羽田からの旅立ち
「じゃあ、しっかりね」
「うん」
ぼくはここで母と別れて、今から7泊8日沖縄の一人旅に出る。ぼくは飛行機のeチケットの控えの紙を持って自動チェックイン機で手続きを始めた。さして時間はかからず、3分程度で手続きは終わった。一つ終わるたび、母から来た搭乗手続きの手順のメールを確認する。
「次は、手荷物検査?」ぼくはスマホをポケットにしまうと、ショルダーバッグとリュックを肩から下ろして手荷物検査のゲートへ向かった。
「上着、脱いでください。ベルトも外してください」係員にそう言われて、ぼくは慌ててズボンのベルトを外し、ジャケットを脱いだ。飛行機での一人旅なんて初めてなので、分からないことばっかりだ。財布とスマホと上着を一つのプラスチックケースに乗せ、リュックとショルダーバッグはもうひとつのケースに乗せてゲートを通した。ぼくもゲートを歩いて通過する。すると、ビーっとブザーが鳴った。ぼくは焦った。なぜだ?何も変なもの入れていないはずなのに。
「リュックにペットボトルの水が入ってますね。これは没収です。」しまったと思った。母と一緒に手荷物は一通りチェックしたのに、駅のキオスクで買った水を入れっぱなしにしてしまっていた。だが、引っかかってしまったものは仕方ないと思ってあきらめた。
手荷物検査を終えると、その先にあった売店でおにぎりと水とキリンビールを一缶買った。一缶だけ買おう、と自分に言い聞かせた。支払いはクレジットカードですませた。これは大変便利だけれど、使いすぎるとあとで大変な額の請求が来るから使いすぎには注意しよう。すぐにシートに座って缶ビールを開け、おにぎりをぱくついた。飲み終えて5分くらいしてからトイレをすませ、いよいよ搭乗ゲートが開いた。チケットを女性の係員に渡して切ってもらった。このまま入ればいいのだろうか。とまごついたが、とりあえず人についていって前に進むことにした。ぼくの席はDの3だった。席は前の方で、窓際だった。シートに座ると、不安になった。なにせ飛行機に乗ったのは数年ぶりだ。電車に乗ったときはそうでもなかったたのに、飛行機だとやけに緊張する。
「大丈夫かな。無事に着くかな?」ぼくは機内でもつぶやいた。独り言が嫌いな乗客もいるだろうから、声のボリュームには注意しよう。15分後、期待と不安を抱えて、飛行機は離陸した。飛行機が上空に達すると、気圧のせいか、耳が痛くなった。飛行機にのったのは10年ぶりくらいなので、慣れない痛みに恐怖を感じた。もしかしてこのまま耳がつぶれてしまうのではないか、と言う恐怖を。あまりに怖かったので、3種類の安定剤を5錠飲んだ。そのまま機内では特に何もせず、うとうととして眠ってしまった。