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ティータイム

 リリーチェは義伯母が手配したお茶会に出ていた。姉の姑で夫の伯母なのでどちらにしても義理の伯母だ。

 リリーチェはそうした集まりには縁のない人生を送っていた。

 基本的にリリーチェは武人だったからだが。

 しかしそれでも最低限のことはしなければならないので、手芸の会には出ていた。

 手芸の会ならひたすら無言で針を動かしていれば場が持つのだ。

 お茶会は会話を主体にしているので、リリーチェには少し荷が重いのだ。

 リリーチェの兄嫁にあたるマデラインが一緒に来て最低限会話が成り立つように協力してくれるという。

 まずはお茶の種類についての話だが。リッチはそれほど茶葉に詳しくない。マデラインがこっそりリリーチェに茶葉のヒントを教えてくれた。

「これ、高地にしかない珍しい茶葉ですわね」

 やわらかい琥珀色のお茶をめでるようにティーカップの淵を指でなぞる。

 高地でお茶栽培をしているところは。

 一般教養としてたたきこまれた地理と産業知識で頭を回転させた。

「サバナ産ですか」

 ちょっと変わった香りだ。葡萄に似ているかもしれない。

「いい香りですね」

「そうね、果物っぽい香りですわね」

 マデラインの隣の貴婦人がそう言った。

「リリーチェさんね、こちらのお菓子も試してくださいな」

 どうやらこの貴婦人が主催者のようだった。

 差し出された赤い果物が乗ったお菓子をリリーチェは受け取った。

 リリーチェはお菓子をつまみながら周囲に耳をそばだてた。

「そういえばあの夫婦またやっているみたいですよ」

「あら、まだ追放されていないの?」

 斜め向かいで何やら噂を始めた。

 リリーチェはそっとそちらに目を伏せた状態で集中した。

「まったくしぶといわねえ、あちらの親族もイラついているんじゃなくて」

「意外に、寝、まあ、あれに付き合う相手もいますからねえ」

 それから不意に視線がリリーチェに向いた。不意に目が合ってリリーチェは焦る。

 盗み聞きがばれた?

 貴婦人たちは不自然なほど一気に視線をずらした。

「あの、何か?」

 リリーチェがそちらにそっと尋ねた。

「あら、ご存じない?」

 くすくすと貴婦人たちは笑う。とても気分が悪かった。

「少しはご主人を見たほうがよろしくてよ」

「まあ、ご自分で調べてみては」

 意味深なことを言われて不意にリリーチェは気づく。

 もしかして夫の浮気相手の関係者なのでは。

 マデラインに後であのご婦人の名前を確認しなければ。

 ようやく見つけた手がかりのかけらにリリーチェはそっとお菓子を口に入れて緩む口元を隠した。


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