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こうして、私たち母娘はアルビス公爵の村視察に同行することになった。
私は居心地が悪いながらも、公爵からちょこちょこ質問を振られて答えざるをえない。
「リリエさん……だったかな? 聞くところによると、最近この村に引っ越して来たそうだね」
「は、はい。色々あって……まあ、外の土地から来ました」
「そうなのか。何か不自由や困っていることはない? 領主として把握しておきたいんだ」
単なる営業トークかもしれない。けれど、その優しげな瞳に嘘はなさそうに見える――だからこそ厄介だ。
「ええと……特に大きな不満はありません。皆さん親切で、本当に助けられています」
「そうか、それは何より。……もし何かあれば、遠慮なく言ってほしい。僕もできるだけ協力したいと思ってるからね」
言葉だけなら完璧だ。カイル公爵は貴族らしからぬ柔和さで、村人の心をひとつずつつかんでいくようだ。
その背後で、ゲルハルトがメモを取りながら私たちを観察しているのが気になって仕方ない。
(まさか、ルナの魔力に感づいている? 伯爵家からの追放についても、どこかで噂を嗅ぎつけているのかもしれない)
けれど、ルナはそんな母の不安をよそに、公爵や側近たちとケタケタ笑い合いながら、村を回って楽しんでいる。久々に見せる無邪気な笑顔に、私は胸が締め付けられた。
(いつかまた、傷つく日が来るんじゃないかしら……)
その夜、視察を終えたカイル公爵一行は村の大きな屋敷で宴を開き、村人たちも招いてささやかな“歓迎パーティ”を催した。私たちも呼ばれはしたけれど、賑やかな場所に行くとボロが出そうなので丁重に断るつもりだった。
――が、わが娘が止めてくれない。
「ママー! みんな来るんだって! 楽しそうじゃない! 行きたいー!」
「だ、だめよ、私たちは……」
「公爵様が『ぜひ来てよ』って言ってくれたもん! せっかくなんだから行こうよ~」
ルナが両手を合わせて懇願してくる。
(これは……断れない雰囲気。どうしよう……)
仕方なく、私はもう一度決心を固めた。
(いいわ。せめて今夜ぐらいは、普通の母娘として楽しもう。だけど、その代わり絶対に魔法は使っちゃダメよ!)
こうして、私たちは思いがけず領主主催の宴に参加することに。伯爵家でのパーティとはまったく違う、素朴で温かみのある“村の宴”。




