書きたいこと書いたら良いと思うよ
杏奈が読み終えると、いきなりたずねてきた。
「で、続きは?」
「え?」
「これの続きは?」杏奈が問うと、
「だから、これで、おしまい」関人はぼそっと言った。
「なんだ、つまんない」はっきり言いやがって。でも自分でも分かっていた。これは小説とはいえない。ただ文字が連なっているだけだ。
「ぶっちゃけ、何コレ?って思いながら読んだ。まあ、でも」
「ん?」まだ何かあるのか、と批判されて少しげんなりした。
「やりたいことがあるっているのはいいことだよね」杏奈はさざ波の方を向いて、
「なんでもいいからこれからも書きたいこと書いたら良いと思うよ」とさりげなくフォローした。
「ありがと」ぼくもなんとなくお礼を言った。自分のやったことをほんの少しでも認めてもらえたことがよかったのだろう。
それから、二人は他愛のないおしゃべりをしつつコーラを飲みながら、ずっと海を見ていた。嘉手納の海の色も緑色でキレイだ。どうして沖縄の海ってこんなにも美しい色なのだろう。
「海はキレイだけど、他にやることないね」
「ていうか、嘉手納って米軍基地があるから町があるようなもんじゃないの?」
「まあ、そうかも」
「帰ろっか」
「うん」帰りのバスの中で、二人は黙っていた。一言も言葉を交わさなかった。決してお互いに嫌いになったわけではない。ただ、なんとなく関人はぼーっとしていた。杏奈も特に話したいことがない様子だった。
90分後、バスが県庁前のターミナルに到着し、二人はようやく言葉を交わした。
「今日はありがと。楽しかった」
「うん、おれも」何気ない言葉の後、ぼくは勇気を振り絞って声を出した。
「あ、あのさ!」
「何?」
「あ、握手!してくれない?」と、右手を差し出した。
「握手?」杏奈は怪訝な顔をした。だが、
「まあ、いいよ」と、ぼくの右手を握った。女子と握手できたのはいつ以来だろうか。大学では全く経験できなかったので、ぼくは笑顔になれた。
「へへ」
「関人って、やっぱり変」
二人はお互いににっこり笑って一緒に歩き、アーケード内のゲストハウスに戻った。まさか沖縄に来てから女子と遠出ができて握手までできたとは。ぼくにとっては大きな一歩だった。その夜は、嬉しさのあまり興奮して、なかなか寝付けなかった。




