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デビュタントパーティ

 某伯爵家のデビュタントパーティ会場。その日、デビュタントを意味する白い衣装をまとった少年少女が初々しくダンスをしたり顔を合わせた親族に挨拶などをしていた。

 そして、ひときわ目立つ少女がいた。

 長い金髪はハーフアップにまとめ、とてもシンプルなドレスを着ていた。

 宝飾品は銀の鎖を首に下げているだけ。

 ほかの少女たちが真珠やオパールなどの白色の宝石を身に着けているのに彼女は全く身に着けていない。ドレスも絹の物ではあるがフリルもレースもついていない。

 最も飾り気のないドレスを着ているのに最も注目を集めているのも彼女だった。

 むしろシンプルなドレスだからこそ彼女の美しさが際立っていた。

 彼女がシンプルなドレスを着て、アクセサリーも最低限なのは実は実家が財政上に行き詰っておりそれでもせめてデビュタントだけでもという親心で出席したからだった。

 そのような裏事情は知っている人間は知っているがそれをこそこそと周囲の人間に知らせてあざ笑う者たちもいた。

 貧しさをあざ笑ったとしても彼女は美しい。それは誰も否定できない。

 そして、そうした彼女を険のある目で見ている女性たちがいた。

 彼女はそのことに気づかない。

 ただ、親の気遣いで来たパーティ会場で自分の貧しさゆえに浮き上がり誰にも相手にされない事実に悲しいため息をついているだけだった。

 だから、自分を見る殺意すらこもった視線もただの好奇の視線と感じていたのだ。

 だから一人がそっと一人の男に近づき何事か囁いていたことも気づいていなかった。

 人いきれにつかれたのかそっと会場を後にする。

 洗面所あたりに向かったのだろうが唐突に一人の男に手をつかまれた。

「相手を探しているのか?」

 にやけた男はそのまま一室に彼女を連れ込んだ。

 抵抗できなかった。

 自分にこのようなことが起きるということも彼女はわかっていなかった。

 そしてその後ろで一人の女が笑っていた。ある程度時間が空いたらその扉を開いて彼女をさらし者にしてやろうとタイミングを計っていた。 

 だがそれより早く破壊音が聞こえた。

 その破壊音はパーティの音楽をかき消す勢いで響き渡った。

 その音を探してこの屋敷の使用人が周囲を探す。

 そして彼女が連れ込まれた部屋の扉も開かれた。

 そこには床に倒れ破壊された花瓶を頭に乗せた男と、その傍らで肩で息をしている彼女がいた。

 何が起こったかは明白だった。



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