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ヒグレのクニ  作者: L
一章 ようこそ、ヒグレのクニ
1/25

残滓


「ねぇ?知ってる?あの噂」


少女は、隣の親友に話しかけた。

親友は、興味深そうにその話を聞き返す。


「なになに?」

「知らないかー」


少女は、そういってスマホを開く。

そこには、【急募!!日暮れの国について!!!】。

そう書かれていた。


「なにこれ……」

「日暮れの国について!貴方は知っていますか!!」


胡散臭いものをみてしまった。

親友はそう言いたげだった。

そんな彼女の顔をみて、少女は不満げだ。


「そう嫌がらないでよー。心霊とか、オカ板すきだったじゃんー」

「……えー」


少女は、親友の好みを知っていた。

だからこそ、これを読ませたのだ。


「すきだけどさぁ。これに関しては、まだ急募の段階じゃない」

「いいからーいいからー、よんでよ!」


少女から渡されたスマホで、サイトの内容を目に通す。


「コテハンつけてるのね……?【穴掘りモグラ】……?」


そこにかかれていた内容は、くだらないものだった。


「夕方五時過ぎの日暮れから出没する謎の場所。場所は、各所。特定の場所はなし。空間の先がある穴が開いており。そこには、幽霊やお化けなどの理解不能のものが出現するって……」

「ね!!おもしろそうじゃない!?」


面白そう。

そう彼女は言う。

だが自分には不満だった。


「一応バックルーム系に入るのかしら……」


不明瞭すぎる。

自分がそういった読み物がすきなのは、あくまで創作性があるからだ。

リアリティの中にある嘘臭さがすきなのだ。

そしてなにより物語にオチがある。

現実逃避として彼女やそれを好んでいた。


「うーん」


さらにその文章を読み進める。


「うーーん」


だんだんと渋い顔になっていく。

だがこれは、まだ明瞭に話が組み立てられていない。

どこなのか、どんな話なのかわからない。

大きな流れの始まりになれると考えればいいのかもしれない。

だが、傍観者として客観的に楽しむのが自分はより好む。

彼女は、そういったメンドクサイ拘りを持っていた。


「面白そうじゃないって……あ!」

「気づいちゃった?」


にひっと、少女が笑う。

親友は、やられたと思った。


「あー。もう……」


彼女の言いたいことが理解できてしまった。

丁度時刻は、五時半を過ぎていた。

日暮れといえる時間だろう。

そしてこのサイトを見せた理由。

魂胆が理解できてしまった。

今日の誘いに乗った後悔が、湧き出てくる。


「今日はやたら遊ぼうって誘ってきたのは……」

「そういうこと!!!」


ぶいっと二本の指をみせる。

親友は、頭を抑えた。

なんだが頭痛がしてきた。


「今日は、本当に謝って門限伸ばしてもらったのに!!」

「ごめんってー。あとでパフェおごるからさー」


手を合わせて、彼女は謝罪する。

誠心誠意というわけでもないが、パフェという言葉に心は動いた。


「……」


彼女が、ちらっとこちらをみる。

許してもらえるかなーと考えている顔だ。

まぁ、仕方がないか。

親友はそう思った。


「で?どうするつもりなの?」

「どうするって?」

「まさか行き当たりばったり?」

「うん!」

「……」


あれ。

本当にややこしいことに関わってしまった。


「ごめんごめん!ただほんのちょっとプラプラしたらーー……てきな?」

「はぁ……」


少女の考えなしなところは、いつものことだ。

そんなとこもすきなのだから仕方がない。

一日ぐらい無駄にすることを楽しもう。


「まぁ……そうだね。ちょっと遠回りしてカフェにでもいく?」

「……!うん!いいね!そうしよ!!!」

「ふふ……」


明らかに少女の顔が明るくなった。


「じゃあ……今日はこの道を通ってみよ!」

「まぁ、それくらいなら……」


そこは、いつもは通らないような人通りの少ない道だった。

少し外れた人の少ない道。

それだけの場所だった。


「……」


普段通らない道に警戒心をもちながらも、親友はそれを許諾した。


「あるかなー。不思議の国」

「貴方まだそんなの信じてるの?」

「信じるのが面白いんじゃん。なくたって私は面白いよ?」

「わかるけど……」


その道を歩いて暫くだった。

横から何かが、弾ける音がした。


「え?」

「ん?」


その場所に視線を向ける。

そこには、怪しげな光を放つ穴が開いていた。

ぽっかりとその場所に穴がある。

そう言葉に表現することしかできなかった。


「え……ここって……」


サイトにかいてあった通りの情報。

理解できない現状が、目の前で起きていた。


「私たちみつけちゃったんじゃないの!?」


彼女は興奮していた。

目の前におきた謎の現象。

その事実に、精神が高揚していた。


「まさか……」


親友は、その事実に怯えていた。

こんなこと現実で起きるはずがない。

なにかしらのドッキリだと。

そう思いたかった。

駆け足で少女はその穴に向かおうとする。


「ねぇ!はいってみようよ!!」

「待って……!!!」

「え?」


腕を掴み、彼女を引き留める。

駄目だ。

本能がその先に近づくことを止めていた。


「おかしいって!離れよう!」

「でも……」

「でもじゃないっ!危険!」

「……」


自然と力が入っていた。

でも仕方がない。

彼女を止めるためなら、無理にでもここから離れる必要がある。

それでも、彼女の体は動かなかった。


「え?」


逆にこちらの腕が、強く握られていた。


「いたっ……!」


手は自然と離れていた。

少女は、親友の腕を振り払う。


「どうしたの?」

「……私がどんな思いでここを探したか知ってる?」

「え?」


その声は、鋭かった。

初めてきいたその少女の声に、親友は震えた。

その一面に初めて触れた。

そしてその表情に怯えを持ったのだ。


「ごめんね、嫌なこと聞かせちゃって」

「……っ!」


その一言で察した。

彼女がこれからなにをしようとしているかも。

穴の中から、無数の手が出現していた。

それは、近づくものを引き入れようと周囲に広がっていく。


「花!!!!」


手を伸ばす。

しかし少女はそれを避け、後ろに下がった。


「もういいよ」


涙を流して、少女はその腕を受け入れた。


「ごめんね。いままで有難う」

「待って!!!やめて!!!!」


凄まじい速度で、少女は穴の中に吸いこまれた。

その手は、寸前で届かなく間に合わなかった。

走って穴で飛び込もうとした。

しかしそれも、時間が足りなかった。

穴は、少女を飲み込み即座に閉じたのだ。


「……!!!!」


脳が混乱した。

どうすればいい。

どうすれば、助けることができる。

周囲を見渡す。


「あ!」


唯一の情報源であるスマホが目に入る。

それはまだ光を放っていた。


「助けて……助けて……」


最後の繋がりに縋る。

それだけが、頼りだった。

素早くフリックし、そのサイトに打ち込む。


匿名 「友人がその穴に吸いこまれました助けてください」


そう打ち込む。


「早く……早く」


返答を願った。


「あ……っ」


しかしその救いは、あっけなく砕けた。


通りすがりのななしさん  「ウケる。ネタでしょこれ」


通りすがりのななしさん    「ネタ乙」


暴走列車みやこ 「おぅふwこれはwww伝説のスレになりそうな予感ですなwwwww」


当たり前だ。

先ほどまでの自分も似たような態度をとっていたのだから。


「なんで……なんで……誰も信じてくれないのよ……」


苦悩が、胸の中に広がった。

涙を零し、スマホを強く握った。

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