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三日目の交流、サクさんとのやりとり

 三日目。朝7時に起きるまで、2,3時間だけ眠れた気がした。うとうとしながら、

「このあとどうしよう?」とつぶやいた。とりあえず、歯ブラシをもって洗面所へ向かった。すると、先にサクさんが歯を磨いていた。

「おはよ」

「おはよう、ございます。サクさん」ぎこちないけれど、あいさつできた。サクさんが終わるのを待っている間に窓の外を見ると、大雨が降っていた。昨日たまたまリビングのテレビのニュースを見ていたから、そういえば今日は朝から雨だっけと思いだした。

歯磨きを終えた後、リビングでコーヒーを飲みながらサクさんと喋った。さすがに朝から人前で酒を飲む気にはなれない。飲みたい気分の時もあるけれど、とりあえずおさえてコーヒーをすすった。向かい側に座っていたサクさんは黙って朝食を食べていたけれど、ふいにサクさんが口を開いた。

「関人君って特技ないの?」

「特技、ですか・・・歴史と中国語をほんの少々」

「歴史が得意なんだ?中国の歴史とか好きなの?」

「はい。結構詳しいです。」

たどたどしい会話を続けていくうちに話は飛び、いきなりサクさんから深い質問が飛び交った。

「昔、日本が遣唐使送ったときの中国って「唐王朝」だよね。結局、唐はなんで滅んだの?」

「塩の専売制ですよ。国が税金を上げてみんなが必要な塩が買えない。そこで黄巣っていう塩の密売人が反乱軍を率いて唐王朝を倒したんです。それが870年代に起きた黄巣の乱」

「すごいね。年号すらすら出るね」

「結構アジアの歴史は得意なんです。好きなことなら話せるし」

「いいものもってるよ。活かさないともったいない」しばらくサクさんと歴史の話で盛り上がった。ゲストハウスってこういう出会いもあるか。いいもんだな。と、新しい発見に感動した。ぼくの話し方は相変わらずぎこちないし、下を向く癖は抜けていないけれど、どうにか会話は成り立っていた。

 朝に素晴らしい体験をしたとはいえ、ぼくはその日の午後も、ゲストハウスのリビングで昨日と同じ時間にビールを飲んだ。沖縄に着いてからはまった、オリオンビールを。オリオンビールには麦芽とホップの他に米とコーン・スターチが入っている。そこはアサヒビールと同じだ。沖縄に来る前は麦芽とホップのみが原料のキリンビールを飲んでいたので味が違うとは感じたが、これはこれでおいしいし、口当たりが軽くて飲みやすいなと思った。周りを見渡すと、他にも50代くらいのおじさんがビールを飲んでいるし、昼から飲んでいる人も自分以外に時々みかける。このゲストハウスでは、あまり飲酒にはうるさくないのかもしれないとまだ3日目なのになんとなく確信した。ビールだけだと少し飽きるな。バーボン・ウィスキーでも飲みたいと思い、ビールを飲み終えてコンビニへジムビームを買いに行った。引きこもっていた期間も、親がバーボンは飲まないのでジムビームをコンビニまでよく買いに行ったことを思い出した。ほろ酔い気分のまま、宿を出て近くのファミマでジムビームの700mlの瓶とソーダを2本購入した。店員が顔をしかめたような気がしたけれど、酒を買い慣れているぼくはそういう反応に慣れているので気にしなかった。

宿に戻ると、ぼくはバッグから新書を取り出した。そして宿に置いてあるグラスにバーボンを適当に注ぎ、ソーダで割って飲んだ。格別だ。同著はスコットランドのウィスキーに関する本で、アメリカのバーボンは出てこないけれど。飲んでいるとサクさんがやってきた。せっかくだからと思い、

「ところで」ぼくはいきなり質問したかったことをぶつけてみた。

「ゲストハウスって、どんな宿なんですか?ネットで調べても、よくわからなくて」

「ゲストハウスは、基本宿泊客がみんな相部屋の二段ベッドか布団に寝泊まりする。代わりに宿泊代が安いんだ。」

「泊まったの初めてなんですよ。地元にはないから」

「関東でも東京なら割と見つかるんだけどね。これはどのゲストハウスでも同じことだけど、性別や国籍、年齢を問わず色々な人と出会うからね。ゲストハウスの雰囲気に合う合わないは本当に人それぞれだがら、スタッフとゲストの入れ替わりは激しいよ。人の出入りが激しい。おれもいつまでここのスタッフでいられるか分からない」

「えーっと、雇用関係。サクさんは雇われて働いているんですか?」

「いや、うちは無給。食事と泊まる部屋は保障してもらえるけど」

「サクさんは毎日いるんですか?」

「いや、明日は休み。フェリーで島に行く予定」サクさんは他のスタッフと離島に行くとのことだった。休みの日も、海で楽しく遊ぶ様子をスマホで撮影してインスタグラムやフェイスブックにアップするとも言った。それが宣伝になるとのことだ。

「ところで」サクさんが付け足すように言った。

「昼からそんなに飲んで大丈夫かい?」少し心配そうにたずねているようにみえた。

「あ、はい。自分でセーブできるし、割と酒強いんで」半分嘘をついた。「自分でセーブできる」というのはできなかったことのほうが多い。

「まあ、気をつけてね。体壊したり、トラブル起こさなければいいんだけれど」と言って奥に立ち去った。結局ぼくはこの日、一日中酒を飲みながら本を読んで過ごした。サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」と太宰治の「人間失格」、そして2,3冊の新書を読みながらビールを堪能した。結局その日は、飲酒と食事と読書にふけって終わった。



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