表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒグレのクニ  作者: L
二章 らぶきゅんのときめきワールド
19/30

十五夜「不動恭平」

ヒグレのクニに初めて入ったときの路地。

徒歩であるくなか、そこにたどり着いた。


「あ……」

「ここって」

「貴方たち。ここで私を追っていたのよね」

「……別に悪意があったわけでは」

「その話はもういいわよ。木刀持ってた私が悪い」


始めて入ったときの感覚は今でも忘れない。

氷月を追ってあの世界にたどり着いた。

かすかに肌がひりつくような感触がする。

そこにあるのはただの路地だ。

だが、警戒のせいなのか。

その場所はいつもとは違う感覚がした。


「揺らいでみえる……?」

「あ……確かに」

「それでいい。そこが境目だ」


不動は、久遠の発言を肯定した。


「……へー」

「不思議なもんだな」


不動は、久遠の意識した場所と同じ場所を指さす。

一度その世界にいったからなのか、その箇所が現実のものではないと直感的にきがつくようになった。

なんだか二重に重なって見える。

後ろを振り向いたら普通に景色はみえるので、猶更不思議だ。


「場所は変わらない。逃げることもない。とりあえずここで話そうか」


路地の人目に付かない場所。

その場所に四人は立つ。


「時間は……と」


不動が、腕時計を確認する。

その時計は、独特なデザインをしていた。

黒くてシックなデザインだ。


「いいっすねそれ」


天谷が、素直にその時計を褒めた。


「お前らにもいつかやるよ。薄暮探偵社共通の装備だ」


どうやら、薄暮探偵社における標準装備のようだ。

なんかいいな。

組織共通ってだけで、なにか気分が盛り上がる気がする。


「まじっすか?」

「ああ」

「氷月はまだもらえていないんだ?」


だが、氷月はつけていない。

彼女も薄暮探偵社に所属して半年以上は立っているはずだ。

なぜもらえていないのだろうか。


「女子高校生がそんなのつけていたら目立つわよ」

「それもそうか……」


確かに、女子の制服でやたら黒い腕時計をつけていたら目立つか。

知り合いの女子に聞かれて面倒臭がる氷月の姿が即座に浮かぶ。


「もう少しか」


既に時間は、日没に近い。

黄昏の時間がやってくる。

そう思うと、唾を呑んでいた。


「まぁ……」


不動は面倒くさそうにため息をつく。


「そう固くなるなよ。新人二人」

「あ……」

「うす……」


いわれて初めて自覚した。

高揚している感情のなかに、どこか怯えがあることに。

不動は、二人に対して気を遣っていた。


「最悪どんな状況であっても、俺が助ける。それが俺の役割だ」


か、かっこいい。

なんというのだろう。

漢気というのか。


「だからまあ……心配すんなよ」


守れる自負があり、それに伴う自信も併せ持つ。

彼はそういったものを秘めていた。

不動は、氷月を指さす。


「それに氷月だって戦闘の経験者だ」

「私ですか?」

「ああ」


いきなり不動の発現に自らの名前が入っていることに氷月は動揺する。

不動は、さらに説明した。


「こいつはハプニングには強いとは言えない」

「うっ……」


氷月の中に、なにかしら思い当たる要素があるのだろうか。

不動の指摘に、何も言えなかった。


「だが基本的に安定している」

「ほっ……」


どうやらダメ出しではなかったようだ。

氷月は、不動の言葉に安堵する。


「今回は、君ら二人の素質を見る形にはなるが……余程の事態があれば、二人で二人を守る。それをベースにおいてくれ」

「なるほど……」


今回のヒグレのクニにおける戦闘は、氷月と不動で戦闘未経験である天谷と久遠をカバーする形のようだ。

確かに、常に誰かが二人をカバーできるのであれば安心だが。


「俺大丈夫っすよ?」

「……」


能力の得たばかりの高校生には、そんなことは関係ないようだ。

戦える能力を得たという万能感。

そして前回のような危機はそうそうないだろうという浅はかな思考。

助かったからこそでる余裕が、天谷を鈍らせていた。


「天谷くんねぇ……」


そんな気楽そうにいう天谷に対して、氷月は呆れをみせた。

だがそれに反して、不動はぎろりと睨みつける。


「……うっ」


その不動の視線に、天谷は怯んだ。

殺気とは言わないが、それに近しい視線は送られた。

