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アルバイト

 いきなり話は変わるけれど、ぼくは大学に入ってからアルバイトをしたことが二日だけある。その二日だけやっていたというのが引っ越しのアルバイトなのだが、全く向こうからみて戦力にならなかった。1日目は8時間休憩なしで朝からずっと作業の連続だった。特に休憩の時間は決まっておらず、トラックを運転する社員のリーダーの判断によって決まる。初日のリーダーは寡黙な人で、とにかく作業に没頭していた。どうして長時間水を飲まず、トイレにも行かずに作業に集中できるのかと不思議で仕方なかった。説明を受けても最初は全く分からないので、見よう見まねでやるしかない。まだ一日目とはいえ、8時間通しでできたのが不思議なくらいだった。2日目は、昨日のリーダーとは違って最初はフレンドリーな雰囲気だった。しかしぼくが仕事を覚えられずにもたもたしていると、先輩の表情は険悪なものとなった。改めて指示を受けても全く動けずに現場で突っ立っているぼくをみた社員のリーダーが、

「お前、もう帰れ」と小声で「戦力外通告」を言い渡してきた。その日は8時間労働で定時で終わったけれど、最後にやらされた仕事が社員やアルバイトのタバコの吸い殻の後始末だった。2日目にしてこの仕事は明らかに向いていないと気づき、それ以来、行かなくなった。その後、休学に至り、アルバイトの経験はたった二日しかない。アルバイトはしなくても、実家に引きこもっていたので特に金銭面で困ったことはなかった。こう述べるとダメ人間まっしぐらの文章みたいだけれど、実際そうだったのだからこれはどうしようもない。しかし、那覇で過ごしているうちに楽観的な気分になり、

「ここだったらできるんじゃないか、日雇い?」という根拠の無い自信が出てくる。どうせ明明後日には関東に帰るのに、いささか無謀かもしれない。もし一日でやめたならば、派遣会社の社員にも迷惑がかかる。それでも、なんだかどうにかなるだろうと思い、なんでもやってみようという気になるのだ。那覇で過ごしてから、関東にいるときよりも物事を前向きに考えることもできるようにはなってきた。まさか使うとは思っていなかった履歴書と証明写真を持ってきたのがよかった。こんなこともあろうかと、三日目のうちにゲストハウスのPCで那覇市の日雇いの求人を調べておいた。いきなりだが今日、午後から派遣会社の面接に行くつもりだ。ぼくは急いで履歴書を書き上げ、証明写真を貼り終えた。休学中とはいえ学生なので、特に書くことは多くなかった。われながら、なんて唐突なのだろう。履歴書を書き上げた後、そう思った。

 午後2時に牧志駅からモノレールに乗って古島という駅で降りた。この駅から10分くらい歩いたところにある派遣会社の事務所で履歴書をわたし、簡単な面談の後に初日は明日、さっそく空港近くの大手物流企業の倉庫で仕分けを8時間やることが決まった。

「万が一遅刻したとしても、現場には必ず向かってください。持ち物は軍手と飲み物。あとは、汚れてもいい服で行ってください」と説明を受けた。久しぶりのアルバイトができることで、心臓は高鳴って緊張で汗がだらだらと出た。体は震えていた。どうしよう。長いこと働いていなかったぼくにこんな全く知らない土地で仕事を全うできるのか?不安でたまらなかった。でも決まったことだし、まずは一日まっとうすればいい話なので、

「わかりました」と少しだけ自信をもって答えることができた。

 事務所を後にすると、ゆいレールで牧志駅に戻った。宿に帰ったぼくは、オリオンビール2缶と白ワインのボトルを空けた。明日日雇いの仕事があるにも関わらず、飲酒にふけった。のんだ後は騒ぎはしなかったけれど、急に自慰がしたくなり、トイレにこもった。那覇に来てからこんなことをするのは、初めてだった。部屋は相部屋だし、人の目がある。一人になれる時はシャワールームとトイレの中くらいしかなかった。十五分ほど自慰にふけってから外からノックがきこえた。しかし、取り込み中だったぼくはノックを返してそのままトイレから出ずに続行した。結局、終わったのはそれから10分後のことだった。その後、その日は特にすることもなく、一人で読書をして適当に夕飯を食べてシャワーを浴びてから早めに寝た。

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