阿保夫婦の末路をリッチがお知らせします。
「天使ちゃんは、連れ込まれてから相手の股間を蹴りつぶしうずくまったタイミングで花瓶を頭にたたき落としたそうよ」
リッチは物憂げにつぶやいた。
「まあ、大騒ぎになったのよ、主催者の伯爵様は怒髪天を衝いていてねえ」
「そうなるわねえ」
猫がうんうんと相槌を打つ。
「天使ちゃんがドスケベの頭でたたき割った花瓶というのが、遠い異国から取り寄せた一点ものだったのもまあまずかった」
「それはまた」
そしてリッチは続けた。
「それぞれに聞き込みをして状況はまあ分かった。それでドスケベ、そしてそれをそそのかした女、天使ちゃんそれぞれ別の部屋で尋問されたわけ」
「それで、天使ちゃんの主張は理解してもらえたのかね」
「そうなのよ、あの女はまあ天使ちゃんがどれだけ身持ちの悪い女か主張したらしいんだけど、もともとその伯爵はデビュタントの子女の経歴はちゃんと調べておいたそうなの。もちろん天使ちゃんの潔白もね、それに、天使ちゃんとその女のそれぞれの親の住処はかなり遠く離れていたし、その伯爵の調べより詳しい話を知るはずがないと分かってたのよね」
猫がため息をついた。
「いるのよねえ、そういう女」
自分より目立つ女を引き落とすなら何でもするという。
「それでまあ、天使ちゃんはまあ、正当防衛ということでおとがめなし、ほぼ被害者だしね。それでスケベとそそのかし女だけが罪に問われたわけ」
「それはそれは」
「で、どうなったんだ?」
「そのまま二人は結婚させられたみたい」
「なんで?」
思わずハリネズミが聞き直した。
「まあ、以前にもいろいろやらかしていたらしいの、それで親戚が二人まとめてしまえって、まあ、ほかの人に結婚させたら被害者が増えるからというのもあるかもしれない、それとまた何かやらかしたら二人まとめて処せるようにってことかしら」
厄介者同士を組み合わせたらしい。
「それでうちの旦那をそそのかして天使ちゃんにけしかけたらしいの、夫婦そろって相手に不満があったみたいね」
そしてリッチは両手をあげてやれやれとため息をついた。
「天使ちゃんは目上の身分の奥様だしうちの旦那に天使ちゃんに盛るように薬を渡した証拠もおさえたもの、それでその辺はその親族に突き付けたからまあそろそろ処されているんじゃないかしら」




