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伯爵家を追われてから数日後。

私、リリエと娘のルナは、小さな馬車に揺られて荒野を越え、ようやく目的の村へとたどり着いた。辺境の地と聞いていたけれど、想像以上にのどかで、人通りもまばらだ。


「ママー、ここって本当に人が住んでるの?」

「ええ、ちゃんと住んでるわよ。……見て、ほら、あっちに家があるでしょう?」


村の外れにぽつんと見えるのは、粗末な木造の家々。遠くに見える畑には、人影がちらほら動いている。

どこか閑散としていて――でも、その分、噂好きの貴族たちや厳格な老伯爵の目を気にせず済むかもしれない。そう思うと、ほんの少しだけ肩の力が抜ける。


「よし、まずは村長さんに挨拶をしないとね。私たちが住める部屋を探してくれてるらしいから」

「やったー! おうち、おうちー!」


すっかり元気を取り戻したルナは、手を引く私を振り切るように駆け出す。道端に咲いている野草に目を輝かせたり、蝶々を追いかけたり――まるでこの地が楽園だとでも言うみたい。

(この笑顔を見ると、追放されたことも悪いことばかりじゃないと思えてくるわね……)


そうして村長の家に着くと、年配の女性――噂に聞いていた「ダリヤ村長」――が穏やかな笑みで迎えてくれた。

「ようこそいらっしゃいました。宿屋の女将から話は聞いています。しばらくは村の空き家を使ってかまいませんよ」

「ありがとうございます……私たち、行くあてがなくて。本当に助かります」


礼を述べる私に、村長は大らかに頷く。

「貴族のご出身だそうですが、こちらでは身分なんてあまり関係ありません。お互い協力して生きていきましょう」

「は、はい……」


村長の言葉はさらっとしているけれど、だからこそ胸に沁みた。私は再度頭を下げ、ルナの手を握りしめる。

(ここなら私たちを追い出すような人はいない……そう信じたい)

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