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おい、お嬢さん

 リリーチェはドレスアップした状態で夫を冷めた顔で見ていた。

 最近はいろいろと物騒な事件が少なくなったのでリリーチェも社交に励むことになった。

 夫の紺色の瞳に合わせて、リリーチェは紺色のドレスを着ることが多かったが。本日は淡い水色。リリーチェの色彩的に紺色より似合う色だ。

 本日は舞踏会、リリーチェは夫のエスコートとして差し出された手に嫌そうに手をかけた。

 ウエスト以外はフリルで偽装した形ではあるがリリーチェは大変肉感的な体形に見えていたようだ。

 リリーチェはパーティ会場に向かう馬車の中でむっつりと黙り込んでいた。

「その、リリーチェ、友人に誘われたそうだが、どうだった?」

 リリーチェの額に青筋が浮かぶ。

「ご友人ですか、なんでもその方の奥様ととても親しかったようですわね」

 もう浮気のことはばれているんだぞとほのめかしてみせる。

「もう、彼女しか見えないと言っているだろう、それに、二人お互いにしようと言っているじゃないか、断ることもないだろう」

 まだ、あの夫婦とつながっていることが判明。

「あいにくと自分で選ぶならもっとましなのを選びますわ」

「選ぶ余地があると思っているのか」

  鼻で笑われてこめかみの青筋がさらに太くなる。

「まあ、あの方の奥方を選んだ旦那様に言われましても」

 何しろ夫の浮気相手があの男の妻だと分かったとたん無理やり性病検査に引っ張られてしまった。どれだけ放埓な生活をしているんだろうと思う。

 むろんこのことは墓に行くまで根に持っているつもりだった。

 心配になるのは息子のことだ、やはり三代目までくずになるのはとても困る。

 やはり、この男に地獄を見せねばならない。そのうえで馬鹿をやるとこんな目にあると息子に教育しなければ。

「それではまだ行きましょうか」

 本日のパーティ会場である某伯爵のお屋敷が見えた。

 招待状を夫が使用人に渡した後無言で大広間に進む。

 豪奢なドレスと礼服の男女の群れの中に進む。

 金の髪に絶世の美女はその中でもひときわ目立っていた。

「アリエル」

 アリエルは夫であるガストール侯爵にエスコートされてにこにこと周囲に愛想を振りまいていた。

 その場にふらふらとハデスが近づいていく。

「あら、お久しぶりですね」

 アリエルは輝くような笑顔でハデスを迎える。そして二人はとても親しげに語りあい始めた。内容は幼少期に数回会った時の話のようだ。

 その間アリエルは傍らにいるリリーチェを請いに無視しているように見えた。

 隣にいるガストール侯爵も不振の目を隠さないようだ。

 さざ波のように二人の様子を怪訝そうに、あるいは面白がるような様子の人が増えていく。

「おい、お嬢さん」

 相手は一応人妻だが。リリーチェは本気で心配になった。

 どう考えてもこの先はアリエルの破滅にしかつながらない。

 



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