だが、それはすぐに止んだ。


「はぁ……」


不動は再びため息をつく。

そして天谷に語る。


「俺も似たようなもんだったから、強くは言わねぇが……」

「?」


不動は、天谷に近づき肩を掴む。

その瞬間、痛みが走る。


「いぅ!?」


強くただその肩を握りつぶす。

不動の腕が膨張していた。

メキメキと、骨が軋む感触がする。

やっぱりこの人の握力は80キロを優に超えているだろう。


「年長者の気遣いは大事にしろよ?天谷ぁ?俺も好きでやってんじゃねぇんだ」

「いでででで……!」

「不動さん!」

「……」

「大丈夫?天谷君」


ぱっと不動は、その手を放す。

天谷は、その肩を抱える。

砕けてはいないが、とても痛かった。

氷月は、天谷を心配する。

久遠は、その光景をみてビビッていた。

自分が初対面で感じた印象は間違っていないと思えた。

天谷が本能的に感じていたのも合っていたのだろう。


「お、折れるかと思った。俺の肩曲がってない?」


涙目になりながら、天谷は二人に聞く。


「う、うん、大丈夫」

「そうね……多分大丈夫」


なんでそんなに不安になるように言うのだろう。

涙目で大声をだす。


「もっと自信を持てよ!?」


呆れ顔で、不動は天谷をみた。


「折れるまで力入れるわけねぇだろ」


不動は、懐からライターとたばこを取り出す。

煙草を取り出し、それを口にくわえた。


「俺を素手で転がせるようになったらその意気は認めてやるよ。今はまだはえぇ」

「……うっす」


天谷は珍しく落ち込んでいた。

明瞭に格付けができたのだ。

天谷のようなタイプは、素直にこれが聞く。

こいつには今は絶対に勝てない。

それを肉体で理解させられたのだ。


「本当に大丈夫か?天谷……」

「ああ……」


なにを考えているのだろうか。

天谷なりに、今の瞬間でなにかをかんがえているようだ。

そんな天谷の顔をみていると不動が話始めた。


「箱根が何を考えているのか俺にはわからない」

「……」


その話題は、三人にとってあまりに唐突だった。

だが、ヒグレのクニに入る直前。

そして箱根がいない今しか話すタイミングがなかったのだろう。


「それは、花の捜索にこの二人を使おうとしていることですか?」

「ああ」


不動は、箱根のやろうとしていることを完全に理解していなかった。

特に新たに、天谷と久遠の二人を薄暮探偵社にいれたことだ。

能力を得たからといって強引すぎるだろうと不動は考えていた。


「鳥飼花の探索は、長期的にやるべきだ。丁寧に確実に。【穴掘りモグラ】に繋がっている以上。焦ってやるべきことではない。それに氷月は俺らのために真面目に働いてくれている。そんなやつのお願いを聞くことは別に嫌じゃない」

「……」

「だが、なぜそこに高校生のガキをいれる?」

「……よえぇから嫌ってことですか?」

「違げぇ。そんな話じゃない」


天谷の反抗に、不動は否定した。

弱さなど関係ない。

高校生の未成年者を、ヒグレのクニに投入させる。

その姿勢を不動は嫌っていた。


「能力を持つものが増えている現状は、正直喜ばしくない。それほど、ヒグレのクニが広がっているということだからな。俺はな、お前ら二人を薄暮探偵社にいれることに反対なんだよ」

「なっ……」

「なんで今さらそんなこと言うんだよ」

「別にインだよ。俺と百合が、氷月を助ける。それで事足りる。それが俺の持つ責任だ」


そう強く不動は、意志を現した。

久遠と天谷は動揺する。

完全に薄暮探偵社に入れたつもりでいた。

だが、最初の関門はすぐにきた。

不動という人物を、認めさせるところからだった。


「氷月。本当にこいつらでいいのか?お前がお前の親友を取り戻す過程で、こいつらは本当に力になれるのか?」

「……はい」

「……」


不動は、氷月の眼をじっと見つめた。

そして再び口を開く。


「俺は、普通のやつより馬鹿だ。馬鹿なこともたくさんやってきた。だからこそ他人の判断は信じらんねぇ。明確に俺に示してくれ」


この人は、きっといいひとだ。

いい人であることは理解できる。

だが。


「日比野そのの探索で、充分な結果をあげられないのであれば。見込みがないと俺が判断したなら、俺はお前らを追い出す」


暴力的すぎる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