 高校の帰り道、天羽さんが激しい雨の中を走る、白黒の夢を。


「……」


 とりあえず今日は雨は降らない。

 けれど、まだ、いつ何が天羽さんに襲いかかるのか分からない。

 勿論、そんな事させない。大人になる前に人生が終わるなんて、早すぎる。

 でも、天羽さんに言える訳ない。雨が降る日に死ぬから気を付けて……って? そんな悲しい未来を言って、信じるか? 信じたとしても、学校に行ったり友達と遊んだりするのを普段通りに出来るか? いや、出来る訳がない。家に閉じ篭もるし、笑顔が暗くなる。

 そんなのは嫌だ。僕は、天羽さんの純粋無垢な笑顔が見たい。

 だからこそ、今、僕の取るべき最善策は、正直に全部言うのではなく……。


「ねぇ、天羽さん」

「何?」


 言おう。そう思った時。

 天羽さんと、再び目が合う。小首を傾げると、栗色の長い髪が横に垂れ、耳が隠れる。その所作に見蕩れる自分に、改めて思う。

 美しい。見るたび心が満たされる。つい昨日までは、正面から顔を見たいと思ってた。名前を呼ばれたいとか、髪を撫でてみたいなんて思ってた。けれど、昨日の時点でその願いはどれも叶っている。こんな幸せを、終わらせたくない。教室で斜め後ろからじゃ足りない。もっと近くで君を見たい。明日も、明後日も、もっともっと先も、僕は守る。守りたい。守らせてほしい。だから……。


「今度、一緒に、帰る?」


 ああ。あああ。言えた。目を合わせてしっかり伝えられた。

 頭から湯気が出てるんじゃないかと思うくらい、熱い。

 それでも、僕は目を合わせ続ける。恥ずかしいけど、ずっと伝えたかった事だから。

 

「うんっ!」


 そう言った天羽さんが、白い歯を見せて眩しく微笑む。髪が朝日に照らされる。その後光は、まるで、迷える子羊を抱きしめる聖母のよう。

 ああ、やっぱり美しい。

 1枚の絵を、僕1人だけが堪能できる。

 今までは遠くから眺める事しか出来なかった。でも、それは昨日まで。これからはもっと近くで見れる。僕を、見てくれる。

 昨日の僕から、進むんだ。

 天羽さん。僕は、死神の決めた運命にだって立ち向かう。天羽さんの笑顔のためなら、何度でも。

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