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ひよこさんのため息

 水晶玉からウサギの姿が消える。

 そして彼は深く深くため息をついた。

「ま。もう知ってるやつしかいないぞ」

 ハリネズミがにやにやしながらそう言った。

「しかし、人ごとに聞いていてわが身に降りかかってくるとは思わんよなあ」

 ずきっと胸が痛む。

 話を聞いている途中から何やら既視感があった。それでも自分とは関係ないと思い込もうとしていたのだ。

「それで、リッチに実際会ってみてどうだった?」

「あれを怒らせるなんて、生存本能が昼寝しているとしか思えなかったよ」

 見た目だけは美しい部類に入るだろう。だが下手な男と比べたら圧倒的に勝っている体格。そして苛烈な性格。そして大の男を軽々と持ち上げられる筋力。どれをとっても怒らせたら死ぬと全身で語っていた。

「人間の身体一つで大の男を絞首刑にできるということを初めて知ったよ」

 あの凍り付いたような無表情のままゆっくりと人を縊り殺そうとしている光景は一生忘れられないと思う。

「しかし、まさか旦那の浮気相手が、自分の女房とはな」

「浮気相手じゃなかったろう」

「うん、まあ、そっちの嫁もけっこう怖いな」

 しみじみとハリネズミが言う。にっこり笑って地獄へ送りに行く性格。朗らかでいていったん根に持ったらいつまでも爪を立てているような。

「弁解させてもらうと、妻はあの時、あれだけの暴言を吐いておきながら、侯爵夫人になった自分にへらへら笑いながら近寄ってきたのがブチ切れた原因だったそうだ。もしそそくさと立ち去っていたら放っておいたと言っていた」

「手の届くところに来たから、陥れてやろうってねえ」

 猫が目を細めた。

「きっちり罠を張ってそれを寸前まで気づかせないとかな」

 ついつい疑いの目で見てしまった自分を全く意に介さずいつも通りでいた妻に女は怖いと思った。

 水晶玉の魔力を切ってガストール侯爵は深いため息をついた。




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