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ニート、琉球を目指す

 2025年3月24日、茨城県に住む酒井守は旅の準備をしていた。どこへ行くのか?それはまだ秘密だ。引き出しを開けると、シーサーのお守りが出てきた。

「懐かしいなあ、コロナ禍の前だったっけ」

守は2019年に一人で沖縄に行ったときのことを思い出した。あれは2019年の5月のことだった。守は都内の大学で中国語と中国文化を専攻する大学生だった。しかし都内での生活になじめず単位も卒業に必要な単位のうちの半分しか取れないまま3年時に大学を中退した。

 旅の一日目となる2019年の5月、旅立ちの朝の日差しはまぶしかった。眠い。自室に引きこもっていたときは大抵寝ていた時間帯だ。昼夜逆転だった生活を両親の助けを借りて、昼型の生活に徐々に慣れることができた。長い期間引きこもりだった。でも今は違う。母親と一緒に地元のJR水戸線の駅にいる。今回は

「関東ではなく、誰も自分を知らない遠くの土地に行きたい」という願望を叶えるために、飛行機に乗って一人旅に出ることになった。行き先は沖縄にした。

「水戸線で小山に着いたら上野東京ラインに乗り換えて品川駅まで乗るよ」

「うん」

「それから京急線に乗り換えて羽田空港第1ターミナル駅で降りるんだからね?」

「うん」地元の駅から羽田空港までの行き方を、母親と一緒に確認していた。しかし慣れない外出のせいで話が頭に入ってこない。とりあえず、車内の乗客を見てみた。男子高生三人が黙ってスマホの画面を見つめていた。三人の隣に座っていたビジネスマンもスマホとにらめっこをしていた。

「空港に着いたら、e-チケットの情報を航空会社のチェックインカウンターで打ち込むんだからね?」

「わかったよ」

「ホントに分かったの?ちゃんときいてる?」

「きいてるよ」

「羽田までは一緒に行くけど、その後は自分で行くんだからね?」

中国語学科にいた自分としては、中国本土か台湾に行く方が勉強になるとは思う。だけど引きこもりニート状態から脱したばかりの今の自分では一人で外国をほっつき歩くのは怖いと感じた。それに大学の勉強から離れて以来、中国語はすっかり話せなくなってしまっていた。簡単な文章は書けても、声に出すのが怖くてできない。それもあって外国に行くのが怖い。けれども、誰も自分のことを知らない土地を一人で旅したい。その気持ちを母に伝え、結果沖縄県を一人で旅することになった。

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